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第19話 魔石! オラに力を分けてくれ!

自分が相手に対して、初対面程度の認識しかない。

だがしかし

相手が自分に対して、親しい存在と認識している。


そんな時。

おじさんは、どうするか。


「そうだね。その通りだ……君たちの言う通りだと思うよ。」


答えなど決まっている。

角を立てないよう全面的に同意するのだ。


「マスター……」

「ご主人様……」


関係性が壊れて得をすることなど、ない。


――社会人経験が四捨五入して20年ともなると、自分自身の考えを柔軟にコントロールする術も自然と身につけていたりする。


例えば取引先などに対して謝罪をする必要があった場合。

その場では心の底から申し訳なく思い、誠心誠意の謝罪を行って対応する。

だが、その場から離れてしまえば、さっき謝罪した件も忘れ『あ~腹減ったなぁメシなに食おう』とかが普通になる。


もう自身の考えやプライドなどに拘る時期は、とうに過ぎた。


なぜなら、拘ったところで、どうにもならないことが多すぎるのだ。

自分が拘った程度で変化する物事など、どうせ大したことではないと気が付いてしまう。


『まぁまぁ、それでいいじゃないか』

『なべて世はことも無し』


大きな流れは変えられない。

そこまで自分は大きな存在ではない。


こう考えると『楽』なのだ。


……まぁ、更に上の老害世代になると『楽』への固執から、変化を嫌うようになってしまう。


自分を変化させること、新しいことを覚えるのは大変だからね。

覚えれば便利で、もっと楽になるモノがあったとしても、『覚える苦行』が『今の楽』に勝てなくなるのだ。


何事に対してもアップデートできず、昔のやり方・考え方でしか行動できなくなるのは、そういうことが理由だと思っている。


俺は、老害にはなりたくない。

常に柔軟に新しい事を受け入れ。

そして、その変化を楽しんでいきたい。


――と、いうことで。


俺は彼女たちの考え。

新しい変化をしっかりと受け入れるのである。


そう。俺は、彼女たちと深い絆で結ばれている。

そして、とっても親しい間柄なのだ。


美少女たちからの信頼。

ぐふふ、おいしいれす。


美少女たちとの深い絆(仮)を感じつつ、ふと思い出す。


そういえば、個別のキャラクターエピソードがレベルキャップ解放で見れるようになるんだった。

多分、このエピソードこそが絆の源泉たりうるはず。


これからは召喚する前にキャラクターエピソードを見ておくことにしよう。

彼女たちとの深い絆は、しっかりとした準備から始まるのだ。


……ぶっちゃけ、えっちなエピソードもある。

つまり、そういうエピソードのとは、そういうことになる。

そういうことになるのだ! 夢が広がるなぁオイっ!


「レベルとレベルキャップ解放について分かりましたので、話をマスターのレベル上げに戻しましょう。」

「あ、あ。はい!」


セリフィアとカグヤのエピソードを見た覚えがないか、記憶の引き出しをまさぐり始めていたのを中断し、現実に引き戻される。


「私もカグヤも強化アイテムの使用方法に見当がつきません……が、召喚して使えるかを試してみるのが良いのではないでしょうか?」

「そうですね。わたくしも、そう思います。」

「だねっ! じゃあ、各属性の魔石を召喚してみるか。」


そうだった。

俺のザコステータス改善の為のレベル上げ方法の検討をしていたんだった。

これも重要。大事なこと。


早速、小サイズの魔石をいくつも召喚し実験を始める。


「召喚したはいいけど……どうしよう」

「とりあえず『触ってみる』でしょうか。」


カットされた宝石のような魔石を触ってみるが、やはり『石』。

撫でたり、握ったり、叩いたりしてみる。


「うーん……特に変化なし、か。

んじゃ、次は頭にでも乗せてみるか」

「……ご主人様。かわいいです。」


「ふふ。私は魔石に魔力干渉解析マナ・インタラクト・スキャンをかけて情報を調べてみますので、その調子で色々試してみてくださいね。」


セリフィアがスキルで魔石を調べ始めたので、カグヤと思いつくまま試してみる。


「頭がダメなら胸に当ててみるか……心臓とかあたりに抱える感じで。」

「……特に変わりないですね。」

「じゃあ…………食べてみるとか?」

「それはお体に障りそうです……セリフィアさんの解析を待ってからの方が良いかと。」

「それもそうだね。」


うーん。完全に石なんだよなぁ……いや、でもファンタジー素材って事を忘れてはいけない。


「おい! 魔石! オラに力を分けてくれ!」

「……ご主人様。お願いするには、本気さが足りなかったのではありませんか?

真剣にやっているか、不真面目にやっているかは伝わってしまいますよ。」


「魔石ぃっ! 頼む! 俺に力を! 力をくれぇぇっ! よこせぇぇっ! お前の力をぉ!!」

「……切実さは伝わってきました。私も祈ってみましょう。

魔石さん……どうかお願いします。ご主人様にお力をお貸しください。」


しばらく願ってみたが、俺もカグヤも諦めた。

これは石だわ。


「スキャン完了しました……魔力波形も安定し、属性反応も、火・風など、それぞれに固有の振動数を確認できました。魔力密度も中程度、魔力を保有し存在できる物質としては、非常に高密度の魔力があり、外部刺激による影響も受けそうですが――」


彼女の眉が、わずかに動く。


「……奇妙ですね。魔石の魔力は、私達には流入しそうな性質を持っています。ですが、マスターに対しては……魔力が反転。遮断されています。」

「遮断……ね。」


「『魔石がマスターを拒絶している』こう言った方がイメージしやすいかもしれません。

現状、マスターが魔石を使用することは難しそうに思えます。」

「そっかぁ……使用が難しいかぁ……」


「ただし、あくまでも『現状』です。

この世界に適合した魔石などができる可能性もありますので、地道に研究をしていくのが良いと思います。」


セリフィアは冷静で優しい。

カグヤは静かで温かい。


俺は、例え魔石に拒絶されているとしても、彼女たちには受け入れられている。

であれば、なにも落ち込むことはないな。


「まぁ、しゃーないな。色んな情報が確認できて上出来上出来!」

「前向きで素晴らしいです。ご主人様。」


うーん。やっぱりキャラクターエピソード見ておくの、大事な気がする。

絶世の美少女っぷりに、どうしても『絆の深い相手なら、ハグやキスくらいできたりするのでは?』とか不純なことが頭をよぎっちゃう。


また思考が横道に逸れ始めるが、セリフィアが小さく手を挙げているのが目に入った。


「はい、セリフィアさん。どうしました?」


先生やコーチのように指名してみる。


「レベルの件は一旦、保留にして……根本についてお話してもよろしいでしょうか?」

「根本? うん。どうぞ、むしろお願いします。」


「マスターがレベルなどを気になさるのは『金策』の為ですよね。」

「はい。」


「そして『金策』は、現在プレイしているゲームを買い自分の物にする為でしたよね。」

「はい。そうです。」


「ここで、そもそもの話になるのですが――

『マスターがダンジョンでプレイしているゲーム』と『いつもプレイしているゲーム』は同じゲームなのでしょうか?」

「…………ふむ?」


「違うモノである可能性はありませんか?」

「……なるほど。」


盲点だった。

だが、これは確かに。違うかもしれない可能性はある。


そもそもダンジョンは、スマホの通信が活きている環境なのだろうか?

もしこのダンジョンに通信が届かなくて、それでも問題なくプレイできているとしたら、それはもう別物の可能性が出てくる。


それ以外でも些細な点だが、ダンジョン内では通常のゲームにはない『召喚ボタン』が存在しているのに、ダンジョンから出るとそれが消えている。

ゲームのUI――ユーザーインターフェースなんて、そんなに頻繁に変更される物ではない。


「確かに違う可能性がある……そして通信が届かないダンジョンと確認されている所で起動すれば、ダンジョン内で起動できる別物である可能性が高くなる。」


「はい。その別物こそが『マスターの能力』といえるかもしれません。

その場合、ダンジョン外でゲームがプレイ出来なくなったとしても、ダンジョン内ではプレイを継続できるかもしれません。」

「なるほど……なるほどな!」


「あと、余談ですが――マスターのプレイしているゲームを買うことになった場合ですが、突然、即日に終了されるのでなければ、終了が告知されてから初めて購入の打診をすべきかと。

『いま使っている物を売ってください』よりも『いらない物を買ってあげる』方が安く買えますので。」

「うん! それもまったくもってその通り!」


サービス終了を恐れ、気が焦って行動をしてしまっていた。

召喚して喜び、失敗と分かって落ち込んだりしてしまっていたけれど、まだ焦る必要は無かった。

そして、そもそも焦る必要がない可能性もでてきた。


「は~……そっかぁ。なんか安心した。」


肩の力が抜けていく。


気が付けば、もう夜もだいぶ更けた時間。

明日もあるし、今日は家に帰って休んでもいいかもしれない。


「ですので、マスターは特別、焦らずに、じっくりと実験や検証を行える体制作りに取り組んでみるのが良いのではないでしょうか。」

「うん。本当にそうだね。ありがとうセフィリア。」


「いえ。お役に立てて幸いです。

マスターは焦る必要はありません。

なので――魔石を食べようとしないでくださいね。」


「あ、はい。」


――聞こえてたのね。セフィリアさん。

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