あのね、乗り込むの。
私達の。
私の。
敵敵敵敵敵。
敵敵敵敵敵敵敵敵敵敵敵敵敵敵敵。
私に刃向かった。
私を傷つけた。
私を・・・・・・。
うふふ、私を目にして、私を感じて。
なお敵対する意志。
今までそんな子いなかったよぉ。
面と向かって、真っ正面から。
素敵。
私の描いた線を新たな線で遮る、堂々と。
しかし、五大陸で最大面積のサンニュールを落としたのか。
サンニョールの陸地は北から南まで相当長い。
そこから西のエリッチポラン大陸やグラドオル大陸を合わせたよりも。
エリッチポランとサンニョールを挟む海には鬼人の島がある。
それを踏まえると大軍を使った大規模な戦闘行為はできないから、ゲートのよる少数侵攻か。
「てことは、この短期間で統一するのは不可能。大方、主要国の頭を挿げ替えたってとこかな」
それなら結局私達のやることは変わらない。
でも、ここで力づくで奪っても、また奪い返されるだけ。
本来は、もう少し下準備してからじゃないと。
だけど。
それは、私が眠る前と同じ状況だった場合。
妹達がなにもせず、ただ目を覚まさない私を取り囲み泣いていただけならそうだろう。
「フレムちゃん、サンニュールにこちら側につきそうな国は?」
「最南端のテノール、西海岸のシフィア、トラボル。逆にやつらはサンニョール最大国のブルック、そして隣接するバージニ、ジンボンを抑えているね」
となると重要なのは今出てきた国々ではない。
「まだ手つかずの国を抑えよう。ブルックには奴らの配下のうち、誰がいるのかわかる?」
私が一番重要と考えているのは情報。
これがあればどんな展開も覆せる自信はある。
「姉さん、今が好機なのはわかるけど、纏めるのに時間は掛かるよ。三時間、私に頂戴」
「・・・・・・フレムちゃん、私の体はもう疼いて疼いてどうしようもないの。もう爆発しそう。だからね、二時間後に攻め込むよ。いいかな?」
フレムちゃんは、ふうと息を吐いて苦笑いしながら頷いた。
うふふ、妹達の能力は私が一番よく知ってるんだよぉ。
「エルダちゃん、エルシーちゃん、ここのゲートはすぐに使えるよね。今から繋げる位置を座標計算するから修正お願い。もしかして地上以外に出せる?」
「私達にはその座標という概念がないぞな、だからアオイ姉を通して繋げるしかないぞな」
「それができれば、空中だろうができるぞな」
前に導き出した転移魔法の方程式。無駄かと思ったけど、ここで生きてきたね。
勿論、繋げるのはブルックの上空だよ。
二時間後。
私は拠点のゲート前に立つ。
「姉さん、ブルックにはどうやらあっちの将軍、でいいのかな、それが二人いるみたい。これはエリッチポルンやユマニュロトからの情報からの想定でしかないけど。すでに放っておいた斥候からの情報によれば、ブルックに掲げてある旗は、蓮の文字、そして一回り小さい円、渚という文字みたい」
「・・・・・・・・・・・・」
蓮は蓮華ちゃんの事だよね。となるやはりあの四人の内、今あそこに二人いるのか。名前と顔は一致しないけど。それはまだ確定ではない。蓮華ちゃんが牽制のためにそうやってる可能性もある。
なんにせよ、双方、本格的にぶつかれば思考の読み合いになる。そうなると、二の足を踏む状態が続きそう。
最初の一手。それが今なんだけど、ここでいかにあちらに大ダメージを与えられるか。
二人いるなら逆に好都合だよぉ。
「お姉ちゃん、こ、これ・・・・・・」
カジーナちゃんがもじもじしながら、私にあるものを手渡した。
「お~、これあれだね。魔剣が一つ、テルフィング。うふふ、久しぶり」
ちゃんと私が最も扱いやすいナイフの形状に加工されている。
これで、手元のダ―インちゃんと合わせて二刀揃った。
カジーナちゃんを抱き寄せて頭を優しく撫でる。
「ちゃんとしたご褒美は後でたっぷりしてあげるね。ありがとう」
「・・・・・・えへへ」
ダーインちゃんが血のようなオーラを放っているのに対して、テルちゃんの刀身は蒼白く輝いている。う~ん、とっても綺麗。
「さて時間差で別行動を起こすよ。まず私とオニチナちゃん、パンドラちゃんでブルックを制圧。その後、そこから中立国のいくつかに小細工を始めるよ」
私を傷つけた二人、もうすぐ会えるね。
片方は見せしめに、片方は・・・・・・。
「じゃあ、行ってくるよ」
拠点のゲートに足を踏み入れる。
「あ、オニチナちゃん、パンドラちゃん、今のうちに言っとくね。城内の者は例外なく皆殺し。一人たりとも逃がしちゃ駄目。そして、例の二人には手出し無用だよぉ」
お礼は私自身がしたいからね。
属性解放した今の二人ならどんな城守がいようが瞬殺だろうし、他は任せていいよね。
私はただどうやって壊すかだけを考えよう。




