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奴隷の3人

お待たせしました。1万5千字超えです。


 川で作業をするイリス達と離れてリタは鳥を取る為に川の反対側、未踏破領域と呼ばれる森に入っていく。

 未踏破領域はダンジョンと、ダンジョンから出てきた支配者を中心に多数のモンスターが生息している。ゲーム的に言えばフィールドダンジョンと領域支配者を倒し、ダンジョンの最下層を攻略すれば強力な武具などを得られる。もちろん、領域が解放されればその土地が手に入る上に、その土地からはダンジョンが溜め込んだ力によって出来た良質な鉱石が手に入る。それもミスリルやオリハルコンといった魔法鉱石だ。もっとも、これらは現在ではあまり知られて居らず、プレイヤー達が攻略して発覚した事だ。下手に刺激すると軍団で襲いかかって来るという理由もあり、あまり自ら危険な場所には出向かない。無論、エーベルヴァイン家の者達が召喚獣達で蹂躙する事も可能だが、面倒がって誰もしない。何より、解放した後の処理が大変なのだ。土地も広く、開発する所はまだまだあるというのが理由の一つである。

 そんな森の中に入ってきたリタの目的は一つだ。


(イリスは鳥を取って来やがれと言ってやがったから、どうせなら……美味しい食材を取ってきてやるです。モンスターの方が旨えでやがりますし)


 森の中を溶け込むように気配を消し、鼻と耳をヒクヒクさせながら嗅覚と聴覚を利用して周りを探りながら移動していく。


(うじゃうじゃいやがるです)


 イリスが見つけたのは小さな鬼達。俗に言うゴブリンという種族なのだが、この世界ではゴブリンを舐めてはいけない。何故なら彼らは一体で大人一人を軽く倒せるのだ。といっても、訓練された大人ならば一人で油断しなければ倒せるし、軍人クラスになれば比較的簡単に倒せる。相手が一体だけならという条件でだ。だが、ゴブリンは基本的に分隊単位で行動し、部隊内ではもちろんの事、周りの分隊と連携し、小隊を組織して戦術的行動を起なって来る為、驚異的な繁殖力と相まってかなり危険な存在だ。モンスターランクとしては単体ではEランク扱いだが、小隊ではCランクとなるほどだ。そして、一つ思い出して欲しいんがここエーベルヴァイン領がどういう位置にあるかだ。そう、位置関係としてはゲームの終盤でこれる場所である。つまるところ、ゴブリンはゴブリンでも他のところに出るゴブリン達よりも遥かに強い。


(実験するには丁度いいでやがりますし、確保してやれば褒めてくれやがるです)


 イリスと繋がっているリタは本能的にイリスが欲しがっている物を理解している。理解できる理由はリタのように召喚獣全てが話せればいいが、大抵の召喚獣は話せず意思疎通すら難しい。これらの解決方法として召喚者の意思を召喚獣が汲み取る為に必要な術式は召喚魔法陣に既に組み入れられている。


(楽しい狩りの時間でやがります!)


 リタは森の空中を木を蹴りながら高速で移動し、上空から加速して一気にゴブリン5体に襲いかかる。獣人の強力な脚力と重力による加速を得た飛び蹴りは相手のゴブリンの頭部に命中――するかと思われたが、こちらに気づいた弓を持ったゴブリンが弓を捨てて両手をクロスして攻撃を受け止める。攻撃の威力は高く、吹き飛ばすことには成功した。


(ち、やっぱり力が落ちてやがるです)


 封印され力を封じられたリタは基礎能力こそ高いが、レベルは1に戻っているのだから仕方ない。川の中で雑魚モンスターを狩ったが、雑魚ではEXクラスのリタはレベルも上がらないので、レベル1のままだ。そんな事を思いながらも即座に回転しながら黒い狐火を纏わせた尻尾を振るって他のゴブリン達に攻撃を仕掛ける。


「ぎぎっ!!」


 ゴブリン達の一部は瞬時に飛び退き、鉄製の盾を持っていたゴブリンが受け止める。盾を持つゴブリンが尻尾の一撃をなんとか堪えた。


「燃えやがれです!」

「ぎっ!?」


 尻尾に纏っていた黒い狐火が盾へと引火する。ゴブリンは危険を察知して瞬時に盾を捨てて燃え移るのを防ぐ。黒い狐火はそのまま鉄を溶かしていく。リタの黒い狐火は引火した任意の対象を燃やし尽くすまで消える事は無い危険なものだ。もし、ゴブリンが盾を捨てるのが少しでも遅ければ全身火達磨になっていた。


(っと、森は燃やしたらまじぃーでやがります)


 森には燃え移らないようにしたお陰で、盾の周りが少し焼けた程度で済んだ。


「ぎぎっ!!」


 盾を持っていたゴブリンの1体が指令を出すと、残りの無事だった2体が2本の短剣を引き抜いて左右からリタに襲いかかる。子供の小さな身体だというのに大人以上の怪力を容易く出すゴブリンの肉体より放たれる短剣の斬撃は容赦なく、リタの首と足を狙ってくる。首による即死を最優先に狙っているのだ。それが無理でも足さえ傷つければあとはゆっくりと倒せるとふんでの事だ。本来、母体として女のリタを確保しようとするゴブリンだが、彼らも相手が格上の種族だと本能的に理解できている為、殺す事を優先している。そう、弱くなっているリタは彼らにとって捕まえても殺してもメリットのある美味しい極上の獲物なのだ。


「ちっ」


 4本の短剣に対してリタはバックステップで背後に逃れながら尻尾でなぎ払おうとする。だが、そこに起き上がって来たゴブリンの一体が弓を拾って魔法を纏わせた矢を放ってくる。矢は尻尾の黒い狐火によって焼き尽くされるが、リタの体勢を崩すには充分だった。リタはそのまま後ろに倒れるようにして首を狙った短剣を回避する。足の方はどうにか片足の回避に成功し、地面に着地する。


「ふーふー」

「ぎぎっ……」


 血走った瞳のリタに勝ち誇るゴブリン達。それもその筈で、短剣には毒が塗られている。その為、リタが選んだのは――逃走。瞬時に飛び退り、そのまま一目散に片足と両手を使って側転やバク転の要領で逃げていく。


「ぎっ!? ぎぎィー!!」


 いきなりの逃走に驚いたゴブリン達だったが、直ぐに1体が矢を放ち、残りが追いかけていく。追いかけっこはしばらく続き、ゴブリンは他の分隊も呼び寄せて20体もの数になる。


(やべーです、やべーです)


 魔物の領域である森から木を駆け上り、枝蹴って上空数メートルへと跳躍するリタ。それを追ってきたゴブリン達が川原へと出てくる。直ぐに魔法や弓を準備するゴブリン達はそこで自分達が終われる者と追う者が入れ替わった事に気づいた。


「ふふふふ、てめーら、もうゆるさねーでやがります。ぶっち殺してやるから覚悟しやがれです」


 空へと飛び出たリタの広げた両手には黒い業火で形成された巨大な球体が出来ていた。捕獲を止めたリタはまとめて狩る事にして、広い場所に誘導したのだ。


「舞いやがれです、炎獄」


 巨大な球体から無数の小さな子狐の姿をした黒い炎が森に逃げ込もうとするゴブリン達に容赦なく襲いかかる。子狐達に噛み付かれたゴブリンは火達磨にされたり、腕を消し飛ばされたりされて即座に無力化されていく。中には味方を盾にしてどうにか逃れたゴブリンも居たが、残念ながらリタも毒が回っており、追撃どころではないし、炎獄を放つのもかなり無茶をしている。具体的に言うとイリスの魔力をほぼ根こそぎ奪うという暴挙を行なっての発動だ。


「おーい、大丈夫?」


 イリスが川原に着地したリタの下に川を泳いでやって来た。


「油断したでやがりますが、無事でやがりますよ」

「そっか。毒状態だね。直ぐに治すから、リタはゴブリンの手足を焼いた奴の炎を消してね」

「了解でやがります」


 普通なら失血死やショック死するような大怪我を負っているゴブリン達は、強靭な肉体も合わさり、焼かれた事による止血が出来ていたので微かな数が生き残っていた。生き残っていたゴブリン達の黒い狐火を消したリタはイリスが傷口に口付けてペロペロと舐めた唾液を入れていくのに身を任せる。


「んっ、んんっ、ひゃうっ!?」


 ピクピクと震えるリタの傷口に浄化と回復の魔法を混ぜた唾液を流し込み、リタの治療を行っていくイリス。魔力量がほぼ枯渇状態である為にゆっくりと治療をするしかない。


(リタの反応、可愛いね! ついでだしモフモフしちゃえ!)


 イリスは悶えるリタの反応を楽しみつつ治療を行っていく。後にはぐったりとしたリタとツヤツヤしたイリスが居た。


「さーて、ゴブリンちゃんを運ぼうか」

「好きにしやがれです」

「うん。ライヒアルト、アルフォンス、手伝って!」


 2人を呼び寄せて生き残ったゴブリンやその装備を回収させる。鳥こそ手に入らなかったが、イリスにとっては充分の収穫だったのでそのまま街へと帰って行った。









 自宅に戻ったイリス達を門の前で待っていた執事のグスタフが迎えてくれた。彼はイリス達が帰ってくるのを仕事をしながら待っていたのだ。


「お帰りなさいませ」

「ただいま」

「帰って来てやったです」

「リタ……まあ、いいか。グスタフ、悪いけど樽を食堂の人達を呼んで運んでもらって。中身は魚とかだから。魚は好きに調理して皆に振舞うように」

「畏まりました」


 イリスの指示を聞いて直ぐに食堂の方へと向かっていくグスタフ。イリスは次にリタを見る。リタはゴブリン達との戦闘によって非常に汚れている。


「洗わないとね」

「うっ……」

「とりあえずお風呂だね」

「あうあう」


 座り込んでガタガタと震えるリタの頭を撫でながら指示を出していく。


「アルフォンスは私の部屋の近くにある部屋をこの子達用に使う準備をして」

「はい」

「あっ、君達は女の子? 男の子?」


 多少はマシになったとはいえ、どちらもボロボロの服で二次性徴期を迎える前の子供なのでほぼわからないのだ。髪の色こそ違うが、短いのだ。


「俺は男、です」

「……私達は姉妹です」

「こく」

「似ているね。双子?」

「はい。私はどうなってもいいのでレナだけは助けてください……」

「お姉ちゃん……」


 くすんだ金髪の子が男の子で、残りの紫の髪と黄緑の髪の子が双子の女の子だ。レナと呼ばれた女の子を抱きしめて懇願する女の子。それに対してイリスは――


「駄目だね。2人とも一緒に私のものだよ。双子なんてレアなんだから一緒にしないとね」

「「っ!?」」


 ――拒否した。この世界では双子は忌み子や悪魔の子として嫌われている。性別が男ならまず殺され、女なら玩具として生かされる場合がある。この子達も成長すれば献上されるか、売られるかといったどちらにしてもロクな事が待っていない。


「さて、名前を聞こうか。私はイリス・フォン・エーベルヴァイン」

「グレン」

「グレン君ね。双子の姉の方は?」

「……ニナです……」

「妹ちゃんは?」

「……レナ……」


 恐怖に震えながら答える双子の姉妹。男の子の方は諦めているようだ。


「アルフォンス、部屋を一つ用意して。この2人は私の部屋で寝かせるから」

「「っ!?」」


 イリスの言葉に更に震える2人。幼い年齢でも性知識は奉仕する為に教えられている。貴族の男が奴隷にした女を寝室に連れ込むとはそういう事だとわかったのだ。


「よろしいのですか?」

「うん。今の私じゃ部屋を二つも使う訳にはいかない。きっと文句が出るしね。だったら、男の子より女の子と一緒の部屋の方が私としてもいいし」

(リタが居るし、ベッドも大きいのが一つしかない。大切なリタを他の男と一緒に寝かせられないしね)

「わかりました。直ぐに手配します」

「お願い。ライヒアルトはゴブリンを死なないように閉じ込めておいて。それが終わったら、ギュンターの所に行って手伝って」

「ういっす」

「さて、お風呂に行こうかな」

「残念ながらお風呂は使えません」


 イリスが風呂に行こうとすると、数人を引き連れて戻ってきたグスタフが止めて来た。


「なんで?」

「イリス様専用のお風呂は継承権から外れた為に使用禁止になりました」


 この家では個人個人に高価な専用の風呂場が与えられている。それも常に専属の者達が沸かした状態で綺麗に保っている。


「ああ、そうか……なら仕方ないね」

「そうそう、仕方ねーのです。いや、とても残念でやがりますね」

「よし、リタも残念がってるなら作るか」

「っ!? あうあうあうぅぅぅっ」

(ああ、リタ可愛いな。止めてあげるべきなんだろうけど、清潔にしないといけなし絶対作って入れるんだけど)


 S.っけを垣間見せながらイリスはリタを可愛がる。そんな所にグスタフが意見を告げてきた。


「イリス様、コルネリア様にお願いしたらどうですか?」

「姉様に?」

「はい。イリス様を大変可愛がっておられたコルネリア様なら或いは……」

「そっか、そうだね。よし、ちょっと姉様の所に行ってこよう。それまでこの子達を好きに使っていいから」

「わかりました」

「リタも手伝ってあげてね」

「ぐっ……やってやるです」


 フラフラと立ち上がったリタは荷物運びに加わっていく。それを見たイリスは姉であるコルネリアの下へと向かった。




 コルネリアは現在、召喚を行っていた。まあ、それもうまくいっていないようで召喚しては送還を繰り返している。


「姉様」

「イリス、どうしたの?」

「お風呂を貸して欲しいんだけど、いいかな?」

「ええ、構わないけど……ああ、イリスはへ……こほん。特殊な召喚の儀式に詳しかったわよね?」

「特殊な召喚? ああ、あれね」


 コルネリアの言葉に直ぐにリタを召喚した時の事を思い出したイリス。そこからイリスはコルネリアの求めている事を理解した。


「つまり、姉様にあった召喚獣が欲しいんだね」

「ええ、そうよ。いまいちピンと来ないのよね。ジェラルドお兄様のようなファフニールとまでいかないまでも、強力な召喚獣が欲しいのよね」

「そっか……」

(姉様はゲームでは狼系統を使っていたんだよね。どれも中堅クラスだったけど、連携攻撃とか上手くて大量の狼を使役していてそれなりに強かった。あくまでも、中堅クラスだったから直ぐに広範囲魔法とかで駆逐されたんだけど)


 コルネリアは狼系統に対して強い適性を持っていたが、高級触媒を使っても余程突出した適性がなければ上位の存在は召喚されない。もっとも、召喚さえしてしまえば相性も良く、従える力は強い。反面、召喚する力は弱い。つまり、コルネリアの適性は言ってしまえば中途半端なのだ。召喚できないくせにいざ召喚できるよ使役してしまうというアンバランス。これを自力でどうにかするというのなら、それこそ上位存在の狼系統が居る危険極まりない地にまで出向かなくてはいけない。そんな所に出向いたら狼系統以外のモンスターの餌になるのがわかりきっている為、ゲームではコルネリアは質より量を取っていた。


(姉様は私よりだし、力をつけてくれる事には問題ない。兄様と戦う時の戦力になってくれるかも知れないし……水属性以外の召喚獣を召喚する手伝いをしてもらうのもお願いしやすくなる。うん、やってあげよう)


「わかった。でも、とっても凄いのを召喚するからそれなり準備もしないといけない。触媒が特殊すぎるから」

「そうなの? 触媒ならお父様にお願いすればどうにかなると思う」

「なら、大丈夫かな。えっと、今から言うのを材料にしてドワーフに作って貰いたいんだ」

「ドワーフね。確かこないだ行った所で奴隷として売りに出されて居たわね」

「腕がよくないと駄目だよ」

「それこそドワーフなら問題ないわ。憑依召喚で技術の高い者を憑依させればいいのだから」

「ごもっとも」


 憑依召喚はその名の通り、召喚した召喚獣を実体化させるのではなく相性の良い寄り代に取り付かせて力を引き出す技術だ。引き出す力は術者の力量次第で自由に設定できる為、非常に使いやすい。使いやすい反面、危険でもある。召喚獣を意識ある者に憑依させた場合、その意識を消して召喚獣がそのまま乗っ取ってしまう場合があるからだ。もちろん、契約した召喚獣を召喚師本人に憑依させる場合は契約によって相性も良くなっているし、主人と従僕としての契約により主人の身体を乗っ取る事はできないので問題ない。


「それで何がいるのかしら?」

「猫の足音、女の顎髭、山の根元、熊の神経か熊の腱、魚の吐息、鳥の唾液だね」

「そんな不思議な材料で何を作るのかしら?」

「魔法の紐だよ。これが召喚の触媒であり、契約する為に必須なアイテムなんだよね。作るタイミングも決まっているし、作成には大量の魔力が要る」

「わかったわ。あの駄狐を召喚したイリスを信じて用意させましょう。お風呂は好きに使っていいわ。ただし、綺麗に掃除するのよ」

「うん、わかった。ドワーフと材料が買えたら教えて」

「ええ、直ぐに用意するわ。でも、作るタイミングは何時なのかしら?」

「金環日食の日だから……何時だろ?」


 小首をかしげるイリス。そんなの滅多にこない。


「その金環日食とは何?」

「太陽が月に隠れて円形に見える時だよ」

「それなら、来月になるわね」

「時間少ないね!」

「……急いで準備するわ。お金に糸目をかけないでいきましょう」

「だね」

「じゃあ、私はお父様にお願いしてくるから」

「いってらっしゃい」


 コルネリアはメイドに風呂の事を伝えた後、直ぐに早歩きで去っていった。イリスはメイドを伴ってリタや奴隷の3人の子供を迎えに行く。絶望したような表情で、尻尾を丸めているリタと震えている女の子達。男の子は普通について来る。


「そういえばさ、グレンやレナ達は何歳?」

「10だけど」

「私達は5歳です」

「グレンはアウトだね」

(リタとニナ、レナの裸を見せるの駄目だね)

「何が、ですか?」

「いや、先にグレンを洗わないとね」


 脱衣所に付いたイリスはさっさと服を脱ぐ。


「グレンも脱いでついてきて。女の子達は……悪いけどこの子達に会う服を用意して」

「畏まりました」


 着替えの服をメイドにお願いする。メイドも主人であるコルネリアから命令があるので直ぐに頷いてくれる。


「それじゃあ、グレンをさっさと洗ってくるからちょっと待っててね」

「うぅ……」

「「はい」」


 グレンを連れて入ったイリスはまず、桶にお湯を入れてグレンの頭にぶっかけて汚れを落とす。それから直ぐに桶にお湯を汲み直して今度は召喚魔法を使う。


「おいで、アクアエレメンタル」


 イリスが召喚したの水の下位精霊であるアクアエレメンタル。姿は不定形であり、水(湯)の塊が浮いているようにしか見えない。


「彼を殺さないように身体の隅々まで綺麗にして」

「ちょっ!?」


 召喚者であるイリスの命令を聞いて、直ぐにアクアエレメンタルはグレンを飲み込んで体内へと収めてしまう。その姿は水球に閉じ込められた人そのものだ。しかも、その中で水が高速回転を行って汚れを落とし、体内にすら侵入してきっちりと綺麗にしてくれた。


「ごほっ、ごほっ、た、助かったっ!」

「殺すはずないよ。ちゃんと命令したし」


 アクアエレメンタルはグレンの汚れによってかなり濁っていたし、寄生虫まで体内に取り込んでいた。この時代の衛生状態は非常に悪いため、寄生虫が身体に入り込んで成長している事などよくあることだ。


「浄化していいよ。寄生虫はきちんと処理してね」


 命令を受けたアクアエレメンタルは瞬時に汚れを浄化して元の綺麗な水の身体へと戻った。


「じゃ、次は……待機で」


 アクアエレメンタルはイリスもグレンと同じように綺麗にしなくていいのかと訴えかけるが、イリスは自分で魔法を使いさっさと綺麗にしてしまう。


(他人にあっちを掘られるとか断固拒否だよ!)


 自分の肉体を既に隅々まで掌握しているイリスには排泄物も綺麗に処理するなど容易かった。


「じゃあ、お湯に浸かって100数えてね」

「か、数えられない、です」

「じゃあ、一緒に数えよう」

「は、はい」

「いち、にい、さん……」


 湯船に浸かり、しっかりと肩まで入って温まる。アクアエレメンタルも周りを綺麗に掃除した後、一緒に浸かってきたが、特に気にしなかった。



 少しして上がったイリスはメイドが用意していた大きめの服を着せる。


「それじゃあ、グレンにも会う服を用意してね。ああ、私の服を仕立て直したらいいから」

「宜しいのですか?」

「あんなにいっぱい要らないしね。後、女の子達を連れてきて」

「わかりました」


 メイドは指示に従って今度はグレンを連れていく。それから少し待って女の子達が来るのを待つ。別にのメイドがリタとレナ、ニナを連れて来た。


「さて、お待ちかねのお風呂だよ。まずは脱いでもらおうか」

「い、イリス……本当に入らねーと駄目でやがります?」

「駄目だよ♪」

「ぐぎぎぎ」


 いつまでも脱ぎ出さないリタ達にイリスは自ら近づいてリタの服を脱がしていく。抵抗をしないリタの服を脱がして裸にしたら次は双子姉妹へと移る。


「じ、自分で脱ぎます!」

「こくこく」

「そう、じゃあ早くね」

「はっ、はい」

「み、みないで……」


 普通の子供よりも性教育がされている分、羞恥心なども理解している。身体の方も同年代の日本人と違って発育はいいほうだろう。もっとも、栄養が足りていないのでガリガリなのだが。


「どうせこれからいっぱい見るから気にしないでいいよ。いや、可愛いからそのまま照れてくれていてもいいけどね」

(肉体をしっかりと調べて限界まで魔法回路を作るんだからね。全身くまなく調べないと危険だ。何度死にかけたかわからないしね)


 実際、自分の身体で行なって決して少なくない数の臨死体験を行っているイリス。彼女達にそのまま施せば精神が壊れるか、身体が耐え切れずに崩壊するのだから彼女達の身体を隅々まで調べなくてはいけない。もちろん、グレンも同じだが。


「あうっ」

「レナ、早く終わらせよう」

「うん……」


 姉のニナが一気に服を脱いで裸になり、レナがそれに続く。2人共、顔を赤くしながら大事な部分を手で隠す。


(痛々しいね)


 2人の身体には虐待の跡が汚れた白い肌にくっきりと残っている。鞭打ちによる蚯蚓腫れ、殴られた青痣、火傷の痕などが多数ある。これらから2人が今までどんな仕打ちを受けていたのかという事が理解でき、イリスは自分がどう思われているのかを理解できた。


(あれ? でも、私はこれ以上の事をやる訳だよね。脳内と肉体を弄り回して全身に魔法回路を設置するし、他にもゴブリンを利用して色々とする予定だし。うん、ある意味では私の方がひどいや)

「ま、やめないけどね。私の周りに邪魔にしかならない弱者は必要無い」

「「っ!?」」


 イリスの言葉に裸のまま抱き合い震える2人とさっきとは打って変わって楽しそうに笑っているリタ。今のイリスは自身に近しい者が弱者であることを許さない。人質になろうと、自身で打開できる存在を求めている。もしも、人質になり打開できなければ容赦なく切り捨てる事くらいやってのけるだろう。それぐらいしなければ無限に復活してくるプレイヤーの相手などできるはずもないのだ。


「さて、お風呂に入ろうか」

「逃げ――」

「お座り」

「――きゃうんっ!?」


 風呂という言葉に即座に反応して懲りずに逃走を図ろうとしたリタはイリスの命令によってその場に正座する。そして、そのまま浴場にリタを押していくイリス。


「ほら、2人も行くよ」

「は、はい」

「ん」


 慌てて付いてくる2人が浴槽に入り、辺りを見渡している。個人用の風呂であるのに、そこはかなり広く、贅を尽くした作りとなっており2人にとっては場違いな感じがしていた。


「さて、ここに並んで座ってね。今から一人ずつ洗っていくから」


 そう指示をして、さっさとリタの柔肌を素手で洗い出すイリス。イリスは水の魔法を使い、浄化成分と回復高価付与したボディソープを作成する。


(ボディソープとか、シャンプーとかも液体だし、私が作れないはずがない)


 そんな無茶な方法論で魔法を作るイリス。だが、魔法とはイメージな訳で、強く思い込めば魔力と明確なイメージさえあれば同じ属性であれば大抵できてしまうのだ。


「ふぎゃぁぁぁっ!? や、やめやがれですっ!!」

「目を瞑ってないと大変だよー」


 リタの長い黒髪をわしゃわしゃとかき回し、手で全身を泡だらけにしていくイリス。尻尾や耳までくまなくだ。そして、最後にはお湯を頭からかけて洗い流す。


「うぐっ、うぅぅぅっ、ひどいのでやがります……」


 洗い流した後、尻尾を丸め、耳をペタンとした可愛らしいリタが居た。そのリタに思わずモフモフしてしまったイリスは悪くない。


「くちゅん」

「あ、ごめんごめん。それじゃあお姉ちゃんのニナから洗おうね」

「はっ、はい」


 ニナの背後に回ったイリスがニナの身体に振れると、ビクッと反応してガタガタと震え始める。


「大丈夫、優しくしてあげるから。まあ、少し傷口が痛いと思うけど我慢してね。治療するから」

「は、はい……うぐっ!?」

「お、お姉ちゃん!?」

「だ、大丈夫、だから……あぐっ!?」


 痛がるニナの背中にボディソープを塗りこんでいく。イリスが白い泡が汚れで変色したので一旦流すと、打ち身などは治ったが、古い傷はそのまま背中に残ってしまった。


(これは一度えぐらないと駄目か。まあ、後でいいか)


 一度治って長い時間が経てばそれが通常の状態と認識してしまう弊害だ。


「これは根気よく洗わないと駄目だね。リタ」

「ぐすっ……なんでやがりますか?」

「洗うの手伝って」

「りゃ、了解なのでやがります」

「じゃあ、覚悟はいい?」

「は、はいっ……ひぎぃいいいいぃぃっ!?」


 桶に貯めたボディソープをリタと一緒に徹底的に塗りたくって泡立てる。ニナの身体に塗り付けると直ぐに肌の下にある汚れまでも浮き出して来るのでどんどん出てくる。頭も顔もお尻の間も大切な場所も徹底的に綺麗にする。そして、傷さえなければ生まれたてのような綺麗なプルプルとした肌触りのいいきめ細かな肌になった。ソバカスやニキビなども綺麗に消えたので尚更肌触りが良くなった。


「お、お姉ちゃんーっ!?」


 悲痛な叫びをあげ続けて汗など色々な液体を出してぐったりとなったニナをイリスはマッサージ用のマットが置かれている場所に運んで寝かせる。


「次はレナでやがりますね」

「そうだね」

「ひっ!?」

「逃がさねーです。お前も私と同じ目にあいやがれです」

「微妙に違うけどね」


 瞬時にニナの背後に回って捕獲するリタに呆れながら突っ込みを入れて同じように洗っていく。レナはニナが庇っていたのか、比較的ニナよりはましな状態だった。


「あぎぃいいいいいいいぃぃぃぃぃっ!?」


 それでも、結局は悲鳴を上げるのだが。どちらにしろ、これで綺麗な身体となり伝染病をはじめとした危険な病にかかる確率は減った。


「れ、レナ……」

「お、お姉ちゃん……」

「頑張って耐えて」

「う、うん……んぐぅぅぅっ!?」


 妹の悲鳴で気が付いたニナがレナを抱きしめる。それで安心したのか、レナは泣きながらもしっかりと耐えた。


「じゃ、次はラストだね。壁に手をついてお尻をこっちに向けてね。リタも」

「は、はい」

「ん……」

「?」


 2人は恐怖に震え、リタは分かっていない。


「まあ、リタは大丈夫だとは思うけど、2人はやっとかないとね」

「何をやりやがるつもりです?」

「体内のお掃除」


 イリスは下と上に指を突っ込んで指先から水を流し込んで浣腸を行う。裸足で森や村を歩いていた奴隷の2人は体内に巣食う寄生虫が確実に居る。それの掃除と全身のメディルチェックを行い必要な情報を集めていく。


「あ、虫歯か。ついでに治しちゃえ」

「ふぐぅぅぅっ!?」


 それから体内のあらゆる場所を綺麗にお掃除された3人はぐったりとしながら湯船に運ばれた。色々と悲惨な事になっている浴場はアクアエレメンタルが綺麗に掃除を行っている。


(データの習得は完了したし、子鬼であるゴブリンのデータを調べて実験体にする。その後、何体かに試して私のデータが使える男性のグレンに施す。その後、女性用のデータを元にニナとレナにも同じようにする。しかし、このままだと非力な子供のままだ。ゴブリンの筋肉繊維などを元にして改造してみるか。いや、同時に行うには私はともかく3人は危ない。まずはリジェネーションを高レベルで習得させる)


 これからの予定を確認するイリスの横で女の子達が正気に戻って来る。現状、イリスを中心に左右にレナとニナ、膝の上にリタという配置になり、女の子に囲まれている。


「あっ、あぁぁっ」

(み、見られたっ! 恥ずかしい所や行為を何度も……)


 ニナとレナは真っ赤になり恥ずかしがっている。そんな2人の頭を撫でつつイリスは告げる。


「これからしばらく同じ事をするから慣れてね」

「そ、そんな……」

「あ、あんなのをまた……」

「綺麗な身体にして、入手したデータを元に魔法を施すから諦めて。汚いままの子をベッドに入れるつもりはないし」

「あ、あの、私達に何をするつもりなんですか?」

「強くなって私の親衛隊になって貰う。もちろん、頑張り次第じゃ奴隷から解放してあげる」

(まあ、解放しても妻にするくらいだろうけどね。やっぱり、男の夢であるハーレムとかいいと思う。転生してから特にそう思うし、沢山の女の子を侍らせたいと思うのはお父様の血の影響なのか知らないけどね。まあ、どちらにしても私の考えている事を実行して成功すると無茶苦茶危険な存在になるから逃がすなんてとんでもないのだけれど)


 イリスが子供達、特に妻候補である彼女達にしようとしている事は肉体面と魔法面に加えて憑依召喚による憑依兵器化だ。憑依させた召喚獣と完全に融合する事により上位存在となる禁断の技法。どこぞの人が言っていた“人間を辞めるぞ!”という事が実際にできるのだ。むろん、アレと同じく憑依兵器と化した存在は災害級指定を受ける危険な存在となる。そして、この技法はゲーム終盤で使われる。使用者はジェラルド・フォン・エーベルヴァイン。憑依召喚をした対象は魔王。ファフニールも取り込み強大な力を持った魔王ジェラルドが皇帝を倒し、アスタリア帝国を支配する。つまり、イリスがやろうとしている事はジェラルドとなんら変わり無い。いや、ゲーム知識を持ち、追加パッチや隠しボスなどを使う時点でジェラルドよりも恐ろしい。もっとも、殆どがレベル1からなので鍛えなくてはいけないが。


「奴隷から解放! お姉ちゃん!」

「……奴隷から解放された場合はどうなりますか?」

「妻になってもらうよ」

「え……?」

「まあ、せっかく育てた奴を逃がすなんてとんでもねえのです」

「そういう事。君達の選択肢は二つ。実験に耐え切れずに死ぬか、必死に生き残って私のものとして私の為に生き、私の為に死ぬか。もちろん、私に尽くしてくれるならそれ相応の代価は支払うからね。うん、リタ同様可愛がってあげるよ。君達が可愛くなればだけど。不細工を妻にする気はないからね」


 リタの喉と尻尾の付け根を触って気持ちよくさせながら告げるイリス。


「うにゃー」

「お、お姉ちゃん……?」

(よく言う。初めから忌み子である私達に選択肢なんて無い。自ら死ぬ事だって首輪のせいでできない。なら、せめてレナと一緒に生きていく方がいい。妻にしてくれるというのは嘘だとしても、少なくとも有用性を示せばいい)


 姉の返事がない為、自らイリスに質問しだしたレナ。


「……お姉ちゃんと一緒に優しくしてくれるの?」

「そうだね。私が2人に施す儀式に耐えれば耐えるだけ優しく可愛がってあげるよ。儀式を終える度に君達はどんどん強くなっていくからね」

「強く……」

「君達にこんな怪我をさせた奴らをひとひねりに潰せるような力を得られるよ」

(お姉ちゃんを傷つけたあいつらを……潰せる。笑って私とお姉ちゃんを虐めるあいつら――殺す)


 イリスの言葉にニナの瞳に宿っていた憎悪に火が灯る。ニナの脳内では両親や兵士、兄弟に受けた虐待の日々が思い出されていた。


「イリス、詐欺師に向いてやがるです」

「そうかな? でも、本当の事しか言ってないし。うん、私と契約して魔法……魔人になってよって感じだね」

「いや、わからねーですから」

「そうか。いや、あれも詐欺師か。んーまあいいや。私は何者にも縛られず、自由に生きられる力が欲しい。せっかくの人生、自由に生きないとね」

「それには賛成でやがりますよ。邪魔する者は蹴散らし、突き進む」

「それが私の道。冥府魔道に落ちようとも自分の決めた道を突き進む。という事で、覇道を突き進もうか」

(目指すは曹操! いや、どちらかというと少女の方だけどね)


 大それた事を考えているイリスだが、今やることは人材集めと基盤作りだ。それも分かっている為にありとあらゆる手段を講じる。


(覇王様と違ってこっちは凡人なんだし、使える者は全て使う!)

「さて、決まったかな?」

「うん。お姉ちゃん、レナはご主人様のものになるよ」

「レナ……」

「お姉ちゃんも一緒に行こ。レナだけじゃ耐えられないけど、お姉ちゃんが一緒なら今までみたいにきっと耐えられるから」

「そう、だね。2人一緒ならきっと……ううん、絶対に大丈夫」

「うん♪ お姉ちゃんはレナが守るよ」

「ニナは私が守る」


 お互いがお互いを支え合う双子の姉妹は膝に乗っているリタのお腹辺りでお互いに手を握って決意する。


「決まったみたいだし、どうしよっか」

「忠誠の口付けが相場じゃねーですか?」

「奴隷はあ、足の甲や爪先にするって……」

「教わりましたね。ご主人様、足をあげてくれますか?」


 キスする場所によって意味は様々だ。足の甲は隷属であり、爪先は崇拝にあたる。この他には髪が思慕で、 額が祝福、友情。瞼が憧憬で、耳が誘惑。鼻梁が愛玩で、頬が親愛、厚意、満足感 。唇が愛情で喉が欲求。首筋が執着で、背中が確認。胸が所有で腕が恋慕。 手首が欲望。有名なのとして手の甲にするのが敬愛 、尊敬といったものだ。


「んー唇でいいよ。愛情が欲しいならね」

「わ、わかりました。レナもいいよね?」

「うん。足にキスするより、そっちの方がいいそれじゃあ、レナからするね」

「あっ」


 レナがイリスに軽く口付けをする。イリスはそのまま舌で唇で割って舌を入れて唾液を流し込む。


「んっ、んんっ!?」

(ついでだし、今から調整させてもらおうかな。一気にやると問題あるかも知れないし)


 流し込んだ唾液を触媒にレナの体中の水分を操り、自身の魔力を少量溶け込ませていく。溶け込んで定着したのを確認したイリスはゆっくりと唇を離す。2人の間には唾液の橋が出来て、途中で切れる。イリスは少し顔を赤らめ、レナは真っ赤になっている。


「あうあうあうあうっ」

(舌絡めるのってこんなに気持ち良かったんだ……)


 キスの魔力にとりつかれそうになっているイリスは次の獲物に狙いを付ける。いや、既に取り付かれているといってもいい。


「あ、あの……」

「大丈夫、優しくするから……」

「わ、私からするから意味があるのでは……」

「しーらない」

「んっ、んんっ!!」

「おーキス魔になりやがったです」


 イリスはそのままニナに襲い掛かり、ニナの舌を堪能しながら唾液を飲ませる。そのまま調整を行う。


「ふぅ、次は……リタだね」

「ふっふっふ、私と勝負とはいい度胸でやがります!」

「勝負じゃないけど……ま、いっか」

「んっ、ちゅるっ、んんっ」


 リタとイリスがキスをしだすが、2人と違ってリタはイリスの魔力を受け入れやすいように既に身体が調整されている。


(んーゴブリンで実験してからと思ったけど、いけるかな?)

「んっ、んんんっ!?」


 イリスはそのままリタの身体に自身のリジェネーション専用の魔法回路を元に魔法回路を作成していく。


「ふがぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


 元から頑丈なリタであっても猫のように全身を逆立てる。逆に言えばその程度で魔法回路が作成された。


「ふぅーふぅー」

「大丈夫?」

「い~り~す~」

「便利な魔法回路だよ。これがあればリタはもっと強くなれる」

「……もっとやりやがれです!」

「んぶっ!?」

(まさかのそっちからっ!?)


 そのままリタの身体に複数の魔法回路を作成していく。それはニナとレナがお腹の音を鳴らすまで続いた。


「ごめんごめん。それじゃあ上がろうか。グレンも忘れてたし」

「そ、そうだね」

「忘れてた」

「別に問題ねーでやがりますよ」

「いやあるからね」


 4人は風呂から上がって用意されていた服に着替えて行く。リタは自身の服を生成していつもの通り、スカートになった改造巫女服になった。ニナとレナは用意された新しい下着を身に付け、用意された服に驚く。


「こんな良い服、いいんですか?」

「可愛い」

「2人に用意された奴だし構わないよ。それにそれ以外服はないよ。裸で過ごしたいっていうなら話は別だけど」

「き、きます!」

「着る!」


 二人は後ろにリボンがある可愛らしいメイド服を喜びながら着ていく。普通のメイド服と違ってワンピースドレスのような可愛らしくされているのはそういう用途の者だという事を明確に分ける為だ。エーベルヴァイン家の個人が好き好きに用意したメイドである為、屋敷の仕事を与える訳にはいかないという理由もある。エーベルヴァイン家などの貴族階級の者達は適当に気に入った者を連れて来てメイドや執事にする。すると、メイドや執事としてろくな教育を受けていない者は本来働いている者達の邪魔でしかない。故に明確に別けられている。


「うん、似合ってるね。可愛いよ」

「あ、ありがとうございます」

「ん、ありがと」

「さて、行こうか」

「おー」


 外に出るとグスタフに注意されている執事服に着替えたグレンが居た。


「どうしたの?」

「いえ、この者に色々と教えていた所です。そちらのメイドの者達にも最低限の教育は施さねばなりません」

「それはそうだね。じゃあ、そっちはゆっくりとお願い。今はご飯を食べに行こう」

「そうでやがります。ご飯の邪魔をするなどぶっ殺されても文句は言えねーです」

「畏まりました。それではご案内いたいします」


 グスタフのエスコートでイリス達は食堂へと向かった。食堂では兵士をはじめとした従業員達が魚にむしゃぶり食らっていた。


「あっ、坊ちゃん! 魚ありがとうございます!」

「ありがとうございます!」

「久しぶりにパン以外のまともな飯が食べれました!」

「え、えっと……よかったね」

「早く食ってやるのです」


 次々にお礼を言われて戸惑うイリスはリタに引っ張られて席に着く。ニナとレナ、グレンは席の近くに立ったままだ。


「ああ、3人も座っていいよ」

「主人の許可がでたら座っても構いません。ですが、グレン。貴方は取りに行くのを手伝いなさい」

「はい!」


 グスタフとグレンが魚を取りに行く。


「楽しみだね」

「そうね。でも……」


 不安そうにこちらを見つめてくるニナ。まともな食事が貰えるか、彼女には不安なのだ。


「基本的には私やリタと同じものを食べて貰うから気にしなくていいよ」

「やった」

「ありがとうございます」

(やっぱり、ろくなの食べてなかったんだろうね。ちゃんと食べさせないと)


 嬉しそうにお礼を言う2人。


「おっ、きやがったです」


 リタの声がしたあと、直ぐに沢山の魚がワゴンに乗せて運ばれてくる。


「お待たせ致しました」


 並べられていくのはサーモンの香草焼き。塩で味付けしたシンプルな物だ。つまり、ほぼ昼と変わらない。そもそもレパートリーが少ないし、香辛料をはじめとした調味料は非常に高価なのだ。


(明日はテコ入れかな。塩は海で作ればいいし、砂糖は砂糖水を錬成……いや、鍊水してしまえばいい。後は沸騰させて固形に戻せばいいし、油やウィスターソースとかも作っていけばいい。とりあえず、小麦と塩、水でできる料理でも教えようかな)


 食事に関して、イリスは本気だった。日本の食事を知っているイリスにとって、硬いパンとスープだけなんて耐えられないのだ。
















この世界のゴブリンは非常に強いです。

ルートしてきます。熊を撲殺すら可能です。


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