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白の聖女と黒の聖女

作者: naturalsoft
掲載日:2026/11/07

☆☆☆☆☆押して評価して頂くと嬉しいです。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


ヒーリング王国には昔から『聖女』と呼ばれる者が存在していた。他者の傷を癒やし、街に結界を張り、森などに発生した瘴気を祓う者である。希少な存在だが、国に一人というわけではない。少なくとも10~20人ほどは存在し、国で見つかった場合は保護という目的で王城に連れて行かれるが、家族には多額の報奨金が与えられ、面会に来ればいつでも会えることになっている。


そして当代で一番強い力を持つ聖女には『白の聖女』という称号が与えられ、他の聖女とは違う金の糸で刺繍のしてある特別なローブを着ることが許されていた。


こうしてヒーリング王国は平和な時代を迎えていたのだが、今の時代には少し変わった聖女が存在していた。


『黒の聖女』


当代で一番の聖女としての力を持っていた人物だったが、なんというか………少し?かなり?変わった人物であった。


ヒーリング王国では珍しい漆黒の髪の毛を腰まで伸ばしており、白いローブは似合わないからと特注の夜会などで着るような『黒いドレス』を身に纏い、キセル(タバコ)をいつも吸っている聖女だった。


名前はシオン。この素行不良の聖女は、他の聖女とは違い我が道を行くタイプの性格である。

それ故に、現行の白の聖女と折り合いが悪く、いつも怒られていたが黒の聖女はいつものらりくらりと避けていた。


「黒の聖女様!いい加減にキセルはおやめ下さい!」


城の従者が苦言を呈してきた。

庭にある長椅子に横たわりながらシオンは答えた。


「う~ん?どうして~~?」


気怠そうに煙を吐きながら言った。


「聖女様の品格が損なわれます!」


従者の言葉にシオンは笑った。


「フフフッ、面白いことを言うのね?聖女の品格が損なわれると、聖女の力が弱まるのかしら?」

「そ、それは………」


従者はそれ以上言えなかった。


「私は別にいいのよ~?聖女を辞めても」

「えっ!?」


驚く従者に微笑みながら言った。


「お城の人に迷惑っぽく言われたから辞めますって言うだけよ~?」


従者は真っ青になった。

そんなことを言われたら、自分のせいで筆頭聖女が辞めたことになる。そうなるとその他大勢に責められる!?

従者はすみませんでした!と言って走って逃げていった。


「新人さんだったかしら?久しぶりに苦言を言われたわね~」


どこかおっとりした声で呟いた。

それからとある日のこと───


「そんな………白の聖女様でも無理だなんて」


医療室にて、騎士が片腕を無くした状態でうずくまっていた。


『どうして腕が再生されないの!?』


普通であれば魔力の大半を使って回復することができなかったのだ。

そこに、いつものキセルを口に咥えながら黒の聖女がやってきた。


「何しにきたのですか?治療の邪魔です」


白の聖女の拒絶する言葉に、周囲の者が息を呑んだ。


「別に仕事だから来たのよ。白の聖女様でも治癒できない怪我だって新米聖女が来たからね~」


ジッと傷口を見て言った。


「確かにこれは普通に回復魔法を掛けたんじゃ治らないわよ?」

「なぜそう判断できるのですか?」


腕から血は止まっていたが痛みはあるのだろう。騎士は苦しそうに黒の聖女に頭を下げた。


「あなた様なら治せるのですか?」

「ええ、簡単にね。まぁ、仕事だしやるわよ」


黒の聖女シオンは新米聖女に言った。


「レクチャーしながらやってあげる。これ、傷口に呪いが刻まれているのよ。最後に殺した相手を呪うやつね」


!?


「はいはい。そんなに驚かないの。新米ちゃんは解呪の魔法をかけて。できるでしょ?」


新米聖女は力強く頷くと解呪の魔法をかけた。


「よろしい。後は──」


シオンはキセルの煙をフ~と傷口に吹きかけると失った腕が再生した。


「す、すごい………」


新米聖女は圧倒的な回復魔法に圧倒され、尊敬の眼差しでシオンを見るのだった。


「これでまた剣を握れるでしょう。でもしばらくは筋力とか落ちているからリハビリしながら慣らしなさいね?」

「あ、ありがとうございました!これでまた民のために戦えます!」


この騎士は腕の良い騎士で周囲からの信頼も厚く、功績があったために、貴重な聖女の上級魔法を掛けてもらえることになったのだった。


「次は気をつけてね~~」


そういうとシオンは医療室を出ていった。


「相変わらず掴めない人ね………私も勉強し直さないと」


白の聖女は勤勉であった。

先に黒の聖女と呼ばれていたシオンに憧れを抱いていた。それ故に、あのやる気のない態度が許せないのだ。


意外にも黒の聖女の世間での評価は高い。


孤児院にて──


「黒の聖女様、いつもありがとうございます」

「別に、子供の扱いは慣れているだけよ」


庭の木の下で座っている黒の聖女の膝の上には二人の子供が寝ていた。


「キセルは吸わないのですね」

「流石に子供の前では吸わないわ。咥えているだけよ」


園長先生は笑いながらその様子を見守っていた。

そうした平和が続いていた時に、白の聖女の後継人が文句を言ってきた。


「黒の聖女よ!貴殿の立ち居振る舞いは聖女の品格を貶める!早急に改善されたし!」


またか。

シオンはキセルの煙を吐いて答えた。


「前から言っているけど、たかだか立ち居振る舞いで聖女の力が衰えるの?ただアンタらの見栄のためでしょうに。私はいつでもここの聖女を辞めて他国に行ってもいいのよ?」


「ぐっ!いつもそうやって自分の実力を盾に何でも意見が通ると思うなよ!」


ああ、面倒くさい。

あ、そうだわ!


シオンは何かを思いついた。


「良いことを思いついたわ」

「な、何だ!突然に?」


「そもそも、見習い聖女を含めて、現行の聖女の力が弱すぎるのよ。だから、既存の聖女を修行し直して、もっと使えるようにしましょう。そうすれば私が楽できるもの」


!?


「ふ、ふざけるな!そんなことできる訳ないだろう!」

「できるわよ。試しに見習い聖女5人ほど1ヶ月間、私に預けなさい。現行の聖女より強い力を扱えるようにしてあげるわ」


「な、なななっっ………」


そんな時、後ろから白の聖女がやってきた。


「面白い話ですね。やれるものならやってみてください」

「あら?話がわかるわね♪修行中の見習い聖女の業務は私がやってあげるから安心してね」

「珍しい。どういう心境の変化なのかしら?」


シオンは答えずに笑みで返した。

次の日になり、見習い聖女達は緊張していた。

実力はあるが生活態度の悪い、黒の聖女に修行をつけられると言われたからだ。


「おはよう。最初に、貴方達は普段どんなことをしているのか教えてくれる?」


朝6時に起きてから教会の女神像の前で一時間お祈りする。その後朝食を取って、ポーション作り。12時に昼食を取って、午後から、軽傷の患者の治療。夕食を取り、また教会の女神像の前で一時間お祈りをして、少しの自由時間ののち就寝。


これが大体のローテーションで毎日行われている。


「はぁ~、まだこんな無駄なことをやっているのね。今日から1ヶ月間は私の指示に従ってもらうわ」


「「はい!よろしくお願い致します!」」


元気よく挨拶する見習い聖女に黒の聖女シオンは優しい笑みを向けた。見習い聖女達はその蠱惑的な笑みに赤くなった。


「ふふふっ、そう緊張しなくてもいいのよ?」


聖女達は頷いた。


「まず女神の祈りは廃止します。こんな無駄な時間は要らないわ」


えっ!?と、見習い聖女達は驚きの声をあげた。


「で、でも、女神様に祈ることで聖女の力が上がるって聞きましたけど?」

「あははははっっ!まさか。そんなことある訳ないじゃない。だって、その証拠が私よ。女神に祈らなくても強い力を持つ私はどうしてだと思う?」


戸惑う聖女達に言った。


「とりあえず、騙されたと思って私の言う通りにしなさい。いいわね?」

「はい」


そして黒の聖女の修行が始まった。

午前中は7時まで寝て、朝食を取った後は、『医学書』の勉強だった。黒の聖女が持ってきた人体の内部の構造が絵で描いてあるこの世界での最高峰の医学書であった。

人数分はないので二人で一緒に見て勉強してもらい、残りの3人はポーション作りだった。

水に魔力を込める作業だが、黒の聖女シオンは終わってもまだまだ魔力を込める様に指示した。


「もう無理です………」

「なんとか中級ポーションになったかしら?」


一本作るのに全ての魔力を使い切ってダウンした見習い聖女ちゃん達にはお昼まで休むよう伝えると、シオンは残りのポーションをパパッと作成した。


「あれだけの量をあっという間に………」

「すごい」

「流石は黒の聖女様」


見習い聖女ちゃん達は少しずつ黒の聖女シオンのことを尊敬していった。

そして1ヶ月が経ちました。


「それでは見習い聖女達の成長を見させてもらいます」


立ち会いの下、まずポーション作りから始まった。

1ヶ月前は見習い聖女は20本ほどしか作れなかった。通常の聖女で50本以上作れて一人前と言われる。黒の聖女や白の聖女は100本以上軽く作れるが。


公平に判断するために、見習い聖女5人と通常の聖女でポーション作りの勝負が始まった!


通常聖女は65本ポーションを作った。


「あら?増えてる?」


シオンの呟きに白の聖女は勝ち誇った。


「おーほほほほ~!私も仲間の聖女達を鍛えてたのよ~」


ドヤ顔の白の聖女にシオンはげんなりした顔で言った。


「あんた、その笑い方似合っていないわよ。それとそのドヤ顔止めなさい」


おでこにデコピンした。


「あいたっ!?」

「ドヤ顔するくらいなら見習い聖女ちゃん達を見なさい」

「えっ?」


見習い聖女ちゃん達をみると全員が100本以上のポーションを作っていた。


「嘘でしょ!?」


毎日、限界まで魔力を使い、魔力総量を底上げしていたのである。


「どうかしら?私の鍛えた見習い聖女ちゃん達は?」


シオンのドヤ顔は蠱惑的で白の聖女は赤くなった。


「まだです!次は治癒魔法で勝負です!」


次は患者を呼んで治癒魔法の勝負だって。

あれ?

実力をみる話から勝負に変わってる???

黒の聖女は首を傾げた。

まぁ良いけどね。


まずは簡単な治療から。


「うん、流石ね。わずか一分で完治させたわ」


通常聖女はすり傷を一分で治した。

見習い聖女ちゃんは───


「えっ!?一瞬で!??」


回復魔法の光がパーッと光った瞬間に治った。

ただ回復魔法を使うのではなく、人体構造を知って、そこを治そうと思いながら回復魔法を使う方が効果が高くなるのだ。


この事はまだ世間では知られていない。

黒の聖女シオンの独自考察で生み出された回復の効果が高くなる技である。


「これでもう見習い聖女ちゃんとは呼べないわね~これで一気に見習い聖女卒業で、即戦力の聖女達になったわ」


「くっ、流石は黒の聖女様です。まさか一ヶ月でここまで育てるなんて………」


白の聖女は悔しがったが、少し嬉しそうだった。


「私は嬉しいです!ようやく黒の聖女様もやる気を出して───」

「これで私がサボっても大丈夫そうね♪じゃーね~~」


黒の聖女はそのまま出て行った。

ワナワナ………


「待ちなさ~い~!!!」


白の聖女は怒って黒の聖女を追うのだった。


・

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とある日───


白の聖女が尋ねた。


「それでどうして『わざと』悪い態度を取っているのですか?」


「今更ね。まぁいいわ。命令に従順な聖女だけでは、聖女は国の備品扱いされて使い潰されるわ。かつてがそうだったの」


「えっ?」


「聖女に休息はなく、倒れても無理矢理に働かされたのよ。それに怒った【守護精霊】が国中に病を蔓延させて多くの人が死んだわ。そして国民の夢枕に現れて言ったの。聖女は神様や精霊に好かれる魂を持つ特別な存在。その存在を蔑ろにした罪を償えとね」


白の聖女は困惑しながら聞いた。


「それから、生き残った王族貴族、民達はその守護精霊の言葉を忘れない様に、国で聖女が見つかると、王城で保護して、家族に金銭的な支援と、忙し過ぎないほどに、聖女の力を使って国の民に治療するのに正当な対価を払うようになったのよ」


「全然知りませんでした」


「それは当然よ。ざっと150年前の話だもの」


「はい?」


「話を戻すわね。それで従順な聖女だけは悪意のある王族、貴族に利用されるだけになってしまうわ。だから扱い難い聖女がいることで、聖女は簡単に利用できる者ではないと知らしめているのよ」


白の聖女は黙って話を最後まで聞いていて、深い息を吐いた。


「それで納得致しました。どうして黒の聖女様が頭1つずば抜けているのか」



そう、先ほどの『守護精霊』様が黒の聖女なのだ。



「どうして貴女様がここに?」

「だって、今の時代には私の愛し子がいるのですもの」


黒の聖女はジーと白の聖女を見つめた。


「先に来て、あなたの居場所を作っておこうと思ってね」

「わ、私が守護精霊様の愛し子!?」


あわわわっ!?

白の聖女はパニックになった。

しかしデコピンされて我に返った。


「あいたっ!」

「調子に乗るんじゃないの。それと私の事は秘密にしなさいよ?」


150年前に守れなかった約束を今度こそ果たすわ。

昔、守護精霊の愛し子が酷使され命を落とした。

死の間際に言ったのだ。


「一度いいから、聖女達とピクニックに出掛けて、一緒にお弁当を食べたかったわ………」


たった、それだけの事も許されないというの!

その当時、聖女を囲っていた王族や貴族は治療に法外なお金を吹っかけており、聖女を道具のように扱っていた。

聖女達の清らかな魂の波動が日に日に弱くなる事に疑問を感じて、下界に来てみれば手遅れだった。


故に罰を与えた。


王族や貴族達を軒並み病にして殺した。

そうこれは守護精霊の『呪い』だ。


国民に聖女の実情を夢枕で教えた。

そして警告もした。

それから150年。代替わりした王家は聖女を敬い、正しく保護してくれている。


「………今度、みんなでピクニックに行きましょうか」


「えっ?あ、はい!いいですね♪」

「1日くらい全員休みの日があってもいいでしょう」

「それじゃ、私がお弁当を作りますね!」

「あら?私も作るわ」

「えっ!良いんですか!?」

「もちろんよ」


「嬉しいです!皆にも伝えておきますね」


嬉しそうに走っていく白の聖女を、愛おしく見送る黒の聖女だった。


いつまでもこの日常が続きますように。



【END】



☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

【あとがき】


最後までお読み頂きありがとうございます。

その他にも『多くの小説』を投稿しているので読んで頂けると嬉しいです。


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

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『【連載版】ヒロインは元皇后様!?~あら?生まれ変わりましたわ?~』


『悪役令嬢は大好きな絵を描いていたら大変な事になった件について!』


『聖女は寿命を削って王子を救ったのに、もう用なしと追い出されて幸せを掴む!』


『復讐は合わせ鏡のように─『私』を殺してでも絶対に許しませんわ!』




作者のイラスト付き

悪女と言われた令嬢は隣国の王妃の座をお金で買う!

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【連載版】幼女の建国記!!幼女は強大な魔力で国を豊かにしていく


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楽しんで頂けたらと思います!



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読者様の評価の高かった作品です。

一度読んで頂けると嬉しいです。







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