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十九
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月が向けた闇の先を一人の少女が歩いていた。この世のあらゆることに絶望しながら。
――私の人生だ。なんで、親の借金の為にバイトなんかしなきゃいけないんだ
少女は心の中で慟哭していた。が、それは小さな胸に抱えるには大きすぎる。瞳から毒素のように熱い涙が吹き出し、口元からは呪詛のように心に思った言葉が駄々漏れる。
心の言葉と実際に出る言葉の境目すらもわからなくなった彼女は、気が付くと橋の上にいた。
川が見えると、疲れ切った心でぼんやりと思う。その川には一人の少女が沈んでいた。まるで能面のように白い顔だ。その口が開いて聞いた。
「おまえ、こっちに来たい?」
少女は答えた。
「そっちに行けば楽になれる?」
水に沈んでいた少女はにんまりと笑って頷き、手を伸ばした。橋の上にいた少女はそこに向かって飛び込んだ。これで解放される。そう信じた少女の顔には常軌を逸した笑みが浮かんでいた。
――その日の深夜、栃煌市の碧川で一人の少女が姿を消した。




