第129話 偽物の俺、説明放棄
「あ~……いるよ。ちゃんと。うん。」
そう言いながら、偽物の俺は少し気まずそうに頭を掻き、ゆっくりとセリフィアの方へ視線を向けた。
「うん。やっぱり、セリフィアはその姿の方が落ち着くな。」
「どういう意味でしょう?」
セリフィアが首を傾げ、偽物の俺は自嘲気味に小さく笑った。
「全部説明するさ……ただ、鷹司さんが話を聞いていいのか?
なんで居るのかとか諸々の想像はつくけど、俺、これからとんでもない爆弾落とすぞ?」
「えぇえ……」
嫌な予感しかしない。
俺がこんなことを言うとしたら、嘘はつかない。
本当に気を使っている可能性大だ。
聞いたら引き返せないまで有り得る。
「私は聞きたいです!」
目を向ければ、おめめキラキラ状態の詩乃。
これは『絶対帰りませんからね』宣言に他ならない。
前もそうだったけど詩乃はダンジョンに入ると、けっこう性格変わるんだよな。
「仲間だったらいいんだ。仲間だったらな。」
偽物の俺が、俺に問いかけるように言う。
ぶっちゃけアークオラクルの話を共有している時点で、俺もセリフィアも仲間だと思っている。
念の為、脳内スマホ操作は切り札として伏せてはいるけれど、正直打ち明けても良い気もしている。
俺に弱点があると思えている方が、詩乃も遠慮しないで色々言えるかもしれないから伝えていないって言うのもある。
「うん。大丈夫だ。俺の奥さんの一人になる人だし。」
「へぇ。」
偽物の俺が半笑いの顔。
こ憎たらしいが、甘んじて受け入れる所存。
財閥のご令嬢を何番目か分からないけど奥さんにするなんて大それたことを言っている自覚はある。
「オッケーオッケー。ほな説明始めるか……
その前に一つ擦り合わせをしておきたいから、そっちのセリフィア。
悪いんだけど、現状のダンジョンについての理解していること、推測含めて簡単に教えて。」
セリフィアが俺に視線を向けたので、一つ頷く。
「かしこまりました……ダンジョンは全ての人類に対して成長を促し、何かに備えさせています。」
「ふんふん。」
「ただし成長させる人間は、何らかの基準で選別している可能性が高いです。」
「いいね。他には?」
「この世界とは別のエネルギー……超越魔力と仮称していますが、その超越魔力を使用する者により、それぞれのダンジョンが作られ管理されています。そして、その管理者の全てを統括する存在も居ると考えています。」
「うんうん。なるほどなるほど。」
偽物の俺は、満足そうに頷いた。
その表情はどこか、答え合わせをしているようにも見える。
「ちなみにセリフィアの推測について、どう思ってる?」
偽物の俺が話を振ってきたので乗ってみる。
「まぁ俺は、めっちゃしっくりきてる。
俺もセリフィアも、その管理者っぽい存在は人類の味方だと考えてるな。」
「へぇ、その根拠は?」
「色々あるけど、まず実際に人類に都合が良いダンジョンが多すぎる。資源とか魔石とかな。
それに、ダンジョンの難易度が入る前から分かるように色分けされてるとか、どう考えても『注意しなさいよ』って警告だろ。」
「ふむ。」
「あと実際にダンジョンの攻略していって分かったこととして、1級ダンジョンでも即死系トラップがほぼなかった。
決闘場ダンジョンなんて決闘なのに、探索者が生き残ってる確率が高いし……この塔みたいに『相応しくない奴は殺す』ってのはあっても『問答無用で殺す』っていう仕掛けは無いんじゃないかな。」
セリフィアに目を向けると、同意するように頷く。
ついでに詩乃にも目を向けると、俺の言葉を考えているようだ。
「詩乃はどう思う?」
「難しいですね……力量が足りていれば、という前提が必須だと思いますが、そうかもしれません。
ただ、ダンジョンを統括している存在が居たとした場合、人類を鍛え、選定をしていると私も思っています。」
偽物の俺が、大きく頷く。
「オッケーオッケー。まぁいい線いってるよ。
じゃあとりあえず色々話すとするかいな……まずは質問もらってるし、俺のセリフィアについてから話すか。」
だが、偽物の俺が腕を組んで首を捻る。
「うーん……やっぱ説明するの難しいから……説明させた方が早いか。ちょっと待ってな。」
そう言って目を閉じる偽物の俺。
じわりと偽物の俺の輪郭や境界が歪み変化してゆく。
「えっ……」
思わず声が漏れた。
偽物の俺の姿が、どんどんと変わっていく。
セリフィアの姿へと。
だが、俺の知っている『白衣のセリフィア』ではない。
どこかの賢者とでも言った方が良さそうなローブのような服をまとい、髪型も軽く編んで横に流している。
「ふぅ、お久しぶりですね。」
「えっ……えぇ? えぇっ!?」
完全にセリフィア。
いや、セリフィアというよりは『お姉さんセリフィア』と言ったら良いのだろうか?
美少女と美女の間というか、少し大人びたような雰囲気になっている気がする。
「ちょっと待って!」
思わず両目をぎゅっと閉じて、頬を叩く。
「偽物の俺はどこいった!?」
お姉さんセリフィアに問うと、コロコロと楽しそうに笑った。
「失礼、私が『偽物の俺』でもあるんですよ。
まぁ『偽物』という言葉は、もう相応しくありませんが。」
駄目だ、混乱が止まらん。
「掻い摘んで説明しましょう。
天哭の塔で私とマスターが水晶に触れた後、こういう能力に変化したのです。
そして飛ばされた先々で、能力の意味や使い方、力の使い方を会得してきました。」
俺のセリフィアが前に出てくる。
「ちょっと待ってください! つまり、そういうことですかっ!?」
ダメだ、頭が追いつかない!
どういうことですかっ!?
「どういうことですかっ!?」
お姉さんセリフィアが、クスクス笑う。
「超越魔力の管理者は私たち。
つまり、私たちが『ラスボス』ってことですよ。」




