あのね、属性解放なの。
頭がくらくらするの。
目を覚ますと、周りには裸の妹達がまだ寝息を立てていた。
私達は第一目標であるノスタルユーリ大陸を制覇した。
昨晩はそのお祝いでかなり馬鹿騒ぎしたからね。
妹達も御褒美にいっぱい可愛がってあげたから、私以外はまだ起きることはできないよね。
「次は・・・・・・お隣のグラドオルかぁ・・・・・・」
すでに、布石はいくつか置いておいた。
あそこはカジーナちゃんの故郷だから、彼女をセンターに添えてライブという布教を行ってる。一定の支持は得てるし、後はカジーナちゃんのおじいちゃんでもある長老を取り込めばドワーフが多く住むグラドオルは落としたも同然だね。
ここまでは順調。
でも、一つ問題が起きた。
この前、私達の前に突如現れたイレギュラーな存在。
あの二人、見た感じ、私と同じ世界の住人だね。
想定外の動き、不可思議な力。他に仲間がいるかもしれないし、無視はできないね。
あのままやり合ってたら私達は負けてたと思う。
まだ力が足りないね。
もっと強くならなきゃ。
午後になって妹達は全員目を覚ました。
昼食ついでに相談してみたの。
「もぐもぐ・・・・・・みんな、私、もっと力が欲しいよ、もぐもぐ、なんかいい方法ないかな?」
理由は告げない、皆に余計な心配を植え付ける事はしないほうがいいよね。後でオニチナちゃんだけには話しておこう。いつでも、前線に立つのは、竜人と鬼人の二人だから。
「姉さんは、もぐもぐり・・・・・・魔法に、魔剣・・・・・・は持ってるから・・・・・・後はなんだろうね」
「くちゃくちゃ・・・・・・そんなら属性強化ぞな」
「そうぞな・・・・・・くちゃくちゃ」
お、エルフの二人がなにかいい案出したっぽい。
「属性強化ってなに?」
パンを囓るのをやめて、問いかけた。
「人にはそれぞれ生まれ持っての属性があるぞな」
「火とか水とかの四大元素に加えて雷とかもあるぞな」
へぇ、そんなのがあったのかぁ。
「で、それを強化するってどういう事?」
「属性が合ってれば、同じ魔法でも他より強力になるぞな。つまり、うちは水属性だから他属性のエルフより水魔法が得意ぞな」
「そうなんぞな、その元々得意な属性をさらに伸ばすとより強力になるぞな。姉様の属性はわからないけど、その力を魔法や武器に付加すればいいぞな」
ほほう、それはいい事を聞いたよ。そうなれば組み合わせ次第ではオリジナルの技なんてのもできそうだね。
「てことは、みんな、自分の属性分かってるんだ?」
私が聞くと妹達は全員頷いた。
「属性は大抵、種族で大まかに決まってます。竜人である私は火です。ですが、魔法の類いは使えないのであまり意味がありませんがね」
「私達ノームは風が多いわね。オニチナがいうように魔法は使えないから関係ないけど」
「わ、私達ドワーフは土が大半だね。火もたまにいるけど・・・・・・」
「エルフは万遍なくいるぞな、うちは水だけどエルダは火ぞな」
「そうぞな」
「我は、雷じゃな。鬼人も妖術の類いは使えないためどうでもいいがの」
魔法を使えないと属性もただの飾りなのか。勿体ないね。
「私は魔法を覚えてるから、それやった方が良さそうだねぇ」
これにも、妹達は同時に頷く。
「そうだね、姉さんは魔法を使えるんだもん、そうした方がいいよ。ごめんね、自分にあんまり関係ないから今までいうの忘れてたよ」
「いや、たしかに魔法系が一番恩恵が大きいけど、武器に属性を付けるのは大幅に攻撃力があがるぞな。それくらいなら元々魔法が使えない種族でもがんばればなんとかなるかもぞな」
「私達が教えるぞな。これが成功すれば本来戦力外のカジーナやフレムも一介の兵士程度には遅れをとらないと思うぞな」
流れがいい感じになってきたね。妹達が強くなればやれることも多くなってそれだけ統一も早くなるよ。
「まずは、姉上の属性を知らなきゃだな」
「属性屋がいるじゃない。たしかこの大陸にもいたよね。ちょっと聞いてこようよ」
「属性屋は属性を教えてくれる他に、潜在的に眠ってる力も引き出してくれるぞな」
「でも、その分、値段が法外ぞな」
「あれか、一人やるのに国の財政が傾きかねない程の金がかかるはずじゃな」
「それでも、大国の城守に施してる城主もいるよね。城守の力が国の防衛に直接関わってくるから金を惜しまないのは少しわかるよ」
ふ~ん、どうせなら私と妹全員にその属性強化ってのやりたいけどそこまでお金はないよね。 折角統一した大陸の運営もあるし、別大陸にも進軍しなきゃならないから無駄使いは出来ないよ。
「とりあえず、姉さんだけでもやった方がいいよ。直接戦闘をするのは姉さんとオニチナ、パンドラの三人だもんね。竜人と鬼人は元々破格の力があるんだから」
フレムちゃんがそう言うと他の妹達もうんうんと肯定した。
「う~ん、じゃあやってみようかなぁ。私ってなに属性だろ」
私がぼそりと呟くと、妹達が一斉に声を上げた。
「姉さんは光だと思うよっ!」
「姉者は光だな」
「姉上の属性は光でしょう」
「お、お姉ちゃんは光、だよね」
「姉様は光ぞな」
「そうぞな」
満場一致だった。
「え~、そうかなぁ」
種族も個性も違う妹達の意見が合うなんて珍しいね。
「姉さんは私達を照らす太陽のような人だよ」
「うむ、我らを導く光じゃ」
「光属性は中々居ませんが、姉上なら納得でしょう」
「いつも輝いてるぞな」
「そうぞな」
「お、お姉ちゃんといると暖かいから・・・・・・」
なんか照れちゃうなぁ。
「うふふ、そうなのかぁ~、じゃあ聞くまでもないかな」
たしかに、そう言われるとそんな気がするよ。
「ま、属性は決まったもんだけど、引き出すためにも属性屋には行ってみようよ」
あ、そうだね。この大陸にあるならそう遠くないだろうし。
「じゃあ、行ってみようっ!」
私が掛け声を出すと妹達も拳を振り上げた。
「闇ですね。それもこれ以上ないほどの混沌です・・・・・・」
私達は属性屋につき、さっそく属性を調べてもらったんだけど。
「え、や、闇? え、光じゃなくて?」
見て貰った早々にそう言われたの。
「ええ、もう半端ないほどの闇です。光のひの字もありません。闇よりもなお暗き者、夜よりもなお深き者です」
そんな、なんかの詠唱みたいな存在なの、私は。
「貴様っ! 姉上はどうみても光じゃろがっ!」
「そうよ、貴方の目、おかしいんじゃないのっ!」
「そうぞなっ! もう一度調べるぞなっ!」
フードをかぶった女性の属性屋はかぶりを振った。
「いや、もう何度見ても闇です。真っ黒です。もう全部平面に見えるほどの黒です」
うぐぅ、まさかヴェンタブラック並の黒さと言われるとは。
「ま、もうそこは議論の余地はないんですけど、どうします? 引き出しますか? これだけの属性なら途轍もない力を出せるでしょう」
そうだね、そもそも力を求めて来たんだから、このさい属性がなんだっていいかな。
「じゃ、じゃあお願いするよぉ」
これから属性強化した城守とかとも闘うかもしれないから、こっちもパワーアップだよ。
「じゃあ、一億マデカになります」
属性屋がそう告げると妹達の顔が青ざめた。
「え、一億・・・・・・。そんなのお城建っちゃうじゃないの」
「ライブ興業の三千回分ぞな・・・・・・」
「ぼったくりだっ!」
妹達が意を唱えると、属性屋はやれやれを両手を開いた。
「なにをおっしゃいます。それだけの価値はありますよ。元素を自由に扱えるようになるんです。水ならもう喉が渇くことはないですし、火ならいつでも暖かいですよ」
う~ん、この属性屋さんはセールスがあまり上手じゃないね。あまり価値があるようには思えない。
「ちょっと、失礼するよ」
私は属性屋のフードを取り払った。
「きゃ、なにをなさりますか」
曝された顔をまじまじ見る。
ふむ、なかなかいいね。妹達には負けるけど整った顔してるよ。年は二十代後半てとこかな。でも、大丈夫だよ、私の範囲は広いから、もっと上でも全然いけるの。
「じゃあ、私と妹達全員の属性力を引き出してもらおうかな」
これには私以外の全員が目を見開かした。
「ちょっ、姉さん、七億だよ。そんなお金大陸中から集めても足りるかどうか」
「そ、それだと、下手すれば神器も買えちゃうよ・・・・・・」
私は妹達の心配を他所に属性屋に近づいていく。
「そ、そうですよ。貴方達にそんなお金がとてもあるとは・・・・・・」
私は属性屋さんの肩に手を回した。
「まぁ、まぁ、奥でゆっくり話そうか」
「え、え、え?」
背中を押して奥の部屋に連れて行く。
「みんな、ちょっと待ってて、すぐ終わるから」
妹達はすぐにその意味を理解し、頬を褒めるもの、むっとする者、眼鏡を光らせる者と様々な反応を見せた。
「また姉さんの荒技発動だよ」
「ま、これで七億チャラになるなら安いもんじゃな」
妹達は呆れてたけど、お金はないし属性強化はしたいからこうするしかないよね。
一時間後。私が先に部屋から出て、属性屋さんがよろめきながら後に続いた。
「みんなぁ、ただでやってくれるってっ!」
七億分たっぷり可愛がってあげたからいいよね。
「これで葵シスターズもさらに力がつくねっ」
うふふ、これで強くなったら、この前の二人にはたっぷりお返してやろう。
私の前に姿をさらした事をいっぱい後悔させて、あげる。




