これはまた別の書記
散歩の途中に偶然通りかかってしまったのがまずかったのだ。
忘れていた意図的に消し去り闇に葬るはずのものが一部溢れてしまった。
「やっぱり呪おう、そうしよう」
人を呪わば穴二つ、なんて言いますけどね。ええ、ええ、それで構いませんとも。
死なば諸共、結構なぁ話じゃありゃしませんか。上等、上等。
望む所だ。
嘘吐きには鉄鎚を。
裏切り者は殺してしまおう。
大切な人を泣かしたのは誰だ。アレだ。
大切な人を苦しめたのは誰だ。アレだ。
大切な人を奪ったのは誰だ。アレ等だ。
大切なヤツは彼処で過ごした。
大切なやつとは彼処で生きた。
奪ったのだ。
奪われたのだ。
殺してしまおう、そうしよう。
呪いで呪いで呪いで呪いで呪いで呪いで呪いで呪で呪いで呪いで呪いで呪いで呪いで呪いで呪いで呪いで呪いで……
ヤツはんだか、いや、まだだ。
ヤツ等はんだか、まだ、まだだ。
可哀想なのは巻き込まれたカレ。
知らぬうちに恨みを買ってる。
知らぬうちに怨みを買ってる。
諸共に八当たられる。
拒否しなかったのはカレ。
拒否しなかったカレ。
そんなの知らない、解らない。構わない。
最も鉄鎚が下るのは恐らく、私だ。
『大丈夫』
『大丈夫』
『大丈夫』
その嘘は真だった。
その嘘は本当だった。
それで良かった。
『大丈夫』だった。
それが反転した理由は何だ?
何かがキズだらけだ。
何かがアナだらけだ。
私を構成する大部分は消え去った。
だが、本当に
傷だらけなのは私ではない。
本当に
穴だらけなのは私ではない。
泣かないでほしい。泣いてもいい。
悲しまないでほしい。悲しむといい。
笑って、笑って。笑わなくてもいい。
ただ、幸せはあなたと共にある。
不良が猫を助けると好感度が上がるのに、聖人の一度の過ちが許されないのは何故なのか、とずっと不思議だった。
総体的な善行の質と量は明らかに聖人の方が上で、悪行は不良の方が上だろう?と。
本質は善悪ではなかったらしい。
『信頼』というモノを相手に払っているのだ。お金のように。
相手の何かに対して自分の『信頼』が支払われる。
不良はマイナスが返済される。
聖人は今まで払い続けた『信頼』が高ければ高いほど悪い事が起こった際に「それだけの価値がなかった」「高く買って損をした」「私の『信頼』を返せ」となるのだ。
納得したくはないが納得した。
それだけの話。