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陰陽少女  作者: 瞬々
明鏡止水
121/234

二十

 ぐらりと、身体を揺らし、鋭い眼光で見下ろす。戦慄に背筋を凍りつかせつつ、舞香は小太刀を順手に構えなおした。後ろでは夏樹がノロノロと起き上がる所だった。戦う意志は見受けられない。表情が抜け落ちてしまったかのような顔だ。ちらりと背後を振り返り、そんな事を感じた。


――私が守らなきゃいけないんだ


 自分を守ってくれる父も母も、姉もここにはいない。自分が守らないといけない。勝機は殆ど無いと言っていい。せいぜい、夏樹を逃がすだけの隙を与えるだけか。


「逃げるんだ、夏樹っ!!」


 びくりと背後で小さな身体が震えた。舞香は自分でも驚いている。たとえ自分に責任があるのだとしても、夏樹の行いを許す事は出来ない。そう、思っていた筈なのに。


そんな少女達のやり取りを義覚がせせら笑う。


「物の怪を逃がす陰陽師か。これは滑稽なり」

「うっせぇ、鬼なんかに友達を渡さねーよーだ」


 舌を思いっきり突き出す。碧が見ていたら、呆れただろう。酷く子ども染みている。だが、その瞳には強固な意志が宿っていた。霊気が力の根源が底から湧き上がってくる。


「ほう、ならば貴様諸共叩き潰すまでよ」

「いいのかー? お前の主人は、私を捕えておきたいんじゃないのか?」


 鬼の言葉に返答しつつ、舞香は不思議に思った。先程の攻撃もそうだが、こいつ、手加減するという事をしない。いや、もしかしたらしないのではなく、“出来ない”のかもしれない。


「姉の方は捕えてある。妹の方は……まぁ、死体になったとしても、あの方なら役に立てるだろう」


 冷ややかな視線と容赦のない言葉。頭が割れるかと思う程の怒りに駆られつつも、舞香は自分を抑え再度、背後に向かって叫ぶ。


「逃げろって!!」

「出来ないよ!!」


 対して夏樹は涙を流しながら叫んだ。怨嗟の呪言は薄れた墨のようにぼやける。元の夏樹の表情が物の怪という仮面を突き破り覗いていた。どす黒い靄が肌から浮き上がり、彼女の顔を覆い尽くそうとしている。

 舞香の友達は必死に戦っている。なのに、自分にはこの状況をどうにかするだけの力が無い。いや、力ならある。夏樹の、物の怪の霊気を使った時のあの感覚を思い出そうと瞼を閉じる。夏樹から奪った霊気が微かに木霊する。

 黒い頭痛が小波のように押し寄せる。胸の中で湧き上がる炎に、まともに呼吸が出来なくなる。この痛みを、誰かにぶつけてしまいたい。この苦しみを叩きつける事が出来たら、どれ程快感だろう。

 舞香は息を止めた。すっと目を開くとそこには獲物がいた。この上ない強者が。こいつが、痛みに苦しむ姿を見てみたい。その高慢な鼻をへし折ってやりたい。何が鬼だ。引き裂いてバラバラにしてやる。その魂を呑み込む程の水気をぶちこんでやる。


「金生水――蜃!」


 舞香が掲げた小太刀、そこから放たれた光を浴びて、蜃がぐっと身体を持ち上げ、義覚を睨みつけた。放たれたのは水気の咆哮。舞香から受け取った金気が水気へと変換したそれは、まさに激流。蜷局を巻くように水流がうねり、義覚の上を取る。その巨体をまるまる呑み込むようにぱっくりと口を開き、落下した。


 一飲みだ。黒い影が水の中で揺らめいている。


――どうだ、自分が閉じ込められる気分は?


 獰猛な笑みを浮かべ、舞香は問いかける。今の彼女を支えるのは、相手を“呪う”事により生まれる原動力。感情を激しく熱す事で動き続けている。そして、これは舞香自身も気づいていない事だが、相手への“呪い”は翻っては自分自身に対する“呪い”でもある。

 自身の弱さを省みず、自身の痛みを叩きつけることで成立する呪い。

 一度でも立ち止まってしまえば、振り返ってしまう。振り返ってしまえば、“呪い”は自身に襲い掛かる。だが、それでもいいと舞香は思う。今、この場さえ乗り切れるならと。


「怒ぅううああああああ!!」


 ドンっと、義覚が裂帛の一息と共に、斧を振り回し水流を振り払った。やはり、その程度で叩き伏せられはしない。だが、その打ち破る瞬間を見据えたかのように、銀の刃が襲い掛かる。それは義覚の首筋を掠め、朱の尾を薄く引いた。

 蜃の霊気に還元した為か、小太刀の刃は先程よりも薄い。だが、舞香は構わず自身で精製した霊気を小太刀へと収斂させていく。

 下段に構えたまま、さっと舞香が後ろへと退くと、義覚は一歩でその間を縮めた。振り上げられる斧が、舞香の目にはしっかりと映る。更に後ろへと逃げたいのをぐっとこらえた。後ろには夏樹がいる。


「おぉおおおおおおおおおお!!」


 再び、舞香は霊気を小太刀へ。ありったけ流し込む。刃の表面に薄らと脈が浮かび上がる。霊気の流れがくっきりと視認できた。制御しきれていない霊気が薄らと立ち昇る。

 だが、舞香が見ているのは敵の動作のみ。刃が少女の身体に喰らいつこうと迫る。


――ここだ


 小太刀に込めた霊気そのものが、意志を持ったかのように舞香を導く。腕が自然と跳ね上がり、斧の刃すれすれに当たる。正面から受け止めては小太刀ごと真っ二つにされる。だから、舞香はその斧の軌道を少しだけずらした。横へと。


「ぬっ!!」


 舞香のすぐ横で斧が地面をかち割る。義覚は驚いたものの、下がらない。それを隙と見て、舞香は小太刀を御したまま、突っ込んだ。

 突き出した刃は易々と鬼の皮膚を裂き、血飛沫を上げながら、肉を貫いた。



「その覚悟、見上げたものだ」



 義覚は突き出した腕を震わせ、笑う。掌から血肉を零しつつも、掴んでなお止まらなかった小太刀を凝視しつつ、それでも笑う。


「面白い。実に面白い。いかに弱い者でも、追い詰めればここまで必死に抗ってくる。これだから、仕合いは止められぬのよ」


 ぞっと背筋を凍らせつつ、舞香は小太刀を引き抜いた。義覚は抗わなかった。その事が逆に不気味だった。

 殺し合う事に喜びを見出している。その相手がどんなに弱い者であっても、こいつはその戦いから何かを得ようとする。決して、奢っているわけではない。油断もしていないだろう。

 ただ、純粋に殺し合う事、生と死のやり取りを楽しんでいる。そこにしか価値を置いていない。


――本物の鬼だ


「さぁ、恐らくは次の一手で終わるのだろうが、せめて倒すに値したと言わせる程の戦いを求むぞ」


 宣言でも予想でもない。単に今の状況に基づいて通告された事実。スポーツのコーチのような気軽な言葉、だが、次の瞬間飛んできたのは、紛れも無く死の一撃。

 小細工は一切なし、誤魔化しようのない圧倒的な力が舞香を引き裂こうとする。


――私じゃ駄目、か


 目の焦点が揺れる。その攻撃を見切れない。見る事すら、現実として受け入れる事すら拒否している。


――駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目ダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメ


「舞香ぁあああああああああああああああああああっ!!」


 夏樹の声に弾かれて、小太刀を持った腕が跳ねあがった。正面、舞香の顔の前で刃がかち合う。小太刀ごと叩き斬られてもおかしくない程の霊力に全身が痺れる。刃の内側に左手を押し当てて踏ん張るものの、彼女の意志とは別に、じりじりと後ろへと足が下がる。

 刃に込めた霊気は既に限界に達していた。刃に浮かんだ霊脈が千切れ、霊気が漏れ出す。視界が白く滲む。だが、舞香は更に霊気を込めた。光の向こうから義覚の眼光が舞香を捉えていた。


「はぁあああああああああああっ!!」


 降ろした髪が、真っ白な袖が、ざわっと舞いあがっては流れる。敷き詰められた床石が割れ、あるいは罅が入る。少女の嫋やかな肌が、鬼の武骨な肌が戦慄く。


 そして、弾けた。


 小太刀が根本から吹き飛び、行き場を失った霊気が暴風となってその場にいた者全てに襲い掛かる。

 ぐっと舞香は息を呑み、風に流されるままに床を後ろへと転がり、夏樹の身体にしがみつくように覆いかぶさり、九字を切って簡易的な結界を張る。とてもそれだけで凌げるかは、自信が無いが、何も無いよりはマシだろう。

 荒れ狂う霊気の中、舞香は必死に目を開け、我が目を疑った。


 鬼はそこに立っていた。

 鬼はびくともしなかった。

 鬼はこの上ない喜びに、

 薄く薄く、笑っていた。


「見事だ。ただの自暴自棄かと思っていたが、今のは計画通りの事だったのだろう?」


 そして、舞香は気が付いた。義覚の身体、その身に付けている甲冑の表面に金色の鎖が浮かび上がっているのを。


「我が主の結界――ここで使うとは思いもよらなんだ」


 それから、鬼は笑みを消した。敬意を表するように、礼を返すように、斧を上段に構えた。


「さらばだ、貴様は私の記憶に残るに値する力を示したぞ」


 刃は振り下ろされた。



†††

 岡見学園は四棟、巨大なグラウンドを囲うようにして建っている。三年が使う東、一、二年が使う西、体育館や音楽室等を備えた、教科における活動を行う南、そして北に立つ一棟は、四棟の中で一番背が高い。今は学園長、教員らが詰める校長室と職員室が備えられているが、昔はこの校舎のみで、一年から三年が勉学を行っていたという。他に武道場が北東、四つの校舎からやや孤立する形で存在する。

 生徒達に広く、深い学びを与える為という名目上、設備も高校生には勿体ない程整えられているのだが、生徒にしてみれば、授業の度に移動を強いられるので、この造りはあまり好評ではない。

 しかし、この構造には理由がある。それも表向きに出されている名目とは別に、だ。


 五龍の地、淤加美。


 霊術の世界ではここの事をそのように呼ぶ。かつて五龍が棲んでいた場所、未だにその龍の霊脈が色濃く残る場所であると。故に現陰陽寮にとって、ここは若い術者を育成するのに格好の場所となっている。

 多くの若き術者は、“現実”の世界、霊術、呪術を知らない人間達から距離を取りつつ、鍛錬を重ねる。その為のカムフラージュや、時には呪術を用いて記憶を消したり等、強引な手段に出る事もある。が、ここではそれが殆ど必要ない。

 そして、もう一つ。現陰陽寮は、ここをある種の拠点として活用できると期待している。


――霊術的な要塞として。


 その岡見学園。北の校舎の裏にある坂道を鬼一眼徹と式部常盤は駆けていた。学園内で異変が起きたのは、丁度二人が校長室で、吉備影津に常盤の妹である佐保の失踪について報告していた時だった。

 岡見学園が、負の気によって外から遮断され閉じ込められた。鬼一や常盤達が危惧していた通り、いやそれ以上の怪異が岡見を襲ったのだ。

 怪異が起きてすぐ、校長室に生徒達が詰めかけた。常盤はそれを、怪異にパニックを起こした故の行動と考えたが、違った。生徒達は手に手に、禍々しい霊具を身に付け、「自分達に危害を及ぼす者」を探しにやってきたと告げた。

 その異常事態に、鬼一と影津はすぐさま動き、生徒達を術で拘束、気絶させた。三人が真っ先に向かったのは、職員室だった。そこで見た光景を常盤は忘れられなかった。

 一言で言うならば、それは銀行強盗のようだった。生徒達が、霊具を手に職員室を占拠、大人達を拘束し一人一人を尋問していた。


『お前は私達の敵か』


 訊ねて、答えなかったり、「いいえ」以外の答えを出した者を容赦なく、集団で叩きのめす。常盤達が入ってきたのを見て、生徒達は一斉に視線を集中させた。


『誰だ――私達の敵か?』


 影津と鬼一が迅速に対応していなければ、常盤は取り乱していたかもしれない。二人の大人はものの数秒で、その場を“鎮めた”

 正直な所、自分はかなり力をつけてきたと思っていた。霊術も、剣術も、そして実戦における経験も。だが、まだまだだった。いや、そもそも力をつけていたのならば、佐保をむざむざ攫わられ――ほぼ確信出来る――気づかないなんて事も無かった筈だ。


「考え事は後にしろ」


 今、正に憂慮していた事を読んだかのように、鬼一が釘を刺した。


「しかしのぉ。地下に五頭龍のねぐらがあったとはのぉ。初耳じゃわい」


 しゃがれた声が頭の中に響いた。鬼一の佩刀、“吠え丸”だ。平安の世より受け継がれていくうちに霊刀となった、いわば付喪神のような太刀だ。


「まぁ、あの秘密主義の吉備のじーさんの事ですからねぇ」


 今度は妙に軽薄な女性の声が響いた。常盤佩刀の“今剣いまのつるぎ”だ。こちらも吠え丸と同じ位の“年寄り”だ。因みに今、常盤は橙色と赤の花々が袖に描かれた千早に、緋色の袴を身に付けている。季節の霊気を司る式部家の正装、戦装束でもある。

 職員室での騒動を片づけた後、影津は北の校舎裏の林に地下へと通ずる道があり、そこにはかつて五頭龍がねぐらとして使用していた大穴がある事を伝え、二人にそこへ向かえと告げたのだが。


「もっと早くに言ってほしいものだな。おかげで大分無駄な手間を取った」等と、鬼一はぼやいていたが、常盤も内心では不満を募らせていた。


 影津にしてみれば、まさかこれ程の大事になるとは思っていなかったのだろう。今にして思えば、佐保に怪異の調査を命じはしたものの、具体的な指示は何一つ下さなかった。これで、何を調べろというのか。


「さてね、あの爺さんがここまでされるまで、何も気が付いていなかったという方が私は今一つ腑に落ちないのだがな」


 ハッと、常盤は鬼一の顔を見た。しかし、鬼一は常盤の顔に浮かんだ疑いに首を振って否定した。


「あの狸が黒幕だという話ではないぞ。あの爺さんは野心家だが、物の怪と手を結ぶような人間でもない」


 それは彼が心の清い人間であるからとか、正義感があるからという事ではない。単に自分の信じる物にプライドを持っているというだけだ。常盤は妙に納得したような顔で頷いた。


「では、どういう事ですか?」

「今の状況が語る通りの事ではないのかね」


 鬼一は影津への嘲りを込めた笑みを浮かべ、そんな意味深な言葉を呟いた。自分で考えろという事なのだろう。だが、ひとまずその事については、頭の隅へと置いておく。

 影津の言う地下道への入り口は霊術によって封じられているという。歩道から林の中へと進み、奥へ奥へと歩いて行く。唐突に空間が開けた。緑が生い茂り、天から陽の光が差しこむ。聞こえるのは穏やかな風の音のみだ。そして、もはや風景の一部と化してしまっている大岩がある。良く見れば注連縄が巻かれていた。古色蒼然とし、どこか近寄りがたい重々しさが伝わってくる。

 鬼一は大股で大岩へと近づいていくと、懐から一本の懐剣を取り出した。それは、ここに掛けられた術を解く為に必要な“鍵”だ。

 すっと、鬼一は懐剣を大岩の前で振り下ろした。たったそれだけの事で、注連縄がはらりと地面に落ち、大岩が音も無く崩れ去る。常盤は慎重に近づき、そこに空けられた大穴を見た。

 ぱっくりと開いた空間は紫色の異様な気配を陽炎のように、立ち昇らせていた。瘴気だろうか。人の声のようなものが響いてくる。地獄の大釜を連想して、常盤は身震いする。


「ここ、入って本当に大丈夫なんでしょうか」

「何、無事じゃなかったらその時は、爺さんを恨むとしよう」


 鬼一は軽口で応じ、穴に向かって身を翻した。常盤も腹を括り続く。ふわっと浮き上がり、そして後は重力に引かれるまま、暗闇へと呑み込まれる。瞬間、身体の内を何か、電流のような物が駆け上がった。

 馴染みのある岡見の霊気、それを何倍もの濃厚な霊気、だが、それだけではない。それは馴染みがあるのと同時、反射的に拒絶したくなるような嫌悪感に全身の毛が逆立つ。

 間違いさがしの絵のようだ。同じ風景を見ている筈なのに、そこに異物が溶け込んでいるのを見ているかのような。


「こいつは面白い」


 鬼一が暗闇の中で獰猛な笑みを浮かべた。尤も、それだけならいつもの事なのだが。


「懐かしい気配だ」


 そう言うのが、耳に入り、え、と常盤が思った途端、床が近づいてきた。常盤は宙で一回転、床に着くと同時に車輪のように回り、“今剣”を抜き放ち、膝をついた自分の身体の前に構えた。

 その横で、鬼一が拳を地面に突き立てて着地するところだった。同じく、“吠え丸”を鞘から抜き放つ。銀色の刃が、ぎらりと光の波を打って輝く。


「何かいるな」


 鬼一の顔に先程浮かんでいた興奮は既に無い。聞いた言葉も含めて、錯覚だったのかと思う程の変わり様だが、常盤は不安げに師を見た。時々この師は酷くバランスを欠く事がある。ただし、それは力が落ちるという事とも違う。むしろ、その逆だ。

 自分の師は人間という皮を被った怪物なのではないかと時々思う。

 血肉という名の繭を突き破って、怪物が中から這い出てくるのではないか。もしも、そうなったら今まで師から教わって来た事はどうなるのだろうか。

 またもや、意識を思考の中に沈めこみそうになり、常盤は首を振った。今に集中出来なければ、佐保を助け出す事など出来ない。だが、どうしても鬼一の言葉が引っ掛かった。


「こちらに近づいてきます」


 常盤も向こうから近づいてくる気配に集中する。

 荒々しく削られた岩の壁、その向こうに古く痛んだ木の引き戸がある。

 驚いた事に相手は霊気を隠す為の術“隠行”すらしていない。無防備にこちらへと早足に近づいてくる。身を隠すまでもなく強い相手なのだろうか。段々と近づき、遂には足音まで聞こえてくる。知らず、“今剣”を握る手が汗ばむ。

 ふと、鬼一は何を思ったのか、放胆にも扉に向けて歩みだしていた。ぽかんと常盤はその背中を視線で追いかけ、それからハッとして後に続く。


――師匠……!?


 声にならない声で背中に呼びかけるが、鬼一は立ち止まらない。扉の前まで来てようやく足を止めたものの、その手は扉の取っ手に掛けられている。両者の間は、壁一枚。そこまできて常盤は霊気に妙な違和感を感じた。理由は単純。


――敵意が無い?


 思考する間も与えず、鬼一は扉を横へと鋭く開け放った。


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