『タゴール著作集』
タゴール著作集1~11巻+別巻を読破すれば、インドの歴史小説を書くのにかなり参考になるに違いないと思い、かなり分厚い12冊の本を公立図書館で借りて読破しました。
集中力が続かず読み飛ばした所もあるし、興味深かった箇所もあるけど、結論から言えば、あまり歴史小説を書く資料としては参考にならなかったです。しかし、資料として参考になりそうな箇所とか、印象深かった点などについて書きたいと思います。
ラビンドラナート・タゴール(1861~1941)はアジアで最初にノーベル文学賞を受賞した人として知られています。この人を小説の登場人物として出すとすれば、ノーベル賞を受賞する場面の描写はどうしよう? と思っていたのですが、
1913年ノーベル賞受賞のニュースをインドで聞き、授賞式に外国へ出向いたわけではなくて、
1914年1月29日にベンガル知事カール・マイケル卿が政庁でスウェーデンから届いたノーベル賞を授与したということで、インドで受け取ったらしいです。
1914年には彼は電気、水道完備の新居に入居したりして、この時代の比較的裕福なインド人の電気、水道の普及の状況が窺えます。
次にタゴール著作集の中で印象的だった部分を抜粋します。タゴールの思想=インド思想ではないけれど、インド思想の伝統を受け継いでいます。少し引用が長くなるけど面白い考えだと思います。
――ある日の夕方、私は小舟に乗り、美について書かれた一冊の英語の本を読んでいたが、読み疲れたので灯を消したところ、小舟のすべての窓から月光が降り注ぎ私の座っていた部屋一杯に満ちあふれた。その灯がテーブルの上で点っていたため、大空に輝く月光は私の居る部屋の中へ入ってくることができなかったのである――部屋の外では無数の美が天界と地界に充満して中に入る機会を待っていたのを私は知らなかったのだ。我々の自我とはそのようなものである――つまり、もっとも身近なこの自我は我々のもつあらゆる知覚力を周りから覆ってしまっているため、大空に満ちた無数の喜びを我々は感じとることができないでいるのだ――したがって、この自我が消滅すると同時に筆舌に尽くせぬ喜びが一瞬のうちに我々のもとへ完全な形で姿を現してくることであろう。――
――ヒンドゥー教の聖典では、この世界が卵と見なされている。もしそれがほんとうだとすれば、その中味は生き物であり、そのものの成就とは殻を破って自由な存在となることである。我々の世界は我々を養ったり、保護したりするあいだは、我々の身のまわりを取り巻いている。我々の感受性や考えの範囲は狭くて、それが世界という卵の殻をつくり、我々の意識はその中に閉じ込められている。――(中略)――我々の感受性の領界や精神の視界の外へ出て、より広い自由さの中へ入るということが、我々の不滅性のもつ意味なのである。我々は今の閉じ込められている段階で、自由の領域というものがどんなものであるのか、はたして想像できるであろうか。殻の中の全ての事実というデータから、ひよこはやがて生れ出る世界がどんなものか考えられるであろうか。――
ここまで、長々と引用して何の話題につなげたかったのかと言うと、無理やり感はあるけど、ヒンドゥー教の「ドヴィジャ」について書きたかったのです。
引用した思想とは別のものですが、卵つながりということで話題を変えます。
ドヴィジャは、ひよこが卵の殻をやぶり生まれるように、卵として生まれ、鳥として生まれる――2度生まれることです。2度生まれる者を再生族と言います。
カーストについてはウィキペディアなどで調べられた方が早いですが、再生族とはカーストの上位3つの階層であるバラモン、クシャトリヤ、ヴァイシャで、赤ん坊として生まれた後、何年か後に再生の儀式をして2度生まれたことになり、聖紐を授けられます。カースト下位の身分であるシュードラや不可触民などは、再生族ではなく2度生まれないので、聖紐は持っていませんし、見下されます。そんな差別を知ったガンディーは自分の聖紐を捨ててしまったという話もあります。
カーストについて私なりのアプローチでどこまで説明できるかわかりませんが、もう少し資料を読み込んでみようと思います。
インドの歴史小説を書くという試みから話題がそれましたが、身分違いの恋で駆け落ちをしてタゴール家を頼る、バラモンの青年のラリットのバラモンらしさを表現するのにガーヤトリー(サーヴィトリー)を利用しようと考えました。
朝、太陽が昇る時、と夕方、太陽が沈む時に唱える聖なる言葉です。
「大地と、空気と、星空とを創造し、われらの心のうちにそれを理解する能力をつかわしたもう、あのかたの尊い輝きに、願わくは、深く思いをいたさしめたまえ」
ラリットが朝、夕に聖句を唱えていたら雰囲気が盛り上がるのではないかな? 正確な風習の描写かどうかはわからないけど・・・。
参考文献
タゴール著作集 1~11巻+別巻 第三文明社
『マヌ法典』 渡瀬信之 訳 中公文庫