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現代ダンジョン・オーバーキル!  作者: フェフオウフコポォ


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第97話 人形の群巣ダンジョン視察

旧市街の罠ダンジョンで、探索者たちがモンスターと戦い、魔石を発見するまでを視察した。


視察後に少し話すと、どうやらあの6人組は、本当はもっと奥で行動しているチームらしい。

今回は視察に合わせて場所を変えて探索の様子を見せてくれたようだった。

お礼にポーションを人数分渡しておいた。


その後、またもリムジンで移動。

用意されていたお弁当をいただきながら次の目的地に向かい、午後一番で次の視察先に到着した。


4級『人形の群巣ダンジョン』

ここは、罠ダンジョンとはまったく違う空気をまとっていた。


結界膜をくぐると、甘い香りが鼻をかすめる。

湿気のある空気に混じる、どこか人工的な香料のような匂い。

そして視界に広がったのは――巨大なドールハウスの内部のような空間だった。


壁はパステルカラーで塗られ、ところどころに巨大なリボンやレース模様が飾られている。

だが、近づいてみると塗装は剥げ、壁紙は破れ、床の木材は腐っている。

『可愛い』と『廃墟』が同居したような不気味な空間。


「……なんか。怖ぁ……」


俺のつぶやきに、詩乃が淡々と答える。


「ここは『人形の巣』です。

可愛らしい外観で油断させ、狭い通路と死角で探索者を追い詰める構造になっています」


俺がつぶやくと、詩乃が淡々と答える。


今回視察するのは、全員男性の6人チーム。

全員がこのダンジョンの経験者ではあるが、本格攻略に向けて慣らしている最中だという。


前衛2名、後衛2名、探索1名、ポーター1名。

装備は軽量金属防具に実戦向きの武器。

30前後の年齢の人が多いように見え、みな熟練者らしい落ち着きがある。


「では、始めてください」


詩乃の合図で、チームがドールハウスの廊下へと進んでゆく。

床は軋み、壁の奥から何かが動く音がする。


しばらく進んでいくチームについていくと、


カタ……カタカタ……と、何かが動いている気配がした。


「……来るぞ。」


その瞬間、通路の奥から人形たちが這い出してきた。


木製の関節がぎこちなく動き、ガラス玉の目が光る。

だが動きは異様に速い。

床を爪で叩きながら、四つん這いで迫ってくる。


「前衛、構えろ!」


盾役の男が巨大な盾を前に突き出す。

人形たちが一斉にぶつかり、ガンッ! ガンッ! と金属音が響いた。

熟練者らしく、盾の角度も受け方も完璧だ。


だが――


「ぐっ……!」


押されている。

盾を持つ腕が震え、足が半歩下がる。


……覚悟はしていた。

でも、やはり目の当たりにすると実感してしまう。


セリフィアたちはもちろんのことだが、アクセサリ無しの俺でも、この程度の攻撃では押し負けない気がする。

普通の探索者と、俺はもう違うレベルになってしまっているのだと。


アタッカーの男が横から飛び出し、関節を正確に切り裂く。

動きは洗練されている。

だが――


「っ……!」


切った瞬間、別の人形が飛びつき、ギリギリで回避する。


危なっ……

熟練者の『紙一重の回避』。

俺から見ると『危なっかしい』としか思えない。


後衛がクロスボウを構えるが――


「射線が通らん!」

「前に出ろ!」

「無理だ!」


狭い通路では、熟練者でも連携が難しい。

探索担当が叫ぶ。


「右の壁、穴がある! そこからも来るぞ!」


言った瞬間、壁の穴から人形が飛び出した。


「っ……!」


ポーターの男が慌てて下がり、補給袋を落とす。

熟練者でも、突然の奇襲には反応が遅れる。


前衛が盾で受け止めるが、その衝撃で盾が大きく揺れ、アタッカーがバランスを崩した。


「うわっ!」


倒れた瞬間、人形が一斉に群がる。


『やばい!』そう気づいた時には、俺の足が前へ出ていた。

だが――


「中村様。」


詩乃の指先が俺の袖を軽くつまみ、足が止まる。


「助けないと――」

「彼らは、このダンジョンの熟練者です。

熟練者であっても、こうして戦うのです」


視線の先では、盾役が叫びながら突進し、倒れた仲間を覆うように盾を構えた。


「後衛、今だ! 撃て!」


後衛が射線を確保し、クロスボウの矢が人形の頭部を貫く。

探索担当が投げた閃光弾のようなものが炸裂し、人形たちが一瞬ひるむ。

その隙に、前衛が倒れた仲間を引きずり起こす。


「大丈夫か!」

「……っ、平気だ……まだ動ける!」


まともに動ける状態じゃない。

腕が震えているし、呼吸も荒い。

それでも戦意を失っていないのが、不思議に思えるほどだ。


セリフィアが静かに言う。


「あの方々は強いですね……違う意味での強さですが。」


詩乃も続ける。


「熟練者であっても、普通の探索者は『普通の人間』です。

あなたが助けに入れば、彼らの経験も誇りも奪ってしまいます」


俺は、自然と拳を握っていた。


彼らを『弱い』と思ってしまっていた自分に憤りを覚える。


必死に戦っているのだ。

恐怖に震え、仲間を守り、それでも乗り越え、前に進もうとしている。

その姿は、俺には真似できない『強さ』のように思えた。


「……すごいな」


思わず、そう呟いていた。

詩乃が微笑む。


「ええ。普通の探索者は、普通の人間ですが、ここまで戦うのです。」


俺は、自分がどれほど『普通ではないか』を、また一つ思い知らされた。


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