真実
私は学校の帰り、人気の無い道路を歩いていた。
「雅・・・渚?」
背後から低い声が聞こえた。
振り向いてみると、帽子をかぶった男が立っていた。
「誰だお前?」
私は不良の時の口調で聞く。
「覚えてねーのか?」
「お前なんか頭の隅にも残ってねーよ!」
「ほー?」
男はそう言うと、急に足をあげて私に蹴りかかってきた。
「おっと」
私は軽々とよけた。
「やっぱり・・・、元ヤン隊長にはこんなもん楽勝か・・・」
「あ゛ん゛?なんでアタイのことそこまで知ってんだよ・・・?」
蹴りかかってきたあの感触・・・。
ただ者じゃねーな・・・。
「だって俺・・・」
男はそう言いながら帽子をとった。
「現役ヤンキー、元副隊長、石田実介だ」
元・・・副隊長・・・?
え。まかさ・・・
「え?もしかして・・・実ちゃん?!」
「そうだよ。やっと思い出したか、渚」
やっぱり・・・
いつも冷静で、私の暴走を止めてくれて、私を支えてくれた・・・あの実ちゃん?!
なんか・・・大人っぽくなってる・・・。
背も伸びたような・・・。
「で?アタイに何か用??」
「・・・ヤンキーにまた戻ってくれないか?」
「・・・え?どうゆうこと??」
「今の隊長が暴走してるんだ。仲間達もみんな止められなくて・・・。俺でも無理なんだ。それで、渚にそいつの暴走を止めてもらって、また隊長になってほしいんだ・・・」
「・・・無理よ」
「なんでだよ!!」
「ヤンキーやめる時言ったでしょ?」
ーー2年前ーー
私この頃はヤンキーの隊長をやっていた。
「隊長!またあいつらが借金を返しやせん!!」
「はぁ?!マジかよ・・・」
「どうする渚?」
「うーん・・・。よし!アジトに突入だ!!」
「「ういっス!」」
私達は借金を5年も返さない奴らのアジトに潜入した。
「グッ」
「うわっ」
次々と部下達を倒していった。
「おめーがボスか!」
「ふんっ!何しに来た?」
「とぼけんな!借金返せやボケェッ!!!!」
「なんのことだ?」
「コノヤロォ!!」
私はボスに殴りかかった。
数分後、
ボスの顔は腫れあがり、ヤバイ状態だった。
でも私はやめなかった。
「や、やめろッ!渚!!」
実ちゃんが私の暴走を止める。
「はなせ実ちゃん!」
「我慢するんだ!!」
「・・・ッ」
私は舌打ちをしたが実ちゃんにめんじて我慢する。
「す・・・すいませんでしたぁ」
ボスは腫れた目から涙を流していた。
「いますぐ借金を返せ。そしたらゆるしてやる」
「わか・・・」
「まてッ!」
ボスの言葉をさえぎり、高校生ぐらいの男の子がやって来た。
「悟・・・」
え・・・!
コイツ・・・。
私は固まった。
「渚?どうした??」
そう、コイツは私が小学校の頃好きで好きでたまらなかった大好きな人だった。
「さと・・・る君?」
「え。雅?!お前ヤンキーだったのか・・・。かっこわりぃな」
がーん
か・・・かっこわるい・・・。
最悪だぁ〜。
「それより雅!この人を見逃してくれ!!金なら俺が払う。だから・・・」
私はショックのあまり・・・
「はぁ?アンタが今払えるっての??」
愛しかった人にこんな口調で言ってしまった。
「今は無理だ・・・。でも!いつか必ず返す!」
「信じらんねーな。アタイ達はこの人を5年も待ったんだ。今すぐ返し・・・」
悟君はその場に座り込んだ。
「殴れ!この人の変わりに殴れ!!元はと言えば俺のせいなんだ!!」
なんで・・・?
なんでこんな奴のために・・・。
「もういい。何年でも待ってやる。ただし!5年以上経っても返さなかったら・・・お前の命ねーから」
私は悟君の胸ぐらをつかんで言った。
「・・・分かった」
「野郎ども!退却だッ」
「「ういっス!」」
私達がアジトの入り口に着いた時、
「雅!」
悟君に声をかけられた。
「何」
「俺・・・はっきり言ってビビった。あんなに可愛かったお前がこんなかっこ悪くなって・・・。ヤンキーなんてやめろよ?俺、そんなお前嫌いだ」
そう言って悟君は去って行った。
¨そんなお前嫌いだ¨・・・か。
私はその後すぐにみんなに話した。
「野郎ども!よく聞け。・・・アタイは今日で隊長とヤンキーをやめる!!」
「なんでだよ!」
「隊長やめんなよー」
そう言う声が聞こえた。
「渚なんでだ?」
「アタイは今まで人を倒したり、物を壊したり普通にしてきた・・・。でも、もうそんなことがアホらしくなったんだ!!だから・・・ワリィ」
私は頭を下げ、自分のアジトから去って行った。
そして私はヤンキ−をやめた。
ーー2年後ーー
「そうだけど!俺達には渚が必要なんだ!」
「アタイはもうやめたって言ってんだろッ!」
「・・・ってかさ」
「あ゛ん゛?」
「今の話聞いてるとまだその悟って奴のこと好きってことか?」
「だまれコノヤロォ!!!!!」
バキッ
私は実ちゃんの頬を殴った。
「ヘヘッ。あん時と全然変わんねーな」
実ちゃんは殴られたにもかかわらず、普通の顔をしていた。
「そいつのためだけに辞めたのかよ」
「・・・だまれ」
「アタイの気持ちしんねーくせに偉そうに言うんじゃねー!!」
「知るかよ渚の気持ちなんか!」
「もーイヤなんだよ・・・。嫌われんのは・・・」
「・・・渚・・・」
私の目にはいつの間にか涙が溢れていた。
「もう・・・1人はイヤだ・・・」
「渚は1人じゃねーよ!」
「え・・・?」
「俺がいんじゃんッ」
実ちゃんはニカッと笑った。
「実ちゃん・・・」
「まーまた考えといて!」
そう言って実ちゃんは去って行った。
・・・あんなこと言われたけど・・・どうしよ・・・。