あのね、先手必勝なの。
3。
2。
1。
飛び込む。
光の柱へと。
計算は完璧。座標を線上に張り巡らせ。
送り込む。
目の前に広がるは空。一面の青。
ここからは一切の無駄は省く。
すでに思い描いている線をなぞる。それだけ。
「オニチナちゃん、パンドラちゃん、私が先に降りるよぉ」
地上より遙か上空、空中を降下しながら叫ぶ。
「心得た」
「姉上、ご武運を」
短い言葉、そして二人は拳に力を込めた。
属性解放。二人の腕に炎が、雷が宿る。
それを。
無遠慮に、全力で。
私の背中に撃ち込んだ。
地面に引かれる、さらに、強く。
急降下。どんどん視界が狭く、それは目まぐるしいほどの速さで。
小さかったお城が、見る見る近づく。
すでに闇は纏った。両手には魔剣。
感じる、相手は同じ異端。
異常者。
社会から隔絶された、別の生き物。
黒い腕が私の体から、向け出すように、先駆ける。
一番高い塔、その石の屋根をぶち破る。
内部が曝され。
「うふふ、みっけ」
こちらを見上げたのは二つの人影。
その目は大きく見開いて。
驚く間もない、与えない。
二人、その片方に、私の第3、第4の、漆黒の触手が両腕に絡まる。
撫でるように纏わり付くも一瞬、圧力が一気に肉に食い込む。
落ちる私と、片手のナイフ。
地面に足をつけるのと同時に振り下ろす。
闇を纏った切っ先は、相手の体を真っ二つに切り離した。
血が、臓器が、骨が、肉が、綺麗に半分分かれていく。
「な・・・・・・っ」
相変わらずの驚愕の表情。もう一人の声が上がり。
本当は声を出す暇も与えたくなかったのだけど。
「ふむふむ、君が残ったかぁ。おめでとう」
先ほどと同様に、黒い触手が今度は残った方の足を掴む。
強制的に振り上げ宙づりに。
すぐに私は両手を振り。
相手の両腕が付け根から地面に落ちた。
ぼとりと、まるで椿の花のよう。
「あああぎゃっ・・・・・・むぐっっ!」
叫び声が上がる、が寸前、黒手が口を塞ぐ。
抵抗されると面倒、まともにぶつかったら多分ほぼ互角くらい。
「姉上」
「姉者」
僅かなラグで、妹達が別箇所の屋根をぶち破りこの場に足をついた。
「行って。皆殺しね」
「御意」
「お任せを」
風のように二人の姿が消えた。
もうすぐここは阿鼻叫喚。
あっちは妹達に任せるの。
私はまだやることが残ってる。
切り取られた両腕、それがついていた両腋から血がどんどん地面に流れ落ちている。
小さな滴が血だまりに変わるのもすぐ。
逆さに吊された女は、苦悶の表情ながら私を睨み付けている。なかなかの精神力だねぇ。
「さて、君には聞きたい事が山ほどあるんだよぉ」
残ったのはこっちだったかぁ。
二人の内、一人は生かそうと思っていたの。
ギザギザの歯、今は垂れ下がっているサイドテールで纏められた髪。
「まぁ、聞くのは拠点でじっくりやるよぉ。だから今は・・・・・・」
ナイフを握る。もう少し大人しくなる位にはやらないとね。
差し込む。柔らかい体に。
いくつも穴を開ける。
切り開く。柔肌を。
でも悲鳴は出せない。出るのは赤いものだけ。睨め付けていた目がどんどん朧気に。
「姉者っ」
「姉上っ」
妹達の声で我に返る。
どれだけ経ったろう、いつの間にか夢中になっていた。
あ、これ死んでないよね。
「城内の者は全て殲滅しました」
「一人の生き残りもいないかと」
この二人、少し甘い部分が残っているけど、今はその言葉を信じよう。
「城守は?」
私が訪ねると、二人が顔を見合わせ首を傾げた。
「・・・・・・そういえば、オニチナ、お主が討ったか?」
「いや、どうだろう。それらしき者がおったかどうか・・・・・・」
ふむ、これはいなかったんじゃなくて、倒したけど他の雑兵と区別がつかなかったって事かな。二人が強すぎたんだね。
「まぁいいよぉ。もうここで私達がやることはないし。帰るとするよ。あ、どっちかその落ちてる腕持って来てね」
ここからの仕事はフレムちゃんに任せて。
帰ったら二ラウンド目だよぉ。
しっかり口を割らせて、その後は・・・・・・。
うふふ、何をしようかな。
どんな事をしても大丈夫。
そのたび、エルダちゃんとエルシーちゃんが直してくれるから。
だから、口から通して、あっちから、あぁ、でも死んじゃうかな。
別の穴から、それより眼球をくり抜いてそっちから、うふふ、早く帰らなきゃ。
生き残ったのはこっちで
されど幸運だったのは。
それはこれから嫌でも分かる。




