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第16話 思う存分スキャンして!


好きが……過ぎない?

美少女が……俺を好き過ぎではないかい?


セリフィアを見つめれば、まっすぐ俺を見返し、フンスフンスと鼻息も荒い。

そうか。そんなに俺の事を知りたいのか……



……なんでや?


セリフィアから剛速球で好意をぶつけられ、あまりの好意に俺に宇宙ネコが降臨した。

思考がふわっと浮かび、どこかへ飛んでゆき、唐突に友人ナベとの会話が脳裏をよぎる。


『召喚できるのが美女や美少女だとしたら……《《どこまで》》できるか……とかも確認したくならんでもない。』

『うむ……それは超大事な確認事項だな。』


そうだ。

最重要項目があった。


とっても大事な確認事項が、俺の中に眠っていたではないか。


うん……アレだよ。

ゲームキャラクターが現実に召喚できて、『触れる』ことができるのは既に確認済み。

彼女たちはダンジョン内に限って、実体を持つ。


さて、実体を持つ召喚キャラは、果たして人間と同じなのだろうか?

そして、もし人間を模しているとしたら、どこまでリアルに再現されているのだろうか?


これは純粋なる学術的な興味であり、人類が調査すべき内容である。

宇宙ネコが綺麗に昇天し、瞬く間に自分を取り戻す。


目の前には興奮する美少女の姿。

改めてセリフィアの全身を確認する。


いや、もう可愛いのは当然として、身体つきが色々と性的が過ぎるんだが?

なんで白衣の下の着衣が制服みたいなん?

なんで制服にも関わらず乳袋ができてんの? どんな制服の構造や。

ついでに制服なのにミニスカートってなんなんや?

足もキレイやなぁ……えっちだ。


うん……もう諦めよう。

学術的とか格好つけるの、うん無理。


単純に美少女に好かれて、俺も好きならいいじゃない。

性的な目で見てしまっても、いいじゃないか。


俺は独身やぞ?

むしろ、そういったことを考えない方が、逆に不健全まであるのではなかろうか?

健康な男が魅力的な女性に好意をよせられたら、そりゃあ性を意識しない方が無理があるわ。

アラフォーは性欲が枯れるだぁ?

そんなもん普通にあるさ。単純に無いフリする技や興味を逸らす術を身につけただけだ。

社会を無事に生き抜くためだけになぁ!


「……マスター?」


思考に集中し過ぎ、セリフィアの声にようやく気づく。


不安そうな顔。

スキャンをかけさせてくれないのでは?

変なお願いをしてしまったのでは?

そんなことを考えているのだろう。


ごめんな……おじさん。まったく違うこと考えちゃってたわ。

美少女からの好意って、まったく経験ないんだもの。トリップしちゃってごめんね。



……返答を待つ目の前の美少女のセリフィア。


どうにもセリフィアは、俺と親しい関係を築いていると捉えているようだが、俺的には、さっき会ったばかりの初対面の美少女としか思えていない。


そんなセリフィアに対して、率直に今の俺の思考をぶつけるのは、理性が邪魔をして難しい。


どれだけオブラートに包もうが『すけべしようや』を伝えるのは、いくらおじさんでもハードルが高すぎる。



――そんな時、稲妻が脳裏を走るが如く閃いた。



「セリフィア……俺に思う存分スキャンを掛けてくれっ!」

「は、はいっ!」


「俺もセリフィアに俺の事を全て知ってほしい!」

「ま、マスタぁーっ!」


俺の言葉に歓喜し、目じりに少し涙を浮かべるセリフィア。


そう。セリフィアよ。

俺のことを知ってくれ――


むしろ今、俺が考えていること全て見通してくれたまえ!

そして『すけべしようや』の心まで全て察してください!

お願いしますっ!


覚悟が決まった俺は、静かにセリフィアを見つめ。待つ。


そんな俺の様子に、セリフィアは目元を軽く指で拭い、そして花が咲いたような笑顔に変わった。


「それではマスター! いきます!」

「あぁっ! こいっっ!」

魔力干渉解析マナ・インタラクト・スキャン!――」


セリフィアが指先を掲げ、空間に浮かび上がった白銀の光が俺に収束する。

俺は、そっと目を閉じ『全て伝われ』と願いながら光を受け入れた――


伝われ――この思い。


「……スキャン完了です。」


体感で20秒もしないうちに、セリフィアの声が聞こえ、ゆっくりと目を開く。

そこには真剣な目で、俺を見つめるセリフィアの姿があった。


「マスター……」

「…………うん。」


…………もしかしなくても…………本当に伝わっちゃった?


えっちなことできる?

できるなら、してもいい?


そんな感じで思ってたこと……伝わっちゃった?


セリフィアの真剣な顔に息をのむ。

美少女の真面目な表情が変わらず、じっと見つめてくる。

その目に凄みを感じ、直視できずに、そっと目を逸らす。


するとセリフィアが俺に近づき、がっしりと両手で俺の肩を掴んだ。


すみませんでした!

変なこと考えてごめんなさい!

セクハラで訴えないでっ! 社会的に死ぬぅっ!


「ごめんなさいっ!」


勝手に俺の口は謝っていた。


恐る恐るセリフィアに目を向けると、俺の謝罪などまるで聞こえていないよう。

セリフィアが、静かに口をひらく。


「……今すぐポーションを召喚して飲んで――いえ、ポーションだけじゃなく万能薬も飲んでください。」

「…………は?」


……いったい何を言ってるんだねチミは?


「いえ、それだけじゃダメ……不安が残る。回復魔法と浄化も……

そう。カグヤだわ。カグヤ・ミカヅキも召喚してくださいマスター。」

「……んん?」


ポーション?

万能薬?

回復魔法に浄化?

そして、なんだか焦り気味のセリフィア――


――はっはーん。分かったぞ。


「俺……死ぬの?」


言葉と態度から、なんとなく連想できる。

とりあえず俺がなにかしら良くない状態である事だけは分かった。


「とんでもない! そんなことはさせませんっ!」


怒ったように叫んだセリフィアに、思わず面食らう。


俺の反応に、セリフィアは自分を取り戻したように少し息を吐き、改めてゆっくりと口を開いた。


「スキャンした結果……マスターの魔力や体調が、少し乱れていることが分かりました。

特に、胃と肝臓周辺。そして大腸に気になる乱れがありました。」


「お、おう……」


「それだけではなく、その他にも眼や肩、腰などにも疲労が溜まっていましたし……身体能力や生命力など、マスターの現状を知って、つい先走ってしまいました。申し訳ございません。」


「そ、そっか……心配してくれてありがとう。」


美少女が心配してくれたことが、純粋に嬉しい。

ただ、この間病院で異常なしって言われたばっかりなんだよな……


「でもさ、俺……ついこの間、病院で検査受けてさ、正常値って言われて――」

「マスターが……私の能力より、病院のことを信用――」


セリフィアの表情が、一瞬で、これまでに見たことがないほど絶望的なものへと変わった。


「――正常値って言われてた気がするけど! 所詮! ああ、所詮、病院が言うことだからな! 俺が信じるセリフィアの! 超優秀で、すっごいスキルを使えるセリフィアの言うことを信じないワケがないよな!

なんだっけ! ポーションを召喚すればいいんだっけぇ!!??」


「ますたぁ……ええ。ポーションと万能薬。あとカグヤを召喚してください。」


すぐに嬉しそうな表情へと変わるセリフィア。


美少女と病院。どっちを信じるかなんて、そんなもん決まってるよなぁっ!

美少女を泣かすくらいなら、俺はつまらない事は全部忘れて、美少女のいうことをなんでも聞くさ!


すぐにソシャゲを起動し、アイテムからポーションと万能薬を召喚する。


召喚されたポーションは、掌にすっぽり収まるサイズの小瓶。

透明なガラス容器の中に、鮮やかな紅色の液体が満ちていて、光にかざすと、まるで生きているかのように輝いた。

容器には金属製の封印リングが巻かれており、謎の刻印が入っていて見た目がかっこいい。


万能薬は小さなケースに入っているようで、ケースの上面に虹色に輝く謎の模様が浮かび、開けると、淡く緑色に発光している錠剤が2粒入っている。


……完全にどっちも毒に見える。

けど…………そっか。俺はコレを飲むんだなぁ。


チラリとセリフィアを横目で見ると『信じてくれて嬉しいです』的な笑顔が見えた。


俺は、ただセリフィアに微笑みを向ける。

そして発光する錠剤を紅色の液体で流しこんだ。


「……うわぁ……なんでコレ、どっちも微妙にあったかいのぉ……」


錠剤の舌触りは、まるで『石』。

ポーションの舌触りは『トマトジュース』だった。


味は不味くはない。だけど、決して美味しくもない。

世界一まずい薬草酒で有名な酒の風味を混ぜたフルーツトマトのジュースとでも言おうか、飲めないことは無いけど、不可思議な味わい。

温かくさえなければ、ワンチャン美味しいと思った可能性が少しだけある。


酸っぱくもないのに、梅干を食べた顔になりながらセリフィアを見ると、彼女は俺をじっと観察していた。


――効果は瞬時に出ているんだろうけれど、身体の変化より味の方しか気にならない。


「……次は、カグヤを召喚だっけ?」

「はい。回復と浄化スキルを持つカグヤをお願いします。」


セリフィアの言葉に従って、キャラクター画面を呼び出し、名前でソートをかける。


カグヤ・ミカヅキ ハロウィーン衣装バージョン

カグヤ・ミカヅキ クリスマス衣装バージョン

カグヤ・ミカヅキ 水着バージョン

カグヤ・ミカヅキ


「あ~……そっか、衣装違いでスキル違ってたなぁ……」


衣装名が無いカグヤが一番古い初期だ。

俺が各衣裳での使用スキルを確認し始めると、セリフィアが俺の横から画面をのぞき込んできた。


「マスターは、どの衣装のカグヤが好きですか?」

「ん? まぁ、やっぱり水着だよね。うん。」


確認に意識を取られていて、つい本音を漏らしてしまう。

ヤッベ! と思いセリフィアを見る。


ムッスー! という擬音が見えそうなほどの不満顔。

美少女は、不機嫌な顔でも美少女なんだなぁ……と、妙に感心してしまう。


「私も、水着があったはずです! 次はそっちで呼んでくださいね!」

「お、おう。」


確かに初期頃からいるキャラクターは、いくつも衣装のバージョンが出ていたから、セリフィアも他の衣装があったと思う。けど、それで納得できるんか……?

今回は『賢そうに見える』でキャラを探して初期のセリフィアだっただけなんだけど――まぁ、ほな次は遠慮なく水着で召喚させていただきますとも!


……と、その前に


「セリフィアは水着も可愛いけど、今の恰好も可愛いくて好きだよ。」

「――っ! ますたぁ……」


きゅっと俺に抱き着いてくるセリフィア。


機嫌を取るつもりでリップサービスをしてみたけれど、こんな幸せが返ってくると思ってなかった。


セリフィア本当に可愛い。


また妄想が暴走してしまいそうだったので、思考をカグヤに戻す。


回復とデバフステータス解除のスキル『月祈の癒光』を持つ、初期のカグヤ・ミカヅキの編成をタップする。


白と紅を基調とした巫女装束。

月光を纏ったような儚げな黒髪の美少女の姿が現れるのだった。


「こんばんは。あら……ご主人様、今日も頑張られましたね。

その疲れ、少しだけ……わたくしに預けていただけますか?」


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― 新着の感想 ―
いいなぁ あとはダンジョンに住めれば盤石ですかね?
白衣は良いものです………(笑)
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