世界の端
この世界には、端があると小耳に挟んだことがあった。
その日から世界の端について36年間。ずっと研究を続けた。端にはいったい何があるのか、不思議でならなかったのだ。しかし、自力で端まで行くほどの資金は持ち合わせておらず、実際に行くことはできなかった。
ある日のことだった。新聞に、今から世界の端を探しに行く。そういい始めた男が載っていた。
すぐさま彼のとこにかけつけ、自分も連れて行ってくれ、と頼み込んだ。
男は思いのほか容易く受けてくれ、旅費はその男が払ってくれるようで、歓迎しているように見えた。
次の日に出発した。すると出発際に男はいった。
「君は、僕とは逆の方向にまっすぐに進んでくれ」
何をいっているのかが不思議であった。一人でいくのであったら二人で来た意味がなくはないか。
もしかすると、この男は最初から我輩を歓迎していなかったんだ。そう思った。
少し機嫌を悪くし、無言でまっすぐに突き進んだ。
それからというもの、ずーーーーーっと
ずーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっと
ずーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっと
歩き続けた。しかし、終わりがみえない。
そもそもこの世界には終わりがなく、永遠と続いているものと感じた。
朦朧とした意思の中、向こうを見ると、見覚えのあるひとりの男が歩いてきた。
そして彼はいった。
「やあ、会えたね、僕の考えは正しかったのだ」
意味がわからなかった。
続けて彼は口を開いた。
「この世界には端がないんだ。わかるか?君はどうがんばっても端っこを見ることは出来ない」
彼の所為で、我輩の36年間は水の泡となった。
次の瞬間。我輩の手にはいやな感触が走った。人を貫く感触。
生暖かい彼の血が、手のひらを真っ赤に染め上げた。