【1】
新学期最初のビッグイベントと言えばやはりクラス替えだろう。
嬉しいことに今年も咲良と同じクラスになることができた。
幸先のいいスタート。
それに加え今年から髪型も変えてみた。
大好きな天馬くんが登場する《シンデレラ・ボーイズ》のヒロインと同じ、右サイドテール。験担ぎのようなものだ。天馬くんに似た彼に声を掛けるのだから、天馬くんと結ばれるヒロインに髪型だけでも似せておこう――と。
あとは雨の日を待つだけ。
と言ってもこれまでの経験上、雨の日に必ず会えるとは限らない。相手が利用するバスの時間は毎回同じでないようだから。いつ見掛けることになっても即座に対応できるよう、心の準備だけは常にしておかなければ。
――しかし。
決意も虚しく、彼を見かけることができないまま四月下旬になってしまった。
暖かな日差し降り注ぐ土曜。
ゆったりと午前九時半過ぎに起床し、朝食を済ませてから家を出ようとしたところ、お母さんに声を掛けられた。
「今から本屋さんに行くんでしょ? ついでに買い物お願い。メモしておいたから」
「ごま油とバター……ってスーパー? 方向逆なんだけど」
「でも好きでしょ? あのお店」
地元密着を謳うスーパー《フォレスト》はお母さんが生まれた頃からあるらしい。食品を売るだけでなく、複数の店舗が集う商業施設だ。一階フロアは食料品売り場とお団子屋さん、二階にはゲームコーナーや衣類売り場、雑貨屋さんがある。お団子屋さんには百円のミニソフトクリームが売っており、幼い頃はしょっちゅうねだっていた。
お母さんにとってはその印象が根強いのだろうが、私ももう高校生。遊ぶには物足りない場所であり、ソフトクリームならもっと美味しいお店を知っている。
「私も忙しいから。メモはお返しするってことで」
「分かった分かった、別のものにしてあげる。《カサブランカ》で好きなもの買っていい、ってことでどう?」
雑誌やテレビでも取り上げられている有名なパン屋さん《カサブランカ》。私のお気に入りはメロンパン――もう何度食べたか分からない。面倒なお遣いだけなら断りたいが、パンを自由に購入できるなら大歓迎だ。こうして食べ物に釣られてしまうところは結局変わっていない。
「お母さんとお父さんは何がいい?」
「限定生食パンがまだ残ってたらそれと、あとは適当でいいかな」
了解して外に出ると、自転車の前カゴにトートバッグを入れた。閑静な住宅街を走り抜け、まずは本屋さんへ向かう。目的の参考書を購入し、続いて《カサブランカ》へ。
店内へ入り取り急ぎチェックしたのは、お母さんに頼まれた限定生食パン。小麦柄のビニール袋に一斤ずつ入っており、一日三十個限定となっている。これまでの経験上、正午過ぎには売り切れてしまう人気パンだ。
お店の開店時刻は午前十時。それから一時間ほど経過している。
残っていたのは一袋だけだった。
ギリギリセーフ。
あとは好物のメロンパンとウインナーロール、ガーリックトースト、五個入りのミニチョコクロワッサンを購入した。
限定食パンは専用の紙袋に入れてもらえるのだが、この紙袋のデザインが最高に可愛い。なるべく皺が寄らないよう丁寧に持って帰らなければ。




