あのね、神の一手を模索するの。
さて、いよいよ激突するんだけど。
このまま、両者突撃じゃ些か赴きがない。
私は、一人。
向かい合ってる妹を越え。
さらに、崖を降り、平野に足をつけた。
「姉上っ! どちらに!?」
「姉さん?!」
私の突飛な行動に驚いたのか。
妹達が心配そうに声をかけるけど。
「大丈夫、大丈夫、こういうのは最初にこうするものだよぉ」
私はさらに先。
千の味方を縫いながらだだっ広い平地、その中央に足を進めた。
私の意図をくんでくれたのか。
あちらの大将も動いた。
私同様、一人で、荒野のど真ん中へ。
ゆっくり歩いてくる。
やがて、二人は会話できるほど近く。
「どうも、どうも~、久しぶりだよぉ」
「ご無沙汰しておりました」
双方、にこやかに口を開き、軽めの挨拶。
「動いたって事は、もう準備は整ったのかな? まさか天人を引っ張り出すとは思ってなかったよぉ」
「あは、それはこちらも同じですよ。魔人まで利用するなんてさすがですねぇ」
お互い、笑いあった。
この子とは、立場が違えばいい関係を築けたかもしれないね。
私ととても近い気がする。
表面上は友好に、されどどちらも信用することはなく、ただひとすら利用しあう、そんな素晴らしい関係を。
「さて、さっそく勝負方法なんだけど・・・・・・」
「そうですね、このままやったらそれは、ただの天人と魔人の争いになるだけです」
妹達は別としても、他と天人魔人との種族差が大きすぎる。
「・・・・・・てのは、どうかなぁ?」
「ふむ、なるほど。いいのではないでしょうか。面白そうですね」
私の提案に、蓮華ちゃんは了承してくれた。
「じゃあ、準備はこちらでするよぉ。じゃあ、また後でねぇ」
「はい、ではまた。次はあれですねぇ、最終局面でしょうか」
話合いは済んだ。
私は、背を向け自陣へと戻る。
あちらも、同様に踵を返した。
お互い、数歩踏み出した所で。
一斉に振り返る。
「まぁ、ここで頭を取っとくのが一番手っ取り早いよねぇぇ」
「あはっ、やっぱりっ! そう来ると思ってたんですよー」
大地から、数十本の闇の鎖が、蓮華ちゃんに向かって伸びる。
同時に、両手に握った魔剣を、クロスさせるように振り抜く。
あちらはあちらで、すでに銃はしっかり握られていて。
魔力の装填も充分。
身体からは、溢れんばかりの光。
斬撃は、銃撃と相殺。
その衝突は大気を焼き尽くす。
その衝撃で私は自陣を越えて、吹っ飛ばされた。
飛んでく私を見上げながら。
「姉者っ!」「葵姉っ!」「姉さんっ!」
妹達が声を上げるも。
空中でくるりと一回転、何事もなかったように着地した。
「大丈夫だよぉ。ちょっとした挨拶なの」
あんな不意打ちで首を取れるとは思ってはない。
でも、分かったこともある。
蓮華ちゃんの属性は光。
それも、私の鎖を全て消し去るほどの強さ。
さらに、あの魔銃も一発で、私の二刀の魔剣と同等の威力。
なかなかやりますな。
「さて、みんな、勝負方法が決まったよぉ」
私はそういうと、円ちゃんを手招きで近くに呼ぶ。
「その剣で、大地を・・・・・・9×9の・・・・・・」
私の説明を聞いて、円ちゃんが聖剣片手にすぐに行動。
聖剣による斬撃が。
平地に、線を刻む。
それは、81のマス目を作った。
一つ一つがとても広い。
私達の世界ではその数にピンと来る者もいるだろう。
でも、この世界ではそんなゲームはない。
「姉御、言われた通りにしたけど、これ、なん、なのだ?」
円ちゃんは、私と同じ世界から来たと思うけど、分かってないみたい。
「うんとね。私達の世界にあるゲームをするんだよぉ」
決められたマスには特定の駒を置いて。
順番に進める。
そう、私と蓮華ちゃんは将棋を指そうとしてるの。
勿論、駒は本当の人間。
「まずは、私の指示通りに40に兵を分けるよ。魔人の二人は、一人ずつで、左右に」
ここで、本来のルールと違うのは、攻められた方が必ずとも勝つとは限らない部分。
歩で、金は取れない。
天人にダメージを与えられるのは、神器を持つ妹達、そして魔人のみ。
それを考慮しなければならないので、定石は無意味。
あちらも、兵を分け始めてる。
私と同じく、天人を飛車と角にしてるね。
移動できる範囲は同じだから、まぁ当然か。
天人魔人、そして妹達は単騎。
歩の部分を、100人ほどの兵士で構成。
飛車が魔人のお姉さん。角が魔人の幼女。
金はそれぞれ、オニチナちゃん、パンドラちゃん。
銀は、エルフの二人。
桂馬がフレムちゃん、カジーナちゃん。
香車が、円ちゃん、後一人足りなかったから属性屋のお姉さんを急遽招集。
「ちょっ、なんですか、いきなり呼び出されたと思ったらっ!?」
「まぁ、まぁ、大丈夫、大丈夫」
さすがに、この駒には他の兵もつける。
そして、王と玉は。
勿論、私と蓮華ちゃん。
さて、両軍配置は完了した。
先手は私でいいよね。
物言いが付く前に始めちゃおう。
「さぁ、行くよぉ、まずは・・・・・・初手7六歩っ!」
2六歩でも良かったけど、まずは幼女魔人から試してみよう。
私の掛け声で、マスにいた兵士達が一斉に移動を開始する。
「あら、先手を取られましたか。まぁいいでしょう。それじゃあ私は、8四歩といきましょう」
こうして、変則ルールまじりの特殊将棋合戦が始まったの。
長考は好きじゃない。
だから、どんどん行くよぉ。
盤面を覚えてられる自信がないので、多分無茶苦茶になります。




