いきなり連れてこられたのが田舎だってぇ?
田舎に行きたくなくて押し入れに引きこもり中のマーの前に現れた、おうちロボット。おうちロボットに連れられていった先は、なぜか田舎だった。
気がつくと、マーは本物の操縦席にいた。
大きなフロントガラス。目の前に操縦桿。その横には、タッチパネルがならんでいる。
マーはパネルの一つにふれた。
ピッという音と同時に〝指紋認証完了〟のサインが出た。
操縦桿を引っ張ってみた。するとおうちロボットが滑らかに動き出した。
――腕は鈍ってないようだな。
おうちロボットにほめられて、マーの耳たぶがピンク色にほてった。
ところで、ここはどこだろう。さっき、おうちロボットは「田舎の家と戦う」といってたっけ。では、ここは田舎ってことでいいのだろうか? マーは目を凝らしたが、暗くて、まわりのようすが分からない。
(ここは、どこ?)
マーが質問すると、おうちロボットは「シッ」と喚起をうながした。
――静かに。田舎の家の扉が開くぞ。
グアラ、グアラ、グアラアアアア……。
腹の底に響く音だ。でも扉じゃない。ガレージの引き戸の音を大きくしたみたい。だけど引き戸かあ、ちょっとしょぼいな。どうせだったら、地獄の門みたいなイカしたデザインがよかった。
――中に入るぞ。
(オッケー)
マーは気軽な気持ちで、操縦桿を引っ張った。
ブロロロー、ガン!
何かに激突した。
おうちロボットは前のめりになって、前方に倒れこんだ。
――いてえ、敷居につまずいた。
おうちロボットが、つま先をさすりはじめた。
(ちょっと、おうちロボット! ぼく「つま先をさする」なんて操作、してないよ)
――うっさいな! マーの操縦が下手だったせいで、こっちは超痛いんだよ。ロボットにも動作の自由はあるってわけ。
(それだったら、ぼくが操縦する意味なんてないじゃん)
――……お気に入りの赤いスポーツカー靴が、へこんだ。こいつが頑丈だったからよかったけど、もしへなへなの車だったら骨折してたよ。
(おうちロボット、君に骨があったんだ)
――骨はない! ものの例えだよ、例え!
マーとおうちロボットが言い合っていると、また例の音が聞こえてきた。
グアラ、グアラ、グアラアアアア……、グァッチャン。
(あーあ、閉まっちゃったじゃないか)
マーがプンスカしながら何気なく振り返ると、今度は扉がはっきり見えた。
で、でかい。まるで樹齢千年の大木で作った巨大な板に黒い漆を何度も塗り重ねた扉に、大きな鉄の鋲が、いくつも取り付けてある。
扉にはいつのまにか閂がかけられ、高くそびえ立っていた。
(ど、どうしよう。どうしたら、家に帰れるの?)
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