『スエズ運河』『インド鉄道紀行』
この時代、インド国内やイギリス~インド間の交通についてはどうだったのでしょうか? 小説を書くならある程度把握しておきたいところですが、日本語の資料では十分にわかりませんでした。
1830年にイギリスで鉄道が開通し、世界的に鉄道時代が始まります。ちなみに日本では1872年がはじめです。では、インドではどうだったでしょうか?
――インドの鉄道の歴史はアジアでもっとも古く、1853年、ボンベイ(現ムンバイ)~ターヌ間開業、日本より19年も早い。デリー~カルカッタ(現コルカタ)間の鉄道が敷設されたのは1850年代後半から60年代前半にかけてである。――
一方、イギリス~インド間はどうでしょうか?
1869年にスエズ運河が開通すると、船でアフリカ沖を南下する喜望峰周りの時より半分以下の時間で行けるようになります。フランス主導で進められたスエズ運河の事業は当初イギリスは反対する立場であり、地中海と紅海を結ぶのはエジプトに鉄道を通すことで達成しようとし、アレクサンドリア・カイロ・スエズを結ぶ鉄道を実現したのですが、スエズ運河が開通すると、一番スエズ運河を利用するようになったのはイギリスでした。
資料によっては、1857年のセポイの反乱として知られるインド大反乱の影響で兵員をインドに送るためにも、イギリスはスエズ運河の開通を望んでいたという立場の資料もあります。
1857年のインド大反乱はインド国内に混乱をもたらし、それにより、様々なドラマを生みました。ラビンドラナート・タゴールの長編小説『ゴーラ』は、そのインドの混乱の中での出生の秘密を持つ主人公の物語であり、シャーロックホームズシリーズの『四つのサイン』もセポイの反乱絡みの作品です。『四つのサイン』を読むと驚くほどセポイの反乱について書かれていて、シャーロキアンはこの時代のイギリスやインドのことに詳しいのだろうなと思いました。
歴史小説を書くなら、このインド大反乱の混乱に何かが起きたことにすれば、ドラマが生まれたかもしれません。
参考文献
『インド鉄道紀行』 宮脇俊三著
『スエズ運河』 酒井傳六著 朝日文庫
『鉄道という文化』 小島英俊著 角川選書
『四つのサイン』 アーサー・コナン・ドイル著 河出文庫