【3】
アニメやゲームのグッズが売っているお店は、駅から徒歩五分も掛からない場所にある。
開店は午前十時。
私は初めて行くが、律は月に一~二回ペースで通っているそうだ。土日はお客さんが多くて商品を見るのが大変だと言われたため、開店時間ちょうどに待ち合わせた。
今日はお互いに自転車集合。アニメショップで《柴クエ》グッズを見たあと、ファミレスでお昼ご飯を食べることになっている。
律と仲直りしたことは昨日、咲良に報告した。咲良から返ってきたのは「人生いろいろありますよなぁ」という妙にしみじみしたセリフ。ここ最近の私は完全に病みモードで迷惑を掛けてしまったから、咲良には後日、お詫びのアイスでもご馳走しよう。
待ち合わせ十分前に駅へ着くと、駐輪場に自転車を停めてアニメショップへ向かった。お店の前には既に数人のお客さんが並んでいる。その最後尾に律の姿があった。
今日の彼女も、離れた場所から見たら男の子としか思えない服装をしている。いわゆるモード系といったところだろうか。スタイリッシュでお洒落な彼女と対照的に、私は英字プリントのパーカーとショートパンツというラフな格好である。
お店が開くと、律の案内で一階フロアにあるゲームグッズコーナーを訪れた。テレビやネット広告でよく見かけるゲームのグッズは山ほどあるが、《柴クエ》グッズはコーナーの隅に少しだけ。
「僕はすごく面白いと思うんだけど、あんまりユーザー増えないんだよね。ビジュアルもめっちゃ可愛いのに」
「無課金の私から言わせてもらうと……やっぱりガチャがネックかなぁ。激レアの排出率が二パーセントなんて低すぎると思う」
「ガチャ率なんてどのソシャゲでも大差ないことない?」
「私がやってる《シンデレラ・ボーイズ》は七パーセントだよ」
そんな会話をしつつ商品をチェックし、手のひらサイズのぬいぐるみを取った。律にとっては前回見たときと品揃えが同じで、購入したいものはなかったらしい。
「えっと、レジは……」
「あっちだよ。会計済ませたら二階の乙女ゲームコーナーも行ってみる? 《シンデレラ・ボーイズ》のグッズもあるはずだから」
「でも律は興味ないよね?」
「どんなジャンルでも売り場を見るのは好きだから。行こう」
柴ぽんのぬいぐるみを購入後、エスカレーターで二階へ。
一階フロアとは違い、男性キャラクターのグッズで溢れ返った区画がある。賑わうフロアの中は女性のお客さんばかりだ。《シンデレラ・ボーイズ》のコーナーにも女性が群がっている。
隅の方から陳列棚を眺め、推しである天馬くんのアクリルスタンドを手にした。缶バッジも欲しいが、ランダム封入商品……天馬くんが当たる確率は八分の一。お財布の中身を頭に浮かべ、購入は断念することにした。
「付き合ってくれてありがとう。お会計してくるね」
「僕はそのへんを適当に見てるよ」
律と別れてレジへ。
一階で買ったぬいぐるみと同じ袋にアクリルスタンドを入れてもらうと、律の姿を捜した。さほど広いお店ではないため、どこにいてもすぐ見付かるだろう――なんて考えた矢先彼女を発見。歩み寄ろうとしたのだが、律の傍にたむろする女性グループが視界に入った。
四人の女性たちの目は律に向けられている。「あの人カッコ良くない?」「声掛けてみようよ」「あれ女の子じゃない?」「えーマジ?」「話し掛けてみれば分かるって」「あたし無理、誰か行って」――律のルックスが目を引いたようだ。
胸がざわめくような感覚がする。
この僅かな不快感……まるで嫉妬心のよう。
でも。
そんな感情を抱くはずがない。
律は私の恋人ではないのだから。
嫉妬心でないとすれば、この感情は…………そうだ、律のことを男性として見てほしくないからだ。律は女の子だから騒いでほしくない。以前の自分を見ているようで気持ちが塞ぐ。
ひそひそ話で盛り上がっているグループを通り過ぎようとしたところで、律の方からこちらへ向かってきた。居心地の悪さを覚えている私に気付いているのかいないのか、律が私の右手を取る。
「移動しよう」
「――え?」
「いいから」




