第4話 異常を感じたなら病院へ!
ダンジョンから逃げ帰り、家に帰って落ち着く。
改めて自分の状態を確認してみる。
体調に変化はない。
痛みもない。
身体は……軽い気がしないでもない。
時々、目の端でなにか光が動いて見えるような……ええええ?? なにそれ怖い。
不安で落ち着かない気持ちからとりあえず、ナベ・スー・オノの友人3人に起きたことを報告すべく、グループチャットに体験談を打ち込む。と、それぞれのタイミングで同じ反応が返ってきた。
「病院行け」×3
ですよね。
オッサン達の考えることや至る結論など、似たようなもの。
身体に異常が無いかはプロの道具、プロの視点で判断してもらうのが最も確実なのだ。
それもそうかと納得し、明日、大人しく有給を取って病院に行くことにする。
プロの診断があれば安心できる。これぞアラフォーの経験値よ。
★☆彡 ★ ☆
ダンジョンが発生して以降、病院も色々と変わってきている。
ただ、日本は誰しもが高度医療を受ける事のできる国。
相変わらず高齢者の溜り場であることは変わらず、平日でもとても混雑している。
受付で「ダンジョンに行って、変なことがあったので調べたくて……」と説明すると、簡易検査を案内された。
血液検査、血圧、胸部X線、心電図、眼底検査。
ほぼ健康診断と同じような検査を受けながら『異常がないといいな』と思う自分と『自分の得になる異常があればいいな』とワンチャン願う自分が交互に顔を出し始めていた。
うん。俺、けっこう余裕あるな
心理的にも異常はないな。コレ。
検査の簡易結果が出るまでの待ち時間。気持ちもなんだか落ち着いてきたのでスマホでソシャゲを開いて、デイリーをこなす……が、なんだか目がチカチカし、ゲーム画面が光っているような気がしないでもない。
目だけは、どうにも疲れているのかもしれないと、スマホ画面を消し大人しく待っていると、診察室へ呼ばれた。
おじいちゃん先生が結果の映されたモニターを見ながら、口を開く。
「うーん……特に異常は見当たらないですねぇ。血液も簡易検査ですが全部正常値。」
「あ~……そうですか。少し、目に異常がないか気になったんですが大丈夫でしたか?」
お医者さんがモニターの画像を切り替え、眼底検査の写真を映し出す。
「コレが目の画像なんですけど……異常は…………うーん。敢えて言うとすれば……血管が細くなりがちでしょうかね? まぁ年齢を考えれば正常な範囲ではあるんで、問題とするほどでも……ないかなぁ。」
「あ、そうですか。」
「うん。身体的な問題は特にないですねぇ……疲れとかストレスとか、睡眠不足とか、そういったこととか、慣れない環境に遭遇しての影響が考えられるかもしれませんし、もし気になるようなら心療内科のほうも案内できますが、どうします?」
「いえ、それは大丈夫だと思います。なんか、身体に異常は無いって分かって安心できました。ありがとうございます。」
診察結果を得て一安心。
ちょっといいお値段になってしまった支払いを済ませ病院を出る。
だけど安心代を払ったおかげで帰り道は、もう肩の力が抜けていた。
『異常なし』
有難い言葉。
つまり、あの現象は『身体に問題を起こしてなかった』のだ。
これが分かっただけで本当に安心できた。
しかし……光が入ってきたという認識は変わらない。
妄想や幻覚だった可能性もワンチャンある。だが、体験したことだけは事実。
あの光は本当になんだったんだろうか。
唯一、今も感じられる変化。実感している変化は――スマホを取り出し、消していたソシャゲの画面を見つめる。
「やっぱり、見え方が違うんだよなぁ。」
キャラクターやアイテムなど、浮かび上がって見えるような気がする。
だが、逆に言えば今のところ起きた変化はそれだけしかない。お医者さんのお墨付きだ。
「ま、なるようにしかならんわな。日常生活に支障が無くて良かった良かった。」
ダンジョンで怖い思いをしたオッサンは、日常に戻ってゆくのだった。




