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10話 レオンとハルの家を作りました

 きっかけはシンシアちゃんの一言でした。


「ナインお姉ちゃん、レオンとハルの家は作ってあげないの?」

「……あ」


 たらり、と汗が流れました。

 レオンとハルの家のこと、すっかり忘れていました……


 言い訳になりますが、いつか作ろうと思っていたんですよ?

 ですが、色々とやらないことが多すぎて、なかなか手を付けることができず……

 ついつい、そのまま後回しに。


「オン?」


 名前に反応して、レオンとハルがこちらを見ました。

 とことこと歩いてきて、ぺろりと頬を舐められます。


 レオンとハルはとても大きいですが、でも、中身は猫みたいで、こうしてちょくちょく甘えてきてくれます。

 とてもかわいいです。

 そんな大事な二匹の家のことを忘れていたなんて……


「ごめんなさいっ、レオン、ハル! 私がバカでしたあああぁ!!!」

「ナイン、どうかしたの?」

「さあ?」


 アンジェラさんとシンシアちゃんが不思議そうにする中、私はレオンとハルに抱きついてひたすらに謝罪したのでした。




――――――――――




 普段、レオンとハルは大きな木の下で過ごしてもらっています。

 村の中央に巨大な木があるため、その下は陽が差すこともなくて、雨が降ることもなくて、なかなか快適なのでした。


 とはいえ、いつまでもそんなところに放置しておくわけにはいきません。

 二匹を飼うと決めた以上、飼い主である私がなんとかしないと!


「とはいえ……犬小屋、どうしましょうか?」


 レオンは3メートルちょい。

 ハルはメスなのかレオンより小さいですが、それでも2メートルを超えます。

 そんな二匹の犬小屋となると、かなり大きくしないといけません。

 普通の犬小屋ならともかく、巨大なものになるとうまく作ることができるかどうか……うーん。

 やっぱり建築関係で問題が出てきますね。

 早いところなんとかしないといけないかもしれません。


 さて。


 レオンとハルの犬小屋に関しては、どうしましょうか?


 考えます。

 じっくりと考えます。


「そうだ!」


 良いアイディアが思い浮かびました。


「アンジェラさん、シンシアちゃん。レオンとハルの犬小屋を作ろうと思うのですが、手伝ってくれませんか?」

「ええ、いいわよ。あの二匹も大事な家族だものね」

「はーい! わたし、がんばるよー!」


 二人は快く了承してくれました。


「じゃあ、私たちがベッドに使っているような草をたくさん集めてくれませんか?」

「任せてちょうだい」

「レオンとハルのためにがんばるねー!」


 アンジェラさんとシンシアちゃんは元気よくでかけていきました。

 私もがんばらないといけませんね!


「さてと」


 小型錬金釜と賢者の石を用意。

 さっそく錬金を開始します。


 ぐーるぐーる。


 ぼんっ!


「完成です!」


 ナイン特製、植物栄養剤ができました。


 村の中央へ移動します。


「ごめんね、レオン、ハル。ちょっとどいてくれないかな?」

「ワフゥ?」


 不思議そうにしながらも、レオンとハルは言われたまま木から離れてくれました。

 いい子いい子。

 近くにいると危ないですからね。


「えいっ」


 植物栄養剤を村の中央にある大木に使いました。


 すると……なんということでしょう!

 みるみるうちに大木が成長していくではありませんか!


 ぐいぐいと木が伸びていき、50メートルくらいの高さに。

 新緑の葉をこれでもかというくらいに生い茂らせて、とても元気になりました。

 幹も太く広がり、10メートルほどの幅に。


 うん。

 これならなんとかなりそうですね。

 賢者の石を使った栄養剤だけあって、効果は抜群ですね!


「……」


 レオンとハルが唖然としていました。

 驚かせてしまってごめんなさい。


「さてさて、ここでもう一つ」


 ぐーるぐーる。


 ぼんっ!


「完成! 空間消失爆弾です!」


 接着型の爆弾を作成しました。


 名前が物騒?

 そんなことは気にしないでください。


 私はぺたり、と木の幹に爆弾を貼り付けました。

 うーん……高さはこれくらいでいいかな?


「よし。レオン、ハル。危ないから離れていてくださいね。絶対に近寄ってはいけませんよ? これはフリではありませんからね」


 この爆弾は遠隔起爆型です。


 私も安全圏に退避して……

 スイッチをポチ。


 シュボッ!


 パンパンに膨らんだ袋から一気に空気が抜けるような音がしました。

 視線を幹に戻すと……


「よしっ、成功です!」


 木の幹は巨大な生き物にかじられたように、ぽっかりと穴が空いていました。

 7メートル7メートルほどの丸い穴です。


 これだけの穴が空いても、大木はびくともしていません。

 さすが、賢者の石を素材にした栄養剤で成長しただけのことはありますね。


「あとはアンジェラさんとシンシアちゃんを待てば……あっ、お二人とも、こっちですよー!」


 二人の姿が見えたので、ちょいちょいと手招きをしました。

 二人はこちらに歩み寄り……

 唖然と大木を見上げました。


「なに……これ……?」

「村の中央にあった木ですよ。栄養剤を使って、ちょっと成長してもらいました」

「ちょっとどころじゃないと思うのだけど……ナインって、作るものだけじゃなくて思考も規格外なのね」

「あっ、わたし、わかっちゃった! ここをレオンとハルの家にするんでしょ?」

「シンシアちゃん、正解です!」

「とんでもないことを考えるわね……」


 シンシアちゃんは楽しそうにしていて、アンジェラさんは呆れたような顔をしていました。


 はて?

 なにか呆れられるようなことをしたでしょうか?

 きちんとレオンとハルの家を用意したんですから、褒めてほしいです。

 私、褒められて伸びるタイプなんですよ?


「というわけで、お二人がとってきてくれた草を敷き詰めて……」


 幹の空洞の中に草を敷き詰めます。

 こういうものをクッション代わりにしないと、ちょっと固いですからね。

 やっぱり、寝るところはふさふさでないといけません。


「最後に、先程作っておいた虫よけのお香を置いて……完成です!」


 名付けて、『木の家』です!


 ふふん。

 我ながら絶妙なネーミングセンスですね。


「レオン、ハル。ここがあなたたちの新しい家ですよ。さあ、どうぞ」

「わふぅ……?」


 まずは危険がないか確かめるように、レオンが木の家に入ります。

 すんすんとあちらこちらの匂いを嗅いでいます。


「オンッ!」


 危険がないことを伝えるように、レオンが鳴きました。

 それでハルも家の中に入ります。


 二匹は中でじゃれあうようにして……

 それから体を寄せて、仲良くくつろぎはじめました。


 よかった、気に入ってくれたみたいです。

 これからも夫婦で仲良くしてくださいね♪

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