あのね、飲んでも飲まれるな、なの。
どっちも見てきたの。そしてそれぞれ一週間ずつ観察してみた。
「うん、ありゃ、無理だ」
盗賊団、総人数332人。頭が竜人の女性、他は種族混合。他はどうにでもなるけど、やっぱりあの竜人は別格だね。まだ戦闘自体は拝めてないけど気配でわかる。こっちも視力だけ強化してかなり遠くから見てたけど、それでも気が抜けなかった。見つかったら一気に距離を詰められ首をはねられちゃうかも。
海賊団、巨大船が一隻、それを囲むように大小十隻の船が浮かんでいた。総人数は452人、頭が鬼人の女。こっちもその鬼人船長だけレベルが違う。幸い、海賊行為を目撃できた。ほとんどは無条件に降伏してたけど、抵抗した船があった。その船、蟻がたかるように乗船され、皆殺しの末に、鬼人船長の槍で船ごと真っ二つにされてたよ。
土台が違うね。人間の私がいくら強化魔法を使っても乗算される基本スペックがまるで異なる。彼女達は生まれながらに強大な力を持ってる。鬼人と竜人は他の種族と比べてこの世界が占める人口の割合が極端に少ない。天人、魔人はさらに少ないみたいだけど、もっと規格外って事かな。
でも、なおさら妹に欲しくなっちゃった。
竜人の方は、見た目は普通の人間に、竜の翼と尻尾を付けた感じ。二本の角が耳の上辺りから後ろに向かって生えている。鍛えられた肉体はすごく美しい。後、胸を大きかったの。
鬼人の方は、額から一本の角。髪が丁度半分ずつ黒と白で別れてた。体は小柄だったけど威圧感が半端ない。無理矢理力を押し込まれたように詰まってるような、とにかく中身をもっと知りたくなった。後、胸が真っ平らだったの。
う~ん、早く、あの子達とまぐわいたい。
「ただいま~」
今日の偵察を終え、拠点に戻ってきた。
「お帰り、姉さん。どうだった?」
迎えてくれたのはノームのフレムちゃん。他の妹達は仕事してるみたい。
「う~ん、初めはなんとかなるかなって思ったけど、見れば見るほどやばいね、あの種族。どうしようかなぁ」
いつもの、無理矢理連れ去るという、まぁまぁ作戦や、いいからいいから作戦は使えないね。かといって真っ正面からはいけないし。
「ちょっと考えるね、フレムちゃんも一緒に考えて欲しいな」
「うん、私達が頭を使えばなにか方法が思いつくよ」
この後、私とフレムちゃんはなにか案がないか、話合った。
「同士討ちさせるものいいけど、どっちも妹をして迎えるなら駄目だね」
「遺恨が残っちゃうもんね、どちらも仲間意識が強いからお互い仲間の仇になったら仲良くなんて出来ないよ」
「海賊の方は、援助してる国が何個かあるね。投資するかわりに略奪物の何割かを・・・・・・」
「そこを先に押さえて・・・・・・」
「山賊は周辺の被害にあった町や村から義勇軍を・・・・・・」
「烏合の集じゃ、あの集団には太刀打ちできないよ・・・・・・」
「どちらか先、妹にできれば・・・・・・」
「そもそも、二つの活動範囲が遠すぎるから・・・・・・」
数時間、話合った結果。
「案1は三年と六ヶ月、案2は二年三ヶ月はかかるね」
「むぅ、それじゃ、駄目だよぉ」
外堀を埋めていく考えは確実だけど時間がかかりすぎる。
「うーん、じゃあ最終手段しかないね」
フレムちゃんは眼鏡をくいっとさせた。
「ほう? なにか思いついたの?」
私が聞くと、咳払いを一つした後、口を開いた。
「寝技に持ち込むしかないよ」
「寝技?」
聞き返すと、表情自体は真面目だけど、いつの間にか顔を赤くしたフレムちゃんが頷く。
「姉さんの寝技は最強だよ。それは例え竜人や鬼人でも抗えないと思う」
「そこまでなのかぁ」
「そこまでだよっ」
フレムちゃんは言うなり、私の隣に近づいてきてたの。
「そこで、相談なんだけど、ちょっと竜人や鬼人を想定して実戦練習をしてみようよ」
「実戦練習ねぇ、フレムちゃんなんかわかるの?」
「うん、やつらの体の構造は頭に入ってるよ。だからね、今日は一緒に寝よう」
鼻息が荒い、それで眼鏡が曇りだした。
「ね? ね? 姉さん、良いでしょ? ね? ねってば、ね?」
「わ、わかったよぅ。じゃあ、お願いするよ」
「ホント?!」
私が同意すると、フレムちゃん、ガッツポーズを高速で何回もしてたよ。
「しゃっ! しゃしゃしゃっ! しゃりらぁぁっ!」
なんか、いつもの冷静沈着なフレムちゃんじゃないみたい。
こんなキャラだったかなぁ。
翌日、ある港町に来たの。そこは海賊達がたまに上陸する場所。
昼間の酒場で私は飲み物を啜る。
フレムちゃんの言われるがままに練習したけど、そもそもそれができる状況に持ち込まなくちゃならない。それができないから考えてるのに。
当の本人は、朝になっても体をピクピク痙攣させて起きそうもなかったの。
「う~ん、もうめんどくさいから力づくで妹にしちゃおうかなぁ」
今は勝てないけど、武器の加工が終わればなんとかなるかもしれない。
一本はそろそろ完成間近らしいけど。
飲んでいたコップが空になった。
それにしてもここガラガラだね。昼間とはいえお客さんがまるでいない。
海賊達が立ち寄る町だもんね、うかうか飲んでもいられないか。
そろそろ今日は帰ろうかな、なんて思ってた矢先だった。
「おぉぉらぁ、酒だ、酒だっ!」
「酒持ってこーーーいっ!」
入り口から怒鳴り声が聞こえると、その後、海賊と思われる荒くれ者達がぞろぞろとここに入ってきた。
1、2、3・・・・・・10・・・・・・28人。てことは本船じゃない、取り巻きの一つかな。
「おおおっ! 女だっ! おいっ! 女がいるぞっ!」
「うぉぉぉぉっ! 人間か!? まぁ女なら何だっていいがっ!」
私を見つけた海賊達は取り囲むように近くに寄ってきた。
「おい、嬢ちゃん、見ねえ顔だな、旅人か?」
ちゃっかり私の両隣に座り出した。
「うん、そうだよ」
観察してましたとは言えないよね。しかし、困ったなぁ、これ。
「そうか、そうか、女の一人旅は大変だろう、奢ってやるから嬢ちゃんも飲めや」
「へへへ、いくら飲んでもいいからよぉ」
男達がニヤニヤと私の体を視線でなめ回す。あ~う~、気もてぃ悪い。いつもならあんまり調子にのられると、殺しちゃうんだけど、鬼人ちゃんの手下に手を出すと後々面倒になるよね。
この手の人達って妙な連帯感があるから困るの。
「ほらよっ! 一気にいけや、姉ちゃん」
私の前にお酒らしきものが置かれる。私は少し戸惑う。毒や薬でも入れられてるかもしれないし、それじゃなくても、私は未成年だからお酒を飲んだことはないの。
「ちょっと、おじさん、一口飲んでみて」
「あん? あぁ、疑ってんのか? 別になんも入ってねぇよ。ただちょっと強いだけだ、どれ証明してやるか」
そう言うと、海賊おじさんは一口飲んで見せた。おじさんに特に異常は見られない。何も入ってないのは本当みたいだね。
「・・・・・・じゃあ、頂くよ」
ちょっとだけ興味があったの。この世界なら私の所の法律なんて関係ないよね。
大人の人はみんな美味しそうに飲んでたから、さぞ、良いものなはず。
「ごくりん」
一気に喉に流し込んだ。葡萄の味がする。ワインみたいなものかな。
喉が焼けるように熱い。体もなんか変な感じ。まるで宙に浮いてるような。
「うふふふ、美味しいねっ!」
自然に身体を揺らしちゃう、ふわふわするの。
「そうだろう、そうだろう、へへ、もっと飲んでいいんだぜ」
「そうそう、潰れたらちゃんと俺達が介抱してやるからよぉ」
おじさん達がグニャグニャに見える、視界がぼやける。なんだか、ここがここじゃないみたい。
あぁ、気分がいいの。もうどうでも良くなっちゃった。
私は二杯目のコップも即座に空にした。愉快な気持ち、足をばたつかせる、空を泳ぐように、雲を掻き出すように。
「くく、いい飲みっぷりじゃねぇの。・・・・・・それにしても嬢ちゃん、いい足してるねぇ」
隣のおじさんが私のスカートとニーソの間に手を這わせ始めた。ニーソの中に指を入れて太ももの感触を楽しんでる。
「うふふふ・・・・・・おじさ~ん」
今の私はもう笑顔しか作れない。ニコニコしながらおじさんの顔を見ると、瞬時にナイフを取り出しその手を切り裂いていた。手首から綺麗に切断され、地面に落ちる。
「・・・・・・ん?」
おじさんも、手が無くなったというのに何が起きたかわかってないみたい。おかしいねっ。
「ん、ん、ん・・・・・・・・・・・・うんぎゃぁあぁぁ!」
ダラダラと流れる血を見て、やっと気づいたみたい。おじさんは大声を上げてのたうちまわった。
「や、やろうっ!」
あ、違うおじさんが野郎っていった。私は女の子なのにね、それが面白くて面白くて、私は笑いを堪える事ができなかったの。
「ふふふ、え~いっ!」
そんな間違いをするおじさんにはお仕置きなの、私はナイフを横凪に振り切った。
別のおじさんの大きく出てたお腹に切り込みが入る。
「ふわぁぁぁぁぁあぁぁ」
悲鳴を上げると同時におじさんのお腹から臓物がこんにちはって出てきたよ。必死にお腹に戻そうとしてる、すごく慌ててる、あぁ、楽しいね、面白いね。
「あははは、あのね、私のね、身体に触っていいのは、妹達だけなのだよぉ」
近くにいた男のこめかみにナイフを突き刺す、そしたら目玉が少し飛び出したの。驚いたのかな、きっとそうだよね。変な顔、うふふ。
呼吸が苦しい、心臓が高鳴っていく。血が沸騰する。
「おじさん達、海賊だからー、血の海を泳いでもらおうー」
今決めた、そう私が決めたの、反論は認めないのぉ。
よ~い、切り刻もうっと。
私はフラフラながらも高速で動き出すと、男達の身体を分解していく。
両手のナイフで両目をくり抜く。髪を掴むと喉をかっ切る。そしたらどんどんみんな地面を泳ぎ出すの、赤くなった床でばたばたしてて溺れてるみたい。
いつの間にか立ってる人がいなくなっちゃった。お店の人も一緒に赤い海の中にいる。
よ~し、私も泳いじゃうぞぉ。
背中から床に倒れ込む、鮮血の飛沫が上がった。
頭がぐらぐらする。なんだか、眠くなっちゃった。少し、お休みします。
私が瞼を閉じると、薄れていく意識の中で声が聞こえた。
「お、お前らぁっ! なんだこれはっ!? 一体なにが起こったっ!?」
その主は女の人だった。うふふ、可愛い声だね。これは良い夢見られそう、それじゃあ、おやすみなさい。




