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「調査報告書」シリーズ

さて、これから実験を始めるよ。

作者: 巫 夏希

「さて、実験を始めるよ」


「実験ってなんだ。いきなりここに呼び出して」


「ごめんごめん、何も説明してなかったっけ」


「そうだ……何故そもそもこれを?」


「そのリストバンドかっこいいだろ? 特注品だから壊さないでくれよ」


「壊すことはしないさ。……で? 俺をこの部屋に呼び出して実験させようと。その理由は? いきなり呼び出され、俺が応じるとでも?」


「クッキーはどうだい。おいしいよ?」


「……美味い紅茶だな、それにクッキーも」


「そりゃ取り寄せたからね。不味かったら大変だ」


「ふぅん。……にしてもちと熱くないか?」


「そうかい? ……済まなかったね。代えようか?」


「いや、これでいい」


「そうか。それじゃ、アンケートに答えてくれるかな?」


「それも実験の一つか?」


「そうとも言えるし、そうでないとも言える」


「……なんじゃそりゃ」


「まあ、軽い気持ちでいいから」


「…………解った」


「それじゃ、一つ目の質問。『カミサマは居る』?」


「そりゃ、信じてる宗教に依るだろう。無宗教なら、信じてるカミサマも居ないだろうからな」


「それじゃあ、君の観点では?」


「居ないと思うよ。そんなの」


「へぇ」


「何しろ、くだらない。カミサマなんてもんがいるなら人間はもっと救われてるだろうよ」


「ほう……じゃ、二つ目の質問、いいかな?」


「あぁ」


「それじゃ……『僕が誰だか解る』かい? 出来れば服装も詳細に頼むね」


「……随分と馬鹿らしい質問だな」


「そうかな?」


「……まぁいい。見たままのことを言うぞ。お前は科学者だ。白衣を着て、白髪の混じった男だ」


「ふむ。まぁ、良しとしようか」


「……いつまで質問続けるんだ?」


「あと一個だけ。……それじゃ、ここは何処かな。国と都市名を頼むよ」


「アメリカ、サンフランシスコ」


「ありがとう。実験は終りだ」


「……最後までこの実験がなんだか言わなかったな?」


「そうだったかな。まぁいいや。君にはネタバラシしちゃおう。これは『精神異常を判定する』実験だ」


「?」


「解らないか? なら答えあわせと行こう。君が最初に口にした紅茶は、ただの水だ。しかし、クッキーは本物だがね」


「……どういうことだ?」


「だから、君は紅茶を飲む度に息で冷ましていたろう? あれがおかしいのさ。『だってあれは水なんだから』」


「……、」


「まだあるよ。僕は君にいくつかの質問をした。流石に場所は解ってたみたいだが、変じゃないか?」


「……何故だ?」


「君の経歴を調べさせてもらった。君は幼児洗礼を受けている。つまりキリスト教を信仰しているわけなんだ。首にある十字架のネックレスは……そりゃただのアクセサリーか」


「……なんだと?」


「つまりそんな人間がカミサマは居ないなんて言えるわけがないんだよ。嘘はついていけないって教えもあるし」


「違う、私は……」


「あぁそうだ。最後に一つ」


「……なんだ?」


「僕は人間じゃなくて人工知能を搭載したコンピュータで、向こうの部屋にいる科学者から命令を受けて実験したんだけど……、さて、君には誰の姿が見えたんだい?」

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