あのね、今度は弓なの。
光った。
そう思ったら、私の胸元に途轍もない衝撃が。
とっさに二本の魔剣で防いだ・・・・・・が。
後方へ吹っ飛ばされる。
「円ちゃん、撃ってきてるよっ! 注意してっ!」
「ういういっ!」
位置はバレている、か。
また光る。
今度は円ちゃんの方へ。
直撃っ!?
いや、属性を纏い、うまく弾いた。
間髪いれずに私のほうへ。
フラッシュ、そして着弾。
とんでもなく速い。
「こんなに遠いのにねぇ。こりゃ、奪いがいがあるよぉ」
ギリギリのところで矢を弾きながら。
私は、先を考え、少し笑みをこぼした。
私が欲しい聖弓があったのは、エルフの城。
ここは、どちらの陣地ではなかった。
元々廃退ぎみのエルフは、多種族との拘留を拒む。
ドワーフだけには好意的みたいだけど・・・・・・。
目的は一つだけではない。
フレムちゃんに以前教えてもらったの。
この世界で一番綺麗な耳は誰かと。
その問いに、フレムちゃんはこう答えた。
「耳? それなら、やっぱり女王かな、それともお姫様か・・・・・・どっちもかなり綺麗だからね」
丁度いいよぉ。
どっちも頂こう。
今から楽しみだよぉ。
木々に囲まれた城、そこから少し離れた場所で。
どう攻め込むか、考えていたら。
遠くでなにかが光った。
それがあちら側からの攻撃と気づいたのは。
もう矢が、胸にぶつかった瞬間の事。
射線上が消滅する。矢が通った木が綺麗に丸くくり抜かれていた。
「この距離で、こうも正確に当ててくるかぁ」
間隔が短すぎる。
これ以上、前に進めない。
受け止めるのがやっと。
「ならさぁぁあ、半分あげるよぉぉぉぉ」
属性解放、強化魔法はとっくにかけ終えてる。
「円ちゃん、属性全開、そして的になっててっ!」
言い終えて。
円ちゃんの返事を聞く前に。
私は一気に前へと飛び出す。
魔剣なら受けられるけど、それによりまた押し戻される。
それならいっそ。
闇の鎖を、全身から数十本と四方八方に撒き散らす。
地面に突き刺し、それをてこにさらへ前に。
ここで、光が見え。
迫る死の矢。
ほぼ同時に鎖を半分、自分の右半身に集める。
弾けた。
爆発したように空中が閃光に包まれる。
「まだまだだよぉ」
属性での防御は不十分。
私の腕は肩から先が吹っ飛んだ。
とっさに、握っていた魔剣を投げ捨てて。
体を反転、鞘にうまくナイフを戻す。
捻った反動で。
さらに前へと。
タッチダウンまではもうすぐ。
すると、今度は光が二つ。
やっぱり、一人じゃなかったね。
聖弓は光と同様に二つか。
二本の矢は、私に向かってくる。
あれをくらったら、今後こそ私の体は無くなっちゃうね。
花火みたいに、宙で花を咲かせる。
でも、こっちも一人じゃないんだなぁ。
「姉御の邪魔は、させ、ない、のだっ!」
一気に追いついてきた。
この子、速さでいえば、姉妹の中でも断トツだね。
ちゃんとこっちの意図を読み取ってくれる。
これは、いい拾い物をしたよぉ。
光属性、その光を背中から翼のように生やし。
私を覆うように、守った。
左右の羽根に矢が衝突。
円ちゃんは、その衝撃で宙を転がりながら後ろに飛ばされたけど。
私は、さらに。
さらに。
さらに、さらに、さらに。
前へ。
「見つけたぁっ!」
二本の鎖を棒高跳びのように使って、木々を飛び越えるように宙へ。
見下ろす形で。
城壁の上。
右と左に。
配置していた二人のエルフを確認。
エルフ達は、私に向かって弓を構えるも。
もう遅い。
なにもかも。
「君達の・・・・・・」
臓物は・・・・・・。
「どんなかなぁああ」
重力で自身を落としながら。
黒い鎖は、蜘蛛の巣を作るように。
私の体から、全方向へ、飛び出して行く。
何本も、何十本も、我先にと競うように。
「あああがぁあっ!」
「きゃあああああぁっ」
肉を食い破る。
綺麗な血。
私の鎖が。エルフ達の体に穴を開けていった。
「姉御っ!」
僅かなロスで、円ちゃんが私の後ろに飛んできた。
「なんとか倒せたねぇ」
白い肌を赤い血が染めていく。
痙攣しながら、死に向かっているエルフ達を見下ろす。
弓を拾い上げる。
「あ、姉御、腕、大丈夫か、あ、あれだ、無くなっちゃったのだっ」
ん、あぁ。そういやそうだったね。
「大丈夫だよぉ、ここだけ時間を遅くしたから。そしてここはエルフの城。適当に直せてもらおう」
時間魔法は固定できる。でも複数使用するとその振り幅が狭まる。
つまり、効果が薄まる。すでに、人形に使っているから、この場ではもう使えないね。
さっきまでは戦闘にも活用してたんだよね。
じゃなきゃ、あの矢の速さには対応できなかった。
「円ちゃん、もう一つの弓を持って。そっちは、私持てなさそう」
こっちはなんとなく馴染むから、もしかしたら魔弓なのかも。
そっちは、握ったらまた手の平を焼かれそうだよぉ。
さてと。
城を、見上げる。
「まずは、私を直せそうなエルフを拘束。その後は・・・・・・」
あぁ、早く会いたいね。
女王でも、王女でも。
どっちでも。
いや、どっちもかな。
綺麗だっていう耳を。
切れ目をいれて、慎重に、ゆっくり。
引き裂いて。
もらうことにするの。
突入から30分後。
「ほらっ! はやく、はやくっ、姉御を直すのだっ!」
円ちゃんが、捕らえたエルフにナイフを突き刺しながらお願いしてるの。
「アア、は、ワ、分かった、ノで。アアアア、あ、刺すのはああ。や、えめてっ」
温かい光が体を包み込む。
一人じゃきつそうだから、5人同時で治療してもらう。
全員の首には、私の闇の鎖が繋がれている。
どんどん、腕が再生されていく。
このレベルはかなり高度な魔法だね。
指先まで戻った。うねうねと動かし感触を確かめる。
「うん、すっかり元通りだね」
これでもっとやれるね。
「さぁ、円ちゃん、先に進もうか」
「ういういっ!」
一歩踏み出す。
その度に、鎖に力を込めて。
今、私を直してくれていたエルフの首が、一つずつ、ポンポン弾けては飛んだ。
城内潜入から一時間半。
床にはエルフ達の死体が転がっている。地面を覆い隠すほどに。
「本当なら、ゲートで逃げられるのに、最初から隠れすんでるからこうなるんだよ」
自分達以外を信じてないから、こういう時に助けを求められない。
玉間についた。
かなり大きな扉を左右に開くと。
炎が眼前に広がる。
焼き殺されるほどの熱量だったけど。
不意打ちは予想してたの、私の前にはすでに鎖の壁が幾重にも展開されていた。
「円ちゃん、取り巻きは皆殺しでぇ」
「ういうい」
後ろにいた、円ちゃんが瞬時に飛び込んでいった。
後は、もう虐殺。
悲鳴と血と、笑い声。
残ったのは、それはもう綺麗な女性が二人。
「あああ、シルビャ、逃げてっ!」
「お、お母様っ!?」
そのうちの一人が、なんか杖のようなもので殴りかかってきたの。
二本の魔剣を、下から振り上げる。
エルフ、多分、女王。その人の腕が左右どっちも吹き飛んだ。
「あがああぎゃぁあああああああああ」
「あ、うん。あれだよ。私が欲しいのは耳だけだからね」
後は、どんな状態でも問題ない。
今の独り言は、女王に言ったのでは無く、円ちゃんに向けて。
「姉御、こっちの女はどうする、殺していいか?」
腰が抜け、涙を流し、怯える少女。
そっちが王女だねぇ。
うん、そっちの耳もいいねぇ。
白く、エルフ特有のピンとたった耳。
「う~ん、これじゃ選べないよぉ」
なら、しょうがないね。
「どっちも持って帰ろう」
闇の鎖を二人の身体に巻き付ける。
「円ちゃんは、そっちの耳を切り取って、あ、綺麗にお願いだよぉ」
「ういうい、任せろっ」
宙に浮かせて、引き寄せる。
私の顔に、あちらの顔を近づけて。
息がかかりそうな程。
今からもらう、耳元に。
舌を這いずらせて、こう囁く。
「あ、ちゅぱ、ああいいね、貴方はここで死ぬけど、ぺろちゅぱ、この耳は永遠にして、あげる」
こうして、耳を四つ。弓二つ。
私達は手に入れることができたよ。
次は・・・・・・斧かな。
この調子でどんどんいくよぉ。
イカやってます。このエルフ達のエイム力が欲しい。




