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あのね、再開なの。

 さぁ、仕切り直しだよぉ。


 羽根の枚数も増え、天人の片目が金色に輝いてる。


 本気になったんだ。


 本来、天人、魔人は種族で見れば最高位。

 反対に私達人間は、最底辺。  


 勝算は限りなく薄い。


 それを、補ってるのは。

 人数差と、二本の魔剣、一つの聖弓。


そして、私の底なしの闇。

 円ちゃんの、その底を照らすほどの光。

 規格外の属性値。


「あぁ、痛いっすね。久しぶりに痛みを感じたっすわ」


 

空に浮かぶ天人が、四散した自分の腕を見つめている。

 

 片腕は潰した。

 これなら、このまま押し込めるかも。


「ま、すぐ直すっすけど」


 無くなった腕の先が輝き出す。

 周囲の光を取り込むように。

 集まり、形作っていく。


「・・・・・・おやおや、まぁまぁ、それはちょっとチートすぎじゃないかなぁ」


 やっとの思いで、刈り取ったのに。


 天人の腕が元に戻った。

 

 回復速度が、エルフの魔法の比ではない。

 瞬時修復。


 本気になったなんて、とんだ勘違いだったよ。


 あっちはまだまだ余裕があった。


「これは参ったねぇ」


 神器を駆使して、二人がかりでも倒せないのか。


 円ちゃんは、足を引っ張ってはないけど。

 それでも意思疎通が完璧に出来てるとはいえない。

 結構、もどかしい状況も多い。


 そりゃそうだね、この前、妹にしたばかりだし。

 むしろ、よくここまで合わせてくれてるよ。   


 このままじゃ、ジリ貧。

 あの回復力、一気に倒さなきゃ。


 勝算は、1割もないね。


「ほらほら、どうしたっすか? やらないんすか? もう始めてもいいすっかね?」


 二の足を踏んでいる私達をあざ笑うかのように、上から見下ろしている。


 考える、選択肢は二択。

 私は瞬時に答えを出した。


 よし、円ちゃんを囮にして逃げよう。


 特攻してもらって、その隙に全力でこの場を去る。


 ここに来たゲートまで下がればなんとかなるね。 


 あの子の能力なら、2分ほどは保ってくれるはず。

 それだけあれば充分。

 聖弓と聖槍を失うのは痛いけど、ここはしょうがない。


 さっそく対面の先、円ちゃんに目で合図を送・・・・・・。


 その時だったの。


(その選択は間違いだよぉ)


 いきなりハンマーで頭を殴られたような。

 脳全体に大きく広がる声。


(円ちゃんは、誰よりも、なによりも・・・・・・)


 響く、響く、響く、響く、響く、響く。


 な、なんなんだよぉ。

 この、声は・・・・・・。


(少し見せてあげる。私達の本来の絆・・・・・・)


 声はそう告げ。


 瞬間、頭が一気にクリアに。


「あ・・・・・・」


 円ちゃんが、私を見てる。

 なにをすればいいか、聞いてるんだ。


 その顔は。

 とても、とても。

 愛おしく。

 今すぐ、抱きしめたい位。


 どうしちゃったんだろ、私は。

 この気持ちは一体。

 知らないなぁ、これ。

 

 でも、案外、悪くないかも、しれない。


「・・・・・・そうだね・・・・・・もう少し頑張ろうか」


 円ちゃんに視線を送る。


 そして、地面を踏み込んで。


 飛んだ。


「お、やっぱ、やるんすね? 絶対勝てないっすよっ!」


 二本の魔剣を握りしめて。


「さぁ、それはどうかなぁ?」


 闇の鎖を飛ばしながら。

 魔剣を振り回す。


 青と赤の斬撃が相手に襲いかかるが。


「そんなの、当たらないっすよっ!」


 軽く避けられた。

 

 魔剣の斬撃は、受けると厄介なのは学習してるから、避けると思ってたんだよね。


 でも、その先には。


 ピンポイントで。


「んっっ! あぁああ」


 円ちゃんの放つ、聖なる矢が。


 天人は、とっさに聖剣で防ぐも。


 ぶつかる光と光は、光量をこれでもかと溢れだし。

 

 爆発。


 動きが止まったら、すかさずこちらも斬撃。

 天人と、そしてその真下の地面を狙う。


 爆圧、爆風、放つ分だけわき上がった。


砂塵、煙が周囲に包み込む。

 視界が遮られる。

 

 それは、どっちもだけど。


 その状態で、相手が認識するのは。


 魔剣を、鎖の先に絡ませて。


 標的の元へ。


 いいねぇ、全身から光を放ってるから、まるわかりだよ。


 反対に、私は、煙に紛れて一体となる。


 円ちゃんも同じように、光を纏ってるけど。


 今の私にはわかる。


 円ちゃんの、動きが手に取るように。

 なにをしようとしてるか。

 なにを求めているのか。


 それは、円ちゃんも同じで。

 私が。

 なにを、指示してくるか。

 なにを、求められているか。


 お互い、手に取るように分かる。


 まるで、ずっと一緒にいたように。

 まるで、絡み合った鎖のように。

 まるで、本当の姉妹のように。


「姉御っ!」


 うん、分かったよぉ。


「円ちゃんっ!」


 う、うん、分かったのだ。

 そう聞こえたような気がした。


 光の矢が、煙の中をいくつも飛び出ていく。

 

 でも、私に当たる事はない。


 相手を誘うように。


「ここだよぉっ!」


 飛び込んだ先。


 思い描いていた通りに。


 天人の姿が、目に飛び込んできた。


 目があった。

 意識は完全に私の元に。


 刹那、左右から、闇の鎖に繋がれた魔剣が挟み込むように斜め下から襲いかかる。

 

 相手は私しか見てないから。

 避けきれず、両腕に魔剣が突き刺さる。


「うがああっ!」 

   

 悲鳴と同時に、腕に呪いが降りかかる。


 一瞬で、膨張。

 二本の腕が、弾け散った。 

 

 握られていた聖剣が、地に落ちていく。


 それを、止めたのは。


 下から、急接近してきた。

 円ちゃん。


 拾い。握り。構える。


 そのままの勢いで、天人の脇腹に、聖剣が。


「これでも、くらう、のだっ!」


 突き刺さった。


「ナイスだよぉっ!」


 剣を串刺しにしたまま、上空へ。


 追うようにいくつもの鎖を、放つ。


 それはついに相手の身体に絡みついて、動きが止める。


 鎖を足場に、私も接近。


 軽いステップで、距離を詰める。


 安心して、近づける。

 なにがあっても、円ちゃんがフォローしてくれるって分かってるから。

 

 天人の両足を、腰を、首を、胸を。

 闇の鎖が、蜷局を巻いて。


私と同じく、鎖に足をついていた円ちゃんが、聖剣を両手で振り上げた。


 的は、完全に動きを封じられている。

 天人。


 振りかざした聖剣から光が一直線に伸びて。


「エクス・・・・・カリバァァー――、なのだっ」


叫んだ。

 いや、その聖剣は違うけど、まぁ叫びたくなる気もちょっと分かるよぉ。


私も、同様に、魔剣の斬撃を力いっぱい浴びせた。


 聖剣と、魔剣が同時に牙を剥いて。


 これまで以上の、衝撃が、周囲を巻き込んでいく。

 そこを基点に、強烈は爆風が全方位に吹き荒れた。


「さすがに、今ので倒したかなぁー」


 ていうか、倒せなかったらびっくりだよぉ。


 しかし、神器でも攻撃とはいえ。

 闇と光の同時攻撃は、お互いを相殺することなく。

 むしろシナジーを起こして、対消滅のようなとてつもない攻撃力を生んだね。

 

 まだ、視界は開けなかったけど。


 ドクンと、全身が跳ね上がった。


 私は、思うよりも早く。


 後方へ、大きく下がったの。


 心臓が破裂するかと思ったよ。

 

「よくも、よくも、やってくれたなぁああああああああああああああああ、おらぁああああああああああああああああああああああああああああ」


 嘘ー。もうびっくりだよぉ。


 今のでも、倒せないのかぁ。


 充分に離れた。

 見上げた先にあったのは。


 両腕、両足、他所々を失った、天人の姿。


全身、顔からなにから血だらけだったけど。


 その目は、その翼は、さらに輝きを増して。


「そっちが、二人ってなら、こっちも二人だぁああああ、今度は、天人最強を連れてきてやる、絶対許さねぇぇええええええええええええ、グチャグチャにしてやっからよぉおおおおおおおおお、覚えてろ、覚えてろ、お前らの顔、焼き付けたからなぁああああああああああ」


 そういい残すと、天人は、空へと一気に飛び上がり。

 あっという間に見えなくなったの。


「あらぁ、逃げられちゃった」


 あの捨て台詞。後々、面倒そうだねぇ。

 

 ま、いいか。目的の物は手に入ったの。


 最初のお目当て、聖斧と。


「あ、姉御、だ、大丈夫かっ」


 副産物で手に入った円ちゃんの聖剣。


「あ、うん、大丈夫だよぉ」


 あれ、今の円ちゃんは、普通だね。

 なにを考えてるのかもよく見えない。


 なんだったんだろ、さっきまでのあの深く広く、かけがいのない思いは。


 そして、あの声。どこかで聞いたような。聞いてないような。


 妹なんて、いざとなったらいつでも切り捨ててもいいと思ってたけど。


 今回の件で考え直そうと思ったの。

 もう少し、大事にしてみようかな。


 少なくとも、この子は、根拠のない繋がりを感じる。


 もしかしたら、こことは違う世界で。


 私達は、出会っていて。


 そこでの、関係はまるで本当の姉妹のような・・・・・・。


 うふふ、なんて、わけないか。


 私は、中身のない人形だもの。


 なにもかも空っぽなの。

 今回二人の意思疎通レベルは、160話位。

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