12話 料理をしました
肉、ゲットです!
ついでに、狩りの途中で見つけた山菜、香草などもゲットです!
これらを素材に錬金すれば、立派な料理ができあがるんですけど……
今日はそれはなしです。
あえて調理をすることにしました。
私も、時には風邪を引いてしまうかもしれませんからね。
その他、不測の事態で動けなくなってしまうかもしれません。
そんな時にごはんを作れる人がいないと、大変なことになってしまいます。
なので、できるうちに料理の練習をしておこう、ということになりました。
「さてと、まずは……」
料理をするといっても、調理器具がぜんぜんありません。
包丁。
まな板。
ボール。
フライパン。
ヤカン。
……などなど。
まずは一通りの調理器具を錬金術で揃えました。
どれも賢者の石を素材にしているため、扱いやすさ、耐久性は抜群です。
本当はキッチンも作りたかったんですけど……
大型のものを作ることはまだできません。
なので、火は囲炉裏を使うことにします。
「それじゃあ、料理開始です!」
「ねえ、ナイン」
「なんですか、アンジェラさん」
「えっと……あたし、料理できないんだけど」
「わたしもできないよー」
アンジェラさんとシンシアちゃんが言う。
もちろん、その可能性は考えていました。
なので心配いりませんよ。
私は常に二手三手先を考える、美少女錬金術師なのです!
えへんっ。
「私は料理できるから、お二人に教えますね」
「えっ!?」
ものすごく驚かれてしまいました。
えっ!? ってなんですか。
えっ!? って。
「もしかしてアンジェラさん、私を料理できない残念な子だと思っていました?」
「そ、それは……ごめんなさい」
「素直に謝られる方が心が痛いです!」
うぅ……今度から料理できますアピールをしておいた方がいいでしょうか?
そんなことを真剣に考える私でした。
「気を取り直して……それじゃあ、料理開始です。まずは材料を用意します。狩りで獲った動物たちの肉ですが……最初は血抜きとかキツイでしょうから、私がやっておきました。時間もありませんでしたからね」
すぐに血抜きをしないと、肉が悪くなってしまいますからね。
あと、慣れていないとかなりエグいので。
「まずはお肉を一口サイズにカットしましょう。はい、包丁です」
「刃物を持つって緊張するわね……」
「お料理お料理~♪」
アンジェラさんはごくりを息を飲んでいます。
対するシンシアちゃんは鼻歌を歌っていました。
対称的な姉妹ですね。
「シンシアちゃん、包丁に添える手は、にゃんこの手ですよ」
「にゃんこ? 猫さん?」
「そうですよ、猫さんです。ほら、こうして手をにゃんこの形にすれば、手を切ってしまうことがなくなります」
「おー、なるほどー」
すぐに納得してくれて、シンシアちゃんは包丁を使い始めました。
しっかりと理解してくれる、出来の良い生徒です。
「せーの……!」
「アンジェラさん!? ストップ、ストップですよ!?」
「え、どうしたの?」
「なに不思議そうな顔をしているんですか!? というか、アンジェラさんは包丁をそんな上段に構えてどうしようっていうんですか!?」
「勢いがあった方がよく斬れるかな、って思ったのだけど……」
「斬れすぎですよ! まな板まで真っ二つですよ!」
賢者の石の包丁ですからね。
それくらいの威力はあります。
「もっとコンパクトでいいんですよ。ほら、シンシアちゃんみたいに、まな板を軽くトントンって叩くような感じで」
「なるほど……わかったわ」
私、理解しました。
アンジェラさんは、自分の感覚で料理をする人です。
こうした方がいいんじゃない?
という根拠のない直感に従い、塩などの調味料を大量投入するような人です。
これは目を離すことができませんね……!
その後……
「アンジェラさんっ、それは塩ではなくて砂糖です!?」
「あああっ、そんなに塩を入れたら塩の味しかしなくなってしまいますよ!?」
「わきゃあああああっ、包丁をこっちに投げないでください!? スっぽ抜けた? 同じことですよっ!」
誇張でもなんでもなくて、阿鼻叫喚という言葉がふさわしい料理の時間が続きました。
「で、できましたぁ……」
2時間後……なんとか料理を完成させることができました。
私の体力、精神力は共にゼロです。
今ならスライムにやられてしまう自信があります。
それくらい疲弊していました。
「ふうっ……料理って意外と楽しいのね」
なぜかアンジェラさんは元気でした。
心なしか、顔がツヤツヤしています。
「これからも料理の勉強をしようかしら? ねえ、ナイン。毎日料理を教えてくれる?」
「毎日は勘弁してください! 本当にお願いします!!!」
心の底からの叫びをあげる私でした。
なにはともあれ……
ごはんの時間です。
レオンとハルを呼んで、みんなでごはんです。
いただきます。
「あむっ……うん、なかなかですね」
調味料で味付けされたお肉を食べます。
脂が乗っていて、ほどよくジューシー。
調味料が肉の旨味を引き立てていて、けっこうおいしいです。
アンジェラさんもシンシアちゃんも笑顔で食べています。
レオンとハルは、あっという間に平らげてしまいました。
おかわり?
まったく、仕方ないですね。
はい、どうぞ。
「さあ、残りもおいしくいただきましょう」
「ふふっ」
ふと、アンジェラさんが笑います。
「どうしたんですか?」
「自分で作る料理って、とてもおいしいのね。ナインを悪く言うつもりはないんだけど、錬金術のパンよりもおいしいかも」
「ふふっ、それは当然ですよ」
私はにっこりと笑顔を浮かべながら、その答えを口にします。
「手作り料理は愛情がこめられていますからね♪」