1.わたしとクロメ
『桜ノ宮生徒会長!お疲れ様です!』
わたしが帰る準備をしていたとき、生徒会員の子たちが、わたしに挨拶をしに来てくれた。
今日も生徒会の業務で大変だったわたしに、わざわざ声をかけに来てくれたのだろう。
『ふふ、ありがとう。みんな。みんなも気を付けね、』
微かに目を細め、口角を上げて優しく笑って見せると女の子たちは顔を赤くした
自分で言うのもアレだが、私はかなり容姿に恵まれていると思う。学校での別名が『小野小町』とも言われているし。
(疲れたなぁ、帰ったら宿題かなぁ…)
花園市の名門校、『桜ヶ丘学園』
倍率はかなり高く、受かるだけでも大変名誉な私立学園。
その生徒会長がわたし、桜ノ宮ほたるだ
みんなは、わたしのことを恵まれている、だとか完璧、だとか小野小町だとか言う
まぁ、確かにそうかもしれない。
大手財閥、桜ノ宮グループの一人娘として生まれ、幼い頃からの英才教育の影響で勉強も運動も難なくこなせた。また、部活の弓道でも全国大会で賞をとるくらいには才能がある。
確かにそうかもしれない…けれど…
(…あ、一番星だ)
ぼんやり歩いていたせいで気づかなかったが、空はもう紫色に染まり、一番星のようなものが輝いていた。白く、眩しいほどに輝いている。まるで月みたいに。
(…綺麗だなぁ、…って、ん?なんか落ちてきてる…?)
あまりに綺麗だったので、目を細めてみるとその星が落ちてきているように見えた
理解するのには時間がかかった。なぜなら、流星や彗星ならばもっとはやく落ちてきて、願い事を三度唱えることすらできない。なのにそれは、確かに速かったけれど、願い事を三度どころか、五度唱えられるように思えた。
だんだんそれは真下にいたわたしに近づいてきて、その姿形を露にする
(なにあれ?ぬいぐるみ?)
それは全身は白かった。そして、ふわふわした毛が生えていて、背中に悪魔の羽のような黒い羽が生えていた。
『にゃぁぁぁぁぁぁ!?』
『うわぁ!?』
私はすんでのところでそれを避けて、土埃が晴れるまでじっと待った。
数秒のうちに土埃は晴れて、より詳しくそれを見ることができた。なかなか、特徴的な姿をしていた。空中からもわかったように、ふわふわの白い毛が生えていて、背中に羽根が生えている。そして、いまわかったことだが、頭には猫耳が生えていて、目は赤色で瞼を閉じたり開けたりしていた。土埃が目に入ったのだろうか。
(なにこれ…うーん…)
頭を回転させてこれがなにかを必死に考えようとした。悪魔の羽、猫耳、白…これらの情報を組み合わせて頭というコンピューターのなかで記憶のなかから必死に検索した。そして、その検索結果は『猫のコスプレ』だった
『えっと…?コスプレ…?』
『にゃつ!クロメはコスプレじゃないにゃ!』
『…しゃべった!?』
このときばかりは流石に声を上げてしまった。桜ノ宮グループの令嬢としてふさわしい振る舞いをしよう、と意識していたのだが。
『じゃあ、一体あなたは…』
わたしがそう言うと、猫は寝そべりから立ち上がって見せた。
『クロメの名前はクロメ!ハピネス星からハッピーガールを探しに来たのにゃ』




