ノルニラ連合国との戦争1
船でジェラルドより教えられた集合地点近くの港へとイリスとコルネリアは移動する。彼らの船が港へと到着すると戦闘班から20人が別々に散っていく。
「それではご主人様、行ってまいります」
「行ってくるね」
「うん、よろしく」
レナとニナが別れて散った者達の後を追っていく。イリスはそれを見送った後、残りの全員を連れて集合地点へと向かう。しかし、船から下ろされてくるのは馬の無い多数の馬車で人の手で引っ張られている。
「点呼確認!」
グレンの声に皆が答えていく。点呼確認が終え、馬の居ない馬車が並べられていく。
「姉様、お願い」
「任せない。足の速いのを用意するわ。我が眷属達よ、契約に従い現れなさい」
コルネリアが召喚魔法を発動させると、地面に無数の黒い魔法陣が出現する。そこから大きな黒い毛並みの狼の集団が這い出て来る。その狼達は体高が2メートルもあり、子供など簡単に丸呑みしそうな存在だ。
「装着し次第出発するよ」
「「「了解」」」
馬車を狼達が引っ張る為の器具が取り付けられていく。準備が出てきたらイリス達は集合地点を目指して進んでいく。街道に人影はなく、魔物も黒い毛並みの狼達に恐れおののき出てこない。その為、安全な旅路を歩んでいく。
集合地点に到着したイリス達は直ぐに割り当てられた場所にドワーフの親方率いる工兵隊が陣地を築いていく。その間にイリスとコルネリアは護衛のイルルとリタを連れてジェラルドの下へと向かう。その間に沢山の視線が二人を見てくる。全員が少女みたいな外見であり、戦えるとは思えないような場違いな集団なのだから仕方がないだろう。
(見られているけど、驚異は感じないや)
(弱わいのがいっぱいでやがりますね)
ジェラルドが居るであろう天幕の前に移動すると前に居る兵士達が止めに入るが、直ぐに中から入れという声が聞こえてくる。イリスとコルネリアはリタとイルルを残して声に従って中に入る。
「兄様……」
(なんかいっぱいいる)
中に入ったイリス達を待っていたのは歴戦の戦士を思わせるような強面の人やローブ姿の高位の魔法使い達だ。ジェラルドは天幕の中で奥の方におり、更に奥には白髪の老人が座っている。
「エーベルヴァインの坊や。この子が主の言っていた増援かの?」
「はっ。イリスは水に関しては無類の強さを誇ります。ノルニラ連合国の誇る水軍を蹴散らせるかと」
(私の相手は水軍? 確かに水があればどうとでもできそうだね)
ノルニラ連合国は大きな川を挟んだ先に領土を持つ連合国国家で、中には島国も存在し、精強な海軍を所持している。
「おいおい、この小童がか?」
「身内贔屓じゃないかしら?」
「どうでもいいの。使えるなら使うし、使えぬならそれまでよ」
「それもそうですね」
「では、私達エーベルヴァイン家に次の先鋒をお任せ下さい」
「良かろう。わしが許す。蹴散らせ」
「御意。それでは準備がありますので失礼致します」
ジェラルドが先鋒の約束をしてイリス達と共に出て来る。
「それで、いきなり先鋒ですか?」
「お兄様、無茶ではないですか?」
「いざとなれば俺が出る。被害を気にしなければどうとでもなるからな。それで、イリス。海軍を潰せるか?」
「大丈夫だと思うけど、好きにしていいの?」
「ああ、好きにしろ。今回、手に入れた領地は制圧した者の物となる。そうだな。もしも、相手の海軍を蹴散らしたら借金はなしにしてやる」
「相手の街を制圧したらそこは私の物で問題ないの?」
「ああ、問題ないだろう。もっとも、本国との交渉次第で変換というのもあり得るのだが」
「そっか」
「まあ、無理だとは思うが攻め込めるならどんどん攻め込んでしまえ。先鋒は我らに任されたからな。それと出来るだけ打撃を与えろ。トゥルガ王国との戦いが我が国のメインだからな」
「了解。それと別に私達だけで倒してしまっても構わないでしょ?」
「ふぉっふぉっふぉ、よいぞ。わしが許す。もしも、主らだけで充分だといえるならわしから王に進言してやるわ」
老人がいつの間にか現れ、イリスの頭をクシャクシャと撫で回した。
「雑事に構っている暇もないしの」
「このじーさん、強えのです」
「これでも元帥じゃからの。早く家督を譲りたいのじゃが、いいのがおらんしわしは隠居したい。わしは一日中日向ぼっこをしたいのじゃ。若人達よ、さっさと終わらせてくれ。期待しておるぞ」
去っていく老人を見詰めて固まるイリス。
(元帥って、化け物じゃん! でも、私の知っているレイドボスの人じゃなかったけど。前任の人か)
「相変わらずか、あのご老人は」
「兄様、とりあえず明日は休日に当てたいから明後日から行動に移るね」
「ああ、頼む。それと例の物は?」
「明日売りに出すよ」
「寝袋は素晴らしいですわ」
「……武器、手入れ、必要……」
「そっちもお金を取ってしようか」
「程々にしておけよ」
「うん」
(いっぱいお金を稼がないとね。これから沢山必要だし。そうなると船も壊すのは勿体無いか。海軍もこれから有った方がいいだろうしね)




