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第22話 そうだ、田舎に行こう

俺は結局、退職することになった。


勤めていた会社はブラック企業ではなかったけれど、サバティカル休暇がある程、先進的な会社でもなかった。


そもそも『サバティカル休暇』ってなんだよ。

長期休暇を調べなかったら俺は知らなかったよ、こんな休暇。

自己啓発とかリフレッシュ目的の長期休暇制度って……ほんとなんなん?


こうなれば、もう退職一択。フル有給消化に向けて動くのみ。


会社に完全にケリがつくまで一旦ダンジョンも美少女の事も忘れて過ごす。

退職出来たら失業保険のこととかも忘れちゃいけないし意外とやることは多いのだ。


そう。浮かれるのは、まだだ、まだはやい。


我慢した日が長ければ長い程、美少女たちと会えた時に嬉しいはず。


さて、法律では退職を2週間前に伝えることで退職可能になるが、俺のように会社の環境が悪くない場合、感情的にそこまでシビアになる事は難しい。

人のつきあいもあるし、あまり迷惑はかけたくない。


送別会で飲み会があるような時代ではないとはいえ、俺の少しの我慢と労力で波風が小さくなるのなら、それに越したことはない。


とはいえ、有給消化はする。絶対だ。

なにせ、まだ16日も残ってる。

休んでもおちんぎん。ほしいれす。


だから一週間。

一週間だけ本気で最後のご奉公が如く勤め上げるのだ。


残り6日しか会社に行けない。

残り5日しか会社に行けない。


こんな感じで思い込めば、ものすごく頑張れる。


『あぁ、この人と仕事するのも、後、5日しかないんだ……』と思えば大抵のことは許せるし、好意的な人であれば色々してあげたくもなる。


とはいえ、そんな会社しかない日々はつまらない。

なにせ俺には圧倒的力を持つ美少女たちとダンジョンの日々が待っているのだから!



  ★ ☆ ★ ☆彡



有休消化までにダンジョンの情報も集めていた俺が、ふと気になったのが――

通称『田舎の裏庭ダンジョン』だ。


ここは9級ダンジョン。要免許。


9級クラスは、免許保持者1名が引率すれば無免許者が3名まで入れる程度の危険度しかない。

つまり、危ない事は危ないけれど知識を持っていて、それをきちんと共有できていれば怪我のリスクは減る。

そんな気軽さのダンジョンである。


『田舎の裏庭ダンジョン』は、初夏を思わせる陽気で爽やかな気候。空気が美味しいと評判。


景観は、手入れされているのか手入れされていないのか、どっちなんだろう? と思ってしまうような、どこか見たことのある田舎の裏庭のような景観が多いらしく、長閑のどかな印象。


スマホも、ある程度の範囲で通信が入るらしい。

通信機器で外部との連絡が完全に難しくなってくるのは、だいたい6級からが多いらしく、簡単なダンジョンは通信できる方が多かった。


この『田舎の裏庭ダンジョン』で出てくるモンスターは虫系が中心。

一番気を付けるのが死マムシというマムシのような毒蛇。

他には、ヤ魔ビル、カメレオン蜂、マカマキリなど。


ヤ魔ビルは、ほぼヤマビルで、カメレオン蜂は色が変わって見つけにくい蜂。

マカマキリは20cmくらいある大きなカマキリで、誰かがシンカマキリと呼んだことが由来とかなんとか。


尚、死マムシの毒は最寄りの病院で対応可能で死ぬことは、ほぼ無い。


キモイ。コワイ。面倒。

そんなモンスターが多い。


そんなダンジョンで、いったい何に惹かれたのかといえば――それは『一攫千金』。


ここでは『まぼろしキノコ』というキノコが採れることがある。

年に2~3本しか採れないらしいが、非常に高値で取引される品。


価格の最低ラインが、なんと1本で300万円から。

過去には、なんと1本で950万円という高値がついたというから驚きだ。


そんな価値のキノコだからこそ


『政府が買い占める』

『死ぬほど美味い』

『製薬会社が血眼で探している』

『粉末がオクスリの原料になる』

『食べたら美少女になれる』

『食べたら賢者になる』


などなど、真偽の分からない噂が飛び交っている。


ただし、このダンジョンで価値があるのは、このキノコだけしかない。

モンスターたちは魔石を残す確率が極端に低く、頑張って倒しても旨味は限りなくゼロ。


故に、このダンジョンに入る人間は、キノコ1本狙いのギャンブラーが多い。

初夏の陽気を求めてレジャー感覚でくる人もいるらしいが、基本ギャンブラー。


うまく採れれば、1日で年収300万円。

その可能性に賭ける気持ちは分からないでもないが、分が悪いとしか思えない。


――が。


が、しかし。だ!


ここにセリフィアという存在が加わった場合。

彼女のスキル『魔力干渉解析マナ・インタラクト・スキャン』がある場合。

結果はどうなるだろうか?


セリフィアはダンジョンの調査もできるようなことを言っていた気がする。

で、あるならば、ノーヒントでキノコを探すのではなく


「あ。あっちにありますよ?」


ということになったりしないだろうか?


いいや! あるねっ!

ある! だって俺のセリフィアは出来るだもん!


さらに田舎の裏庭ダンジョンに行く際にはセリフィアの他にも『ミレイユ・ピースメンド』という美女キャラの召喚も考えている。


美少女ではなく美女のミレイユは戦闘終了後に成果物を増やす固有スキルを持っているのだ。

もし、彼女の力がうまくハマれば『まぼろしキノコ』の複数ゲットも夢じゃないかもしれない!


美女キャラといえばカリーナさんも気になる……けれど彼女はエチチが過ぎる――ではなく戦闘系エチチコンロだから、今はまだ金策と検証が優先! 勃っ!には、まだ早い!


幸いな事に9級ダンジョンに入るためのD9免許は、原付免許を取るくらいの難易度で発行にも1~2日とられる程度しか時間がかからないらしい。

であれば、仕事を辞めた後に取ることも難しくない。


D9免許を取って裏庭ダンジョンで、検証と金策を同時に熟す!

ふっふっふ。もう完璧プランだろコレ。


あ~、退職の日が楽しみだ!

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