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⑺不完全性定理

 見渡す限りの真っ白な世界にいた。両手両足は自由なのに、真綿で首を絞められているようで酷く息苦しい。其処には誰もいないのに、誰かに監視されているという嫌な感覚があった。


 飢餓も貧困も無いのに、此処にはいたくないという強烈な不快感が込み上げる。今すぐに逃げ出したいと思うのに、何処を目指せば良いのかも解らない。喉が苦しくて声も出せない。藻掻くように伸ばした手は何も掴まず、まるで底知れぬ海の中を何処までも沈んで行くようだった。


 耳鳴りの向こうで声が聞こえた。

 何を言っているのかは解らないが、それがとても嫌な声であることは知っていた。上から押さえ付けるような高圧的な男の声だった。


 罪の無い子を殺せるのか?


 何のことだと問い返そうとして、自分の下腹部が膨れていることに気付く。自分の身体の中に別の命が宿っている。祝福するべきなのに、何故なのか、それがとても恐ろしくて、悍ましかった。


 目に見えない鎖が、首輪が自分を繋いでいる。左手の薬指に嵌った銀色のそれが逃避を許さない。

 嘲笑が響いていた。逃げたいのに逃げられない。身体は重くて怠い。吐き気を催すが何も吐けない。ただ、息が苦しい。


 誰か、誰か助けて。

 誰でも良い。誰か。


 目の前に水の入ったグラスと褐色の瓶があった。瓶の中は白い錠剤で満たされている。選択肢は無かったのかも知れない。予定調和だったのかも知れない。己で選んだ筈の選択は誰かの筋書きだったのかも知れない。それでも、構わなかった。


 手を伸ばす。手を伸ばす。手を伸ばす。

 誰かが見ている。感じる視線は遥か後方。振り返ることは出来なかった。




「航?」




 航は目を覚ました。

 水底から急に引き揚げられたみたいだった。衣服はしっとりと湿っていて、額には汗の雫が張り付いている。

 部屋の中は暗い。暗幕の向こうから青白い光が溢れ、覗き込む兄の横顔を照らしていた。


 身を起こすと、湊が眉尻を下げて、まるで縋るように此方を窺っていた。航は袖口で額の汗を拭い、情けない顔だと笑ってやった。


 枕元の携帯電話で時刻を確認する。

 午前二時。真夜中である。


 湊は据え付けられた小さな冷蔵庫の中からミネラルウオーターのペットボトルを取り出した。キャップを捻って動物のように匂いを嗅いでいる。差し出されたそれを一気に呷り、半分程飲み下すと漸く息が楽になった。


 夢を見ていた。すごくすごく、悪い夢を。


 以前も同じようなことがあった。殺人人形の一件で、まるで加害者の少女に成り代わったかのような不気味な夢を見たのだ。




「魘されてたよ」




 湊が言った。

 そうなんだろう。湊が起きて心配する程度には、魘されていたのだと思う。


 湊はベッドの横に腰を下ろし、穏やかに微笑んでいた。航は額を押さえて、嫌な夢を見たと告げた。

 すぐさま「どんな夢?」と問い掛けられる。航は躊躇ったが、答えた。湊は時折相槌を打つ以外は無言だった。全てを聞き終えると、湊が言った。




「航は優しいね」




 どういう意味だろう。頭はまだぼんやりとしているが、それが純粋な褒め言葉でないことは解った。


 会話が途切れ、室内は静寂に包まれた。膝の上で両手を組んだ湊が、器用に指先をくるくると回している。会話の切り出しを探っているような仕草だった。


 湊は覚悟を決めるように深呼吸をした。




「葵君の話を聞いてから、ずっと引っ掛かっていたんだけど」




 その目は何処か遠くを見ていた。

 航は布団から抜け出して隣に座った。




「ルーカス氏もアメリアさんも、睡眠薬で自殺したと言われているだろう? 俺はそれがずっと不思議だった」




 葵君も言っていた。まるで、アメリアの霊がルーカス氏を呪い殺したかのようだと。

 湊は呪いなんて自己暗示だと断言していた。ならば、何に納得がいかないのだろうか。




「睡眠薬で奥さんを亡くした旦那さんに、同じ薬を処方するかな?」




 確かに、不謹慎ではある。

 睡眠薬には幾つもの種類がある。その中で、何故あえて依存性の高い睡眠薬を処方するのだろうか。




「バルビツール酸系の睡眠薬は、依存性や致死性が高い。それから、副作用としてビタミン欠乏症や振戦せん妄を引き起こすこともある危険な薬だ。今では、代用品としてベンゾジアゼピン系の薬も開発されているし、鎮静催眠薬として使用されることは、ほぼ無い」




 そもそも、処方されることが有り得ないらしい。

 湊が疑問に思うのならば、葵君だって気が付いている筈だ。では何故、ルーカス氏はそれを常用していたのか。否、常用していたかすら今は怪しい。




「ほぼ無いってことは、使用されることもあるってことだろ?」

「バルビツール酸系の睡眠薬は、癲癇や麻酔に使用されることがある。でも、ルーカス氏に持病は無かった。だから、俺は別の使い方をしていたんじゃないかと思うんだ」

「別の使い方?」




 湊は頷いた。




「バルビツール酸系の睡眠薬は、安楽死にも使われる」




 驚きはしなかった。

 それが危険な薬であることは解っていた。

 解らないのは、どうしてルーカス氏がそれを必要としたのかということだ。




「自殺と他殺の境界線って何だと思う?」




 湊の話は大抵脈絡が無い。頭の回転が早過ぎる為だと知ったのは最近のことだ。唐突に変わる話題に苛々させられるけれど、それが余すこと無く一つの答えに帰結することも知っている。きっと、湊は何かしらの結論に辿り着いているのだろう。


 航は答えた。




「自分でやったか、他人がやったかの違いだろ」

「そう。本人の意思を無視して行えば殺人になる。本人の意思を受けて殺した場合は嘱託殺人で、唆した場合は自殺教唆。それを手伝えば自殺幇助。……俺はね、ルーカス氏はアメリアさんの自殺を幇助したんじゃないかと疑ってる」




 例えばの話。

 湊はそう言い置いて、続けた。




「アメリアさんは実質軟禁状態で、外部の情報から遮断されていた。その中で画一的な情報を与えられ続けると、思考がぶれてしまうんだ。所謂、洗脳の手法だね」

「画一的な情報って何だよ」

「例えばーー、この屋敷からは出られない、とか」




 背筋を冷たいものが走った。

 それは、この屋敷の使用人が再三繰り返して来た言葉だった。外は吹雪だから、屋敷からは出られない。エマもそうだった。貴方は病だから外には行けない。そうして、思考の檻に閉じ込めた。




「俺が此処から出たいと言ったら複数の人が否定しただろ。アメリアさんもそうだったんじゃないかな」




 湊とアメリアの状況を同様に考えるのは些か乱暴に思うけれど、筋は通っている。




「諦めたらご褒美みたいに豪華な食事に誘った。自己承認欲求を満たそうとしたとも考えられる」

「考え過ぎだろ。お前、疑心暗鬼になってないか? 大体、この屋敷の人間は嘘を吐いていないって言ってたじゃねぇか」

「俺に解るのは本人が自覚している嘘だけだよ。本人の自覚しない嘘は解らない」




 湊は確証バイアスに陥っているのではないだろうか。

 自分の考えに固執して、都合の良い情報ばかりを集め、反証する情報を無視している。


 客人を持て成すのはマナーだ。事実、外は猛吹雪で危険だった。湊が帰宅を諦めれば安心するのは当然だろう。




「話を戻すよ。アメリアさんの精神状態が不安定だったのは鬱病じゃなくて、軟禁状態だったからだと思う」

「証拠は?」

「薬の処方箋だよ。向精神薬でもあるベンゾジアゼピン系なら兎も角、処方されていたのはバルビツール酸系の薬だぞ。おかしいだろ」




 確かに、違和感は拭えない。これではまるで、アメリアの自殺を促しているようなものだ。




「自殺した時は屋敷の外へ出ていたんだろ?」

「精神病棟に入院してたんだ。軟禁状態と大して変わらないし、洗脳は簡単に解けない」




 アメリアは自殺した。詳細に言うのならば、ルーカス氏によって、自殺するように仕向けられた。

 航は顳顬の辺りに痛みを覚えた。先程まで見ていた嫌な夢が鮮明に思い出される。あれはもしかすると、アメリアの記憶だったのではないか?


 痛みを堪えながら、航は追求した。




「動機は? 何でルーカス氏がそんなことをする?」




 大金を積んでまで買い取った妻を殺す理由が無い。

 航が言うと、湊は即答した。




「エマに熱湯を浴びせたから」




 顳顬を貫かれるような鋭い痛みが走る。

 確証バイアス? 違う。湊はずっと反証の情報を探していた。その上で結論を出したのだ。




「ルーカス氏にとって、アメリアさんはもう必要が無かったんだ」

「だから、自殺させた?」

「その為に処方箋を偽造した。他の可能性も考えたけど、これだけ重なる偶然は有り得ない。誰かの予定調和だと考えるべきだ」




 目に見えない鎖が自由を奪っている。酷い息苦しさを覚え、航は反射的に首元を押さえた。当然、其処には何も無い。


 航は呻くように問い掛けた。




「証明出来るか?」

「出来る」




 湊は断言した。




「処方箋を書いた医師に訊けば、薬剤の処方にルーカス氏が関与していたのか解るだろう。事件性が疑われるなら、アメリアさんの入院していた精神病棟も捜査出来る。後は葵君の仕事だ」

「立証出来なかったら?」

「それなら、アメリアさんは自殺したんだろう。誰も傷付かないで済む」




 なるほど。

 湊は事件性の有無を確かめることで、アメリアの尊厳を守りたいらしい。


 頭痛が潮のように引いて行く。

 航は尋ねた。




「じゃあ、ルーカス氏は自殺したのか?」




 自分達が此処にいるのは、ルーカス氏の自殺を確かめる為だった。アメリアの件も、エマのことも捨て置くことは出来ないけれど、別の話だ。

 湊の濃褐色の瞳が覗き込んで来る。己の言動に嘘偽りが無いことを証明するように、湊が言った。




「俺は、ルーカス氏は自殺させられたんだと考えてる」




 当然の帰結だった。

 ルーカス氏がアメリアの自殺を幇助したと証明されるのならば、同じ薬を常用する筈も無い。父もルーカス氏は自殺しないと断言していた。




「現場は密室で、被疑者とされる人はアリバイが証明されている。にも関わらず、薬の入っていた瓶が見付からない。ルーカス氏に処分する理由が無い以上、犯人が処分したんだろう。……いや」




 湊は顎に指を添えて俯いた。考え込む時の癖だ。




「明日、もう一度エマと話す」

「解った」

「……俺が間違った時は、止めてくれよな」




 そんなことを言って、湊は力無く笑った。

 当たり前だ。航は鼻で笑ってやった。


 窓の外には夜明けが迫っていた。









 9.生贄

 ⑺不完全性定理










 吹雪は止んでいた。

 窓を開けば、一面の銀世界が広がっている。清涼な夜明けの空気が肺を満たし、細胞の一つ一つが目覚めるようだった。


 湊は真剣な顔付きで電話をしていた。時折、腹の虫が鳴くので馬鹿らしく見える。けれど、そういう格好の付かないところが湊という男なのだと知っている。


 電話の相手は葵君だった。

 湊の結論を告げると、葵君は重く受け止め、すぐにでも捜査してくれると言っていたらしい。アメリアの自殺に事件性があれば、ルーカス氏の死の真相解明にも繋がる。皮肉なことだ。


 ノックの音が聞こえた。見覚えのある使用人が朝の挨拶を告げ、朝食に誘った。ところが、湊は空腹を訴えていた癖に断ってしまった。昨夜もそうだった。何か理由があるのだろう。妙な味や臭いはしなかったが、湊が警戒するのなら、自分も口にする訳にはいかない。


 朝一番に業者がやって来て、オートロックを修理した。無事に開いた玄関扉を見ると、胸に痞えていた重石が無くなるような安心感を覚えた。

 去り際の業者に湊が何か話し掛けていたが、興味が無かったので放って置いた。


 街は雪に覆われ、相変わらずバイクでの移動は難しそうだった。流石にスタッドレスタイヤなんて準備していないので、手で押して帰るしかない。

 業者と話し合えた湊がやって来て「轍を走れば良いだろ」と安易なことを言うので叩いてやった。


 広間にはソフィアとエマがいた。朝食を終えたところらしい。暖炉のお蔭で部屋の中は暑いくらいだった。

 ソフィアの視線が冷たいのは、朝食を断った為だろう。失礼にあたるのかも知れないが、どうでも良いことだ。


 空になった皿を使用人達がライン作業のように下げて行く。食後のコーヒーを勧められたが、やはり、湊が断った。

 湊はそのまま席に着いた。真っ新なテーブルを挟み、湊とエマが対峙する。昨夜までは微笑ましい光景だったのに、今は何故か、互いの首元に刃を突き付けているかのような緊張感を滲ませている。航が隣に座ると、エマは不思議そうに小首を傾げた。


 エマは嘘を吐いていない。

 あの時、湊はそう言っていた。ならば、エマの言葉は真実だったのだろう。湊はテーブルに肘を突き、覗き込むようにして言った。




「俺はね、人の心が解るんだよ」




 相変わらず、唐突な男だ。

 そんなことは聞いたことが無いけれど、何か意味があるのだろう。エマは驚いたように目を瞬かせて、両手を打ち鳴らした。




「すごい! どうやってるの?」

「その人の目をじっと見詰めていると、心の声が聞こえて来るんだ」




 今もね。

 湊は挑発的に笑った。

 エマは微笑み、テーブルに身を乗り出した。和やかな雰囲気の中で、一触即発の何かが繰り広げられているようだった。




「君の声も聞こえる。君はずっと、誰かと遊びたかったんだね。年が近くて、会話が途切れないような、自分の予測を越えて行くような、そんな人が」

「ええ、そう! 本当に解るのね!」




 エマは椅子の上で跳ねる。

 多分、コールド・リーディングだ。

 湊はやや体を乗り出して、エマの瞳を覗き込んだ。




「お父さんは優しかったかい?」

「ええ! とっても!」

「だから、薬をあげたの?」




 エマは首を捻った。経緯を知らなければ聞き逃してしまいそうな程、自然な会話の流れだった。




「何の薬?」

「瓶に入っていただろ? ほら、あの薬さ」

「解らないわ」




 航は焦燥を押し殺すように奥歯を噛み締めた。湊は姿勢を正した。エマも同じように座り直す。ソフィアが何かを言いたげにしていたので、牽制のつもりで睨んだ。




「じゃあ、思い出したら、またお話ししよう」

「解らないけど、私、湊ともっとお話ししたいわ」




 湊はにっこりと笑って席を立った。




「一晩泊めてくれてありがとう」

「また来てくれる?」

「いつかね」




 そのまま歩き出してしまうので、航は慌てて後を追った。


 昨晩は開かなかった両開き扉を押し開ける。雲一つ無い青空の下、乾いた風が吹き付ける。新雪を踏み締めながら、ガレージに向かった。


 愛車を引っ張り出して、新雪の上を押し歩く。二百キロ近い車体が、雪のせいで更に重く感じられた。

 轍を走る程、交通量は多くない。危ない橋は渡らない主義だ。ざくざくと音を立てて歩く湊の背中を見詰め、航は口を開いた。




「どうだった?」




 屋敷の敷地外に出たタイミングだった。

 そういえばソフィアを置いて来てしまった。

 湊は振り返りもせず、抑揚の無い声で言った。




「エマは嘘を吐いていなかった」




 航はほっとした。つまり、ルーカス氏を殺したのはエマじゃなかったということだ。

 それなら誰が? という次の疑問が現れるが、今は湊の考える最低な可能性が裏切られたことを喜んでおく。




「でも、本当のことじゃなかったんだと思う」




 航は眉を潜めた。

 嘘ではないけど、本当でもない?

 そんなことが有り得るのだろうか。




「屋敷のオートロックがどうして開かなかったのか、修理業者の人に訊いたんだ。そしたら、人為的なシステムの操作だって」

「どういうこと?」

「誰かがオートロックシステムの電源を落としたんだ。故障じゃなかった」




 故障じゃなかったのなら、良かったのだろう。

 だが、湊は納得しない。当然だ。湊には他人の嘘が解る。屋敷にいた人間は故障のせいで出られないと言っていたのだ。とは言え、全ての人に会った訳ではないから、誤報が広まってしまったのかも知れない。


 湊は何かを考え込んでいるようだった。一人で考え過ぎるのは湊の悪い癖だ。航は笑った。




「考え過ぎだろ」




 屋敷の通りを抜けると、交通量の多い大通りが見えた。除雪され、路面凍結の心配も無さそうだ。航はバイクに括り付けていたヘルメットを投げ渡した。


 帰宅後、葵君から連絡が入った。

 ルーカス氏の掛かり付けの医者に事情聴取した結果、診断書の捏造が発覚したという。また、アメリアの入院していた精神病院も共謀して病をでっち上げ、バルビツール酸系の薬を処方したという事実も明るみに出た。

 アメリアは洗脳され、自殺を図った。そして、ルーカス氏は病院と共謀して自殺幇助を行なった。医師の証言により、湊の推理が的中したことを知った。


 医者は裁くことが出来るが、死者を裁く法は無い。この真実は秘匿されるだろう。葵君は苦く言った。


 航は堪らない気持ちだった。アメリアの無念を思うと胸が苦しかった。彼女は本当に軟禁状態にあったのだろう。そして、洗脳の後、自殺させられたのだ。


 彼女の目に夫であるルーカス氏はどのように見えていたのだろう。彼女は胎に宿った命をどう思っただろう。娘に熱湯を浴びせた時の彼女はどれ程、苦しかっただろう。


 そして、死した後もアメリアはルーカス氏から逃れられないのだ。何故なら、婚姻関係にある二人は同じ墓で眠っている。真実が秘匿される以上、打つ手が無い。


 自分に出来ることは何一つ無い。それが虚しかった。




「俺は諦めないよ」




 葵君の話を聞き終えた湊が、そんなことを言った。

 湊にだって何も出来ない。だって、アメリアもルーカス氏もこの世にはいない。それでも、諦めないと言った湊に、航は少しだけ救われた気持ちになる。


 何でもかんでも救える訳ではないし、湊が背負って行ける訳でもない。それでも、彼女の無念を忘れず、名誉を回復させる為に尽力すると言ってくれる人がいる。




「湊が諦めないなら、俺も諦めねぇ」




 どちらともなく、二人で拳をぶつけ合う。

 自分達が立ち向かおうとしているものが何なのかも解らない。無謀も承知だ。でも、諦められないならば無理に納得する必要も無い。


 航は湊の肩を叩いた。




「さあ、延長戦の始まりだ」

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