第6話 いや、お前。ダメージエフェクトて(笑)
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いやいや、ダメージエフェクトってなんやねん!
「えぇぇ……」
「あ、すみません。」
戸惑いが言葉になって漏れ出てしまい、その言葉を拾ったオッサンが少し申し訳なさそうな顔で謝ってきた。
どうやら今しがたのダメージエフェクト発生源である砂モグラが死ぬところを見たくなかったと思われたようだ。
「あ、いや違うんです。すみません。ちょっと、自分の中で変なことが起きてたもんで!」
オッサンが『?』と分かり易い表情をしながら、首を傾げている。
「あの……今、なんか数字が見えたりとかしませんでした?」
旅の恥はかき捨て。どうせこの場限りの関係なので思い切って確認をしてみる。
もちろん人の縁は、どこで繋がるか分からないので礼節は忘れずに。
「数字……ですか? いや、ちょっと分かんないですね。」
オッサンが『何言ってんだコイツ?』と分かり易い表情で答え、そして『関わらん方がええかも』と思い始めただろうことが、言葉を聞かなくても分かる。
俺が突然意味不明な事を言い出したんだもんな。分かる分かる。
「あっはっは。すみません突然変なこと言ってしまって。どうもお邪魔しました。」
「あぁ、いえいえ。どうもー」
お互いに内心ホっとしながら、つくり笑顔で場を離れる。
もしかすると、俺も数字が見えた気がしただけ、幻覚だったかもしれない。
もしダメージエフェクトであるとするならば、自分でモンスターを攻撃すれば『見える』のか『見えない』のかは判断できる。
ここは一つ、対策として持ってきた虫取り網で砂モグラを捕まえて攻撃してみるべきかもしれない。
そんなことを考えながら歩いていると、部活動中の中学生達と、その引率と思わしき担任の先生たちの姿が目に入る。
「ん? んん~……??」
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担任の先生の近くにあるクーラーボックスからダメージエフェクトが出ている。
しかも約10秒ごと、継続的に。
もしかしなくても、あのクーラーボックスに貝殻バニーが入ってるのでは?
コドモ怖い怖いなので近づく気はまるでなかったのだけれど、担任の先生が男。しかも子供たちは今現在、走って貝殻バニーを追いかけていて距離がある。
聞くなら今しかない!
不自然にならないよう、話の組み立てをザっと考えて声をかける。
「あのー。すみません。」
「あ、はい?」
「学校の引率の先生とお見受けしたのですが…私、今日初めて、こちらのダンジョンに伺いまして。少し貝殻バニーについて質問させていただけませんでしょうか?」
「貝殻バニーについて、ですか?」
「ええ。ネットで、部活動で学生が集めて『担任の先生が処理する』という情報を見たことがありまして、実際はどんな感じで退治するんだろうと思いまして。単純な興味なんですが……お邪魔してしまって申し訳ないです。」
可能な限りの申し訳なさそうな表情を作りつつ、目線をチラっとクーラーボックスに向けると、ダメージエフェクトは消えていた。
「あぁ、退治……という程のこともしていないのですが、こんな感じですよ。」
引率の先生がクーラーボックスを開くと、そこには4匹程の貝殻バニーが水の中に沈んでいる。
「水? ですか?」
「ええ。貝殻バニーは海水の中に潜る事はできるみたいですが、真水とかだとダメみたいなんですよ。」
「は~……なるほど。海水魚と淡水魚みたいなアレですか?」
「えぇ。海水と淡水の浸透圧の差ってヤツですね」
先生らしい、具体的な回答に思わず感心する。
人間で例えるなら、毒の継続ダメージを受け続けていようなものだから、ダメージエフェクトが出ていたのか。
「は~……なるほど~。」
「せんせー」
やっべ。子供が戻ってくっぞ。逃げろ!
「あ、すみません。勉強になりました。ありがとうございます。」
「いえいえ。」
一礼して、さっさと場を離れると、入れ替わるように虫取り網に貝殻バニーを入れた子供が戻ってきて、ちょうど開いていたクーラーボックスにポイっと入れて去ってゆく。
新たに貝殻バニーが投入されたクーラーボックスの様子を見ていると、
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やはり2ダメージのエフェクトが見えた。
どうやら俺はダメージエフェクトが見えるらしい。
「ふむ。」
少し考えてみる。
いや『ダメージエフェクトが見える』ってなによ? なんなのよ?
思い当たる節は当然ある。
洞窟ダンジョンでの光の流入だ。目に違和感が出るようになった原因のアレ。
「……………まぁ、見えるモノは仕方ないな。うん。」
オッサンともなれば図太くもなるものだ。
見える物は見えるのだから仕方ない。
大事なことは、恐らく俺にしか見えていないという事。そこを理解しておくべきだろう。
考えようによっては、俺だけが身につけている特殊能力じゃないか。
一度は患ってしまう中二病患者の憧れみたいな能力とも言える。ある意味、洞窟ダンジョンに感謝して然るべきかもしれない。
「よっしゃ。いっちょ確認してみよっと♪」
少しウキウキとした気分になりつつ、虫取り網と、愛用しているツルハシは砂浜には合わないので、代わりに持ってきたピッケルを握りなおす。
元より砂モグラを狩るつもりで持ってきたのだ、存分に活躍すべし!
程なく捕まえた砂モグラ。
「へっへっへ……。俺の攻撃力はどんなもんじゃろかいな。しゃおらっ!」
俺のピッケルによる、かいしんのいちげき!
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