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第17話 ステータス(笑)オープン(笑)


「こんばんは。あら……ご主人様、今日も頑張られましたね。

その疲れ、少しだけ……わたくしに預けていただけますか?」


「よろこんで!」


俺の条件反射よろこんでに、セリフィアの視線がピクリと動いた気配がする。


だが――悲しいかな。

いかに絶世の美少女からの注目であろうとも、新たな絶世の美少女の出現の前には、その美少女力も霞んでしまう。


なぜならば、新たに現れた絶世の美少女には『絶世の美少女』という要素に加えて『巫女コスプレ』がプラスされているからだ!

そう! コスプレは強いのだ! さらにそのコスプレ内容が『巫女』ときたもんだ。


――巫女は日本人に馴染みが深すぎる。

神聖感が、こう、ありがたくて、それ以上に背徳感なアレが、アレで、アレだから…………ふぅ。


カグヤを視姦することに内心で一区切りをつけ、セリフィアを見る。

すると、俺を探るような視線が痛いほどに突き刺さってくる。


……いや、それでいうとセリフィアの研究者コスも強いよ。

白衣が色々アレで、先生な感じとか、女医感とかが、アレで、アレだから。うん。


とりあえずセリフィアに『あなたも素敵です』と笑顔を返す。

笑顔で誤魔化しておくと『もう、しょうがないマスターですね』と言いたげな表情。

なんかごめんね。こんなマスターで。


「あらあら、仲が良さそうで、なによりですね。」


柔らかく優しい雰囲気のカグヤの声。

改めてカグヤに目を向けると、ニコニコと目を細めている。


その口調と雰囲気から、もしかして『京都人の言い回し』の可能性もあるのでは? と勘ぐってしまうが、カグヤの表情を見る限り『よー、そうな人前で』とか『私をさしおいて』とか、そんな裏の意図はまったく無さそうだった。


純粋に仲が良いことを喜んでいるように見え、裏表のない博愛主義のような雰囲気。


そんな風にカグヤについて理解を深めていると、当の本人はキョロキョロとあたりを軽く見回して首を傾げる。


「わたくしの力が必要なのですよね……でも敵らしい敵もいないようで。

う~ん……どうしたら良いのでしょう?」

「マスターに貴方を呼び出してもらった理由については、私から情報を共有します。

マスターのスキャン結果を送りますね。」


セリフィアが眼鏡をクイっと動かすと、カグヤがピクリと反応する。


……恐らくセリフィアは、俺に化石カニを『マナ・インタラクト・スキャン』して得た情報を共有してくれた時のように、俺のスキャン情報をカグヤに『こいつ直接脳内にっ……!』したんだろう。


ん?


……俺のスキャン情報。

……俺には共有してくれないの? ねぇ?



「…………えっ!? えぇっ??

 ……これは……にわかには信じがたいですが、懸念されることは、よく分かりました。」


「はい。そういうことです。カグヤはスキルの発動準備に入ってください。」

「えぇ、はい。今すぐに。」


「いや、どういうこと?」


セリフィアとカグヤが理解を深める一方、完全に置いてけぼりにされたので思わず突っ込む。


カグヤは少し困ったような顔をしてセリフィアを見る。

そしてセリフィアは『私に任せておけ』とばかりに口を開いた。


「マスター。不安を感じさせてしまい申し訳ないです……色々とお願いした理由について、お話しますね。」

「あ、説明してくれる感じ? 助かる。」


セリフィアと俺の様子を見て、カグヤは目を閉じて回復スキル発動の為の詠唱に入った。

淡い光を漂わせながら、髪先をフワフワ浮遊させている。


カグヤの神秘的な様子を見ていたくもなるが、セリフィアが普通に説明を始めそうなので、意識をセリフィアへ向けざるをえない。


「マスターにポーションと万能薬を飲んでいただき、カグヤに『月祈げっき癒光ゆこう』で回復してもらうのは、マスターを()()において()()の状態にする為です。

そしてその状態で再度スキャンを……と思いまして。」

「ふむ……?」


セリフィアの顔が少し濁り、思い悩み始め、絞り出すように言葉を紡ぐ。


「体調はポーションと万能薬でしたがカグヤのスキルは、えっと……マスターをスキャンした結果で……その。

あの、私たちの一般的な基準で見ると……やや、こう……控えめな……?」

「ん?」


「その……えっと……あまりにも、ひんじゃ――いえ、えっと。まだ、そう。伸びしろが……とても伸びしろがある! といいますか!」

「……ふむ?」


「マスターが戦闘を行うのは……えっと……その、よわ――いえ……あの、決してザコとかではなくてですね」

「ザコ?」

「い、いえ! 間違えました! 言葉の綾です! そんなことは決して!

……ただ、ちょっと……こう……初期値寄りというか……初期値より、かなり下といいますか! いえ、少しだけ……こう、守ってあげたくなる数値というか……!」


オブラートに包みに包んで、いっさい包めていない。


ただ、俺を傷つけないように努力を尽くしていてくれることだけは伝わってくるので、そこは、とてもありがたい。


察するに、俺のステータスが有り得ない程に貧弱と言いたいのだろう。


「あ~……うん。なんかセリフィアが言わんとすることは分かったよ。

えっと、なんだ。滅茶苦茶気を使ってくれてありがとう。そして気を使わせてゴメンね。」

「いえ、あの、その……ごめんなさい!」


セリフィアが90度腰を折って、勢いよく頭を下げた。


いや、本当に変に気を使わなくても大丈夫なんだけどな。

そもそも、おじさんは別に美少女にザコ扱いされるのは嫌いじゃないもんだぞ? そこんとこ見くびらないでほしい。


要は、俺のステータスがあまりにも貧弱すぎて、セリフィアが「瀕死では?」と心配してくれたわけだ。


ついでに、こんな脆弱すぎるステータスは弱体化している可能性もあるとデバフ解除も試みてくれている。こういうことだろう。


ステータスか。

ステータスなぁ。


……確かにキャラにはステータスがあった。

まさかの本当に、自分自身のステータスオープンされる日が来るとは思ってなかった。


ステータス値の存在が気になり、ソシャゲを起動。

とりあえず、編成しているセリフィアのステータス値を確認してみる。


セリフィア・アークライト Lv.100

HP:10740

攻撃力:3402

防御力:4276

魔力:2682

神聖力:2410

すばやさ:2800


俺がステータス値を確認していると、セリフィアが隣に寄ってきて、そっと覗き込んだ。


「このセリフィアのステータスと比べて、俺のステータスが滅茶苦茶低い数値で心配になっちゃって色々した――って感じであってる?」

「はい……あまりにも見た事のなかった数値でしたので……」


「ふふ。そうなると、もう逆に俺がどんな数値だったか興味津々だわ。数値を教えてもらえたりしない?」

「あ、はい! お伝えいたしますが……その――」


「大丈夫大丈夫! 俺がセリフィア達と比べて信じられない程弱いってのは、最初にルミナを見て十分にわかってるから。どれくらいの差があるのかが数値で把握できるのは助かるし、俺の現状をしっかり知っておきたいから教えてくれると嬉しいな。」

「分かりました!」


覚悟を決めたように、フンスと息巻くセリフィア。

すぐに、俺のステータス情報が『こいつ直接脳内にっ……!』される。


ダイスケ・ナカムラ Lv.1

HP:120

攻撃力:22

防御力:18

魔力:17

神聖力:15

すばやさ:9


「あ~……うん。」


うん。なるほど。

脳内に送られてきた俺の情報と、セリフィアのステータスを比較する。


HP:120 と 10740

攻撃力:22 と 3402

防御力:18 と 4276

魔力:17 と 2682

神聖力:15 と 2410

すばやさ:9 と 2800


比較し納得。


これはもう、セリフィアが俺を『瀕死』と勘違いしても仕方ない。

真面目に検証して仕方ない。

仲間に助けを求めても仕方ない。


限りなくザコとしか感じない数字の並びだ。

こんなのが主人とは……


ただ、俺的には『俺にレベルが存在している』って方が、衝撃が大きかった。

レベルがあるってことは伸ばせる可能性があるって事じゃないか。

セリフィアたちのレベルには程遠くても、人間の中では強くなれるかもしれない――


「『月祈げっき癒光ゆこう』――わたくしのご主人様を癒して――」


カグヤが祈るように言葉を発すると、月光のような柔らかい輝きが、俺の身体を包み込み始める。


冷たくも熱くもない、ただただ優しい光。

光が消えていくと、疲れや長年付き合っていた痛みなんかも一緒に消えていくのを感じる。


「これは……登山の帰り道に温泉に入った時みたいな気分だ……

あ~、めっちゃ癒されるー……超きもちいい……」


頭の中で渦巻いていた思考まで癒され、全てが溶けて流れていく。

この回復、1日1回、寝る前にかけてくれないかなぁ……最高だわ。


「『魔力干渉解析マナ・インタラクト・スキャン』――

……魔力の流れは正常。身体は万全の状態になっています……ですが、ステータスに変化はありませんでした。」


8時間ぐっすり熟睡した後のように、思考がこれまでにないほどクリアに感じる。

俺のステータスは、さっき教えてくれた数値で確定。


いや、ほんと面白いことになってるな。

これまでの人生で、ここまでワクワクしてきたことなんて、なかった。


「うん。セリフィア。ありがとうね。

俺のステータスは、これが正常値なんだよ。そして、この世界の一般人はこんな数値が普通だと思う。

一番最初にルミナの攻撃ダメージ見て、どうしようもない差がある事は分かっていたし、むしろ納得できた。客観的に判断できる情報をくれてありがとう。」

「マスター……」


またも、ウルウルと涙目になりはじめるセリフィア。

研究者タイプなのに感情の豊かな子だこと。見ていて飽きない。


――そういえば水着ルミナって、どんなステータスなんだっけか?


彼女は、俺の持つキャラクターの中で、現時点での最強。

2段階の限界突破をして最大まで強化してあるキャラだけど、細かい数字なんて覚えていない。


なので、ついこの間、召喚したルミナ・ノワール水着バージョンのステータスを、ついでにチェックする。


ルミナ・ノワール 水着バージョン Lv.100

HP:34775

攻撃力:34608

防御力:28520

魔力:24668

神聖力:24800

すばやさ:26305


「フハっ!」


あまりに桁違いの数字すぎて笑ってしまう。

ちょっと強すぎる。


強化の度合に差があり過ぎる気がしたので、比較的新しいキャラクターだけど2段階の限界突破をしていないキャラクターのステータスも確認してみる。


ミリィ・ルルフィア パジャマバージョン Lv.100

HP:13543

攻撃力:11715

防御力:7417

魔力:3732

神聖力: 5728

すばやさ:6598


あ~……うん。


やっぱり新しいキャラになればなるほど、初期のキャラよりステータスは底上げされている。

だけど、希少アイテムを使って行う2段階の限界突破の影響がデカイな。


思い返してみれば、限界突破は、突破する毎にステータスが1000ずつ底上げされていた。

1段階目の限界突破は希少アイテム使って、それを10回繰り返す苦行だからな……ほんと入手個数が渋いんだよ、希少アイテムの。イベント毎に少量しか手に入らないしさぁ……



――もし、俺にも、この『限界突破』が適用されれば、ワンチャン人外に飛び込める可能性があるのかもしれない。


いや、それ以前に、俺だけがレベルアップできるかもしれない状況ってのも、ちょっと面白いな。

これは夢が広がるぜ!

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― 新着の感想 ―
ごめんよ、セリフィア。 白衣補正は屋内(室内)限定なんだ…… 対して巫女服は内外所構わず有効なんだ…… ルミナ「それって単にあんたが巫女スキーなだけでは?」 くま「そうですがなにか?」 これは! …
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