第122話 試練を超えてみせよ(置いてけぼり)
子を授ける……
つまり?
あれか?
養子?
俺の有望な子。持ちキャラの内の誰かを……いや、んなわきゃねぇわなっ!
詩乃が言ったのは『血筋を分けてほしい』『私が責任をもって育てる』だ?
どう考えても完全に『私とあなたの子供を作りましょう』ってことだ。
『面倒は全部こっちで見るから子種をよこせ』ってことだから、目的がセックスじゃなくて、子作りの方。
……えぇ……ある意味婚約より重くねぇか?
エロ同人みたいな汚い言葉にするなら『孕まセックスして無責任にヤリ捨てしろ』て言ってる……
……なんか『いやいやそれは無いだろう』って思うと同時に、エロ同人言葉に置き換えちゃうと……ちょっと興奮するな。
いや、確かに詩乃は美人で、そりゃあとんでもなく魅力的な女性だ。
そのお誘いに心が揺れないわけではない。
だが、無責任に父親になるとか、それは無しじゃないか? 倫理とか常識的にさぁ!
詩乃を見ると、じっと懇願するような目で俺を見ている。
やめて、なんかちょっと嬉しい気持ちが起きてきちゃう。
俺は美女にそんなお願いされた事なんてないんだよ。
つい誘惑に負けそうな気持が芽生えたので、セリフィアを見る……スンとした顔。
……そりゃそうだ。
ある意味、プロポーズした直後に浮気しようとしてる旦那を見てるんだもんな。
そりゃ、そんな顔にもなるわ。ごめんなさい。
よし、めっちゃ冷静になった。ちゃんと断ろう。
そう、エロ同人言葉の世界はセリフィアと繰り広げれば良いのだ。
せやせや。そんな誘惑に負けへんのやワイは。
「あー、詩乃……鷹司さんや、そんなことを言うものじゃあありませんよ。」
混乱が尾を引いているのか、なんだか自分でもよく分からない口調になってしまった。
「私の操を捧げさせていただけないのでしょうか……」
「んがっ、」
いや、ほんと、このお嬢様。
急に泣き出しそうな顔とか、雰囲気が一気に弱くなりすぎでしょうよ。
「ん゛ん゛っ! ……ダメですっ!」
「そんなぁー」
およよよよよ……と目元を隠す詩乃。
でも俺、ちゃんと断ったもん!
ただ……なんだろう、このめっちゃ罪悪感っ!
「ふぅ……仕方ありませんね。」
セリフィアきちゃ!
メイン盾きちゃ!
これで勝つる!
「ここは正妻である私が仕切ってあげましょう!」
おっ! セリフィアが、もう奥さんになったみたいな言い方や。
俺が先走ったけど、受け入れてくれる気持ちが分かって嬉しい。
セリフィアが俺を見て『全部分かってます。任せて』とゆっくり頷き、俺も『お願いします』と頷き返す。
「オホン……私の夫……、だーりん? ……ご主人様……おほん! マスター! 私のマスターのことは私が一番わかっているのです!」
珍しくまごついたセリフィアに思わずニッコリ。
「今、マスターはこう思っています『詩乃を抱けるなら抱きてぇな』と。」
「おほっ!?」
思いがけない言葉に動揺しセリフィアを見る。
だがセリフィアは詩乃と1対1のような雰囲気。
いや、それは確かに内心では思ってるけども! 男だもん!
「そして、私は正妻という立場が確定し、大変、大変気分が良いのです。
大げさではなく有頂天な気分なので、鷹司さんの申し出に対してメリットの方が大きいから、まぁ、それはそれでいいか? なんて気持ちがあります!」
「あら。」
「そうなの!?」
「そうですよマスター。そもそも私は、マスターは沢山の子供を作ると思っていますし、その覚悟は、とうの昔にできていますので。」
「あ~……」
…………まぁ、よくよく考えてみれば、セリフィアは他のキャラと一緒に沢山検証してるところとか見てるもんな。
そこに詩乃が一人増えるくらい……と考えると、ある意味、メリットデメリットで考えても……おかしくないか。
「……ん? あれ?
俺、もしかしなくても、他の子に手を出すの容認された? 今?」
「容認というよりも、むしろ推奨します。
私は他の子たちも仲間だと思ってますし、彼女たちにも幸せになって欲しいですから。」
…………彼女たちの幸せを考えて。
ですね。
はい。ごめんなさい。
安易に肉欲だけを考えてしまった私は、愚か者です。ごめんなさい。
他のキャラクターたち。彼女たちも生きていて、そして大事な仲間です。
彼女たちが俺を好きでいてくれるなら、幸せを考えなきゃいけないのは、本当は俺の方ですよね。
本当にごめんなさい。
かなり、自分が恥ずかしくなった。
俺が下半身中心の考えだったことを思い知らされ羞恥心に身もだえていると、またセリフィアが詩乃と向き合う。
「鷹司さん。私のいう仲間は、ただの仲間ではありません。私と同じ存在の仲間に限っています。つまり、あなたが仲間の同列にはなりえないのです。」
「はい。理解できます。」
「よろしい……とはいえ私は貴方にも好意を持っています。
そして貴方がダメだった場合、他の女が来ることも分かっています。
ただ、このまま気分にまかせて了承するのも癪……ということで一つ試練を与えましょう。」
「試練? ですか?」
「そうです試練です。私の夫の子種が欲しいというならば、我が試練を乗り越えてください。」
「おもしろい。受けて立ちましょう!」
詩乃の弱々しい雰囲気が、、一瞬で探索者のそれに変わる。
「ふっふっふ……私の試練は甘くはありませんよ……マスター!」
「はい!」
セリフィアの呼び声に、即座に現実へ引き戻される。
「彼女を召喚してください……滲みなもさんを!」
「イエスマム!」
条件反射の如く、スマホを操作し即召喚。
「あ、あ……ふひ、また、ご、ご主人様に呼んでもらえて、う、嬉しいです。ふひひ。」
なぜか、しっとりとしている猫背目隠れ美少女が現れる。
「おふ」
出現と同時に少し鳥肌が立つ。
目隠れ美少女なのに、なぜか捕食者の視線を浴びているような気分になるんだよな……
「滲……みなもさん。ですか。」
詩乃が現れた目隠れ美少女を見ながら呟く。
「あ、あ、え、あ……だれぇ……」
みなもが詩乃に気づき恐れ慄く。
いや……お前が恐れるんかい。
召喚してすぐは俺に触りたいけど触れないみたいな手の動きをしていたのに、詩乃に気づいた瞬間に、俺の後ろに隠れてくっついている。
どういうこと?
「はい。滲みなもさんです。
彼女の戦闘力は私よりも上。さらに水の能力に長けています……人間など水の塊ですからね、彼女の目が髪に隠れているのは相手のことなど見る必要も無いという自信の表れなのです。」
俺の後ろで、みなもが盛大に首を横に振っている気配がするが?
「なるほど……恐ろしい相手ですね。
財閥の娘! として、資産! と、人脈! 程度しか操れない私では、とてもとても相対するのは難しいお方です。」
財閥の娘! 資産! 人脈! の言葉を、なぜかみなもに向けて強調した気がしていて、みなもの首振りも、より激しくなった気がする。
やめてあげて……みなもは、彼女はそういうのに弱そうだから!
いや……むしろ詩乃だと『弱い』って分かってるから、わざわざ強調したってのがありそうだな……
「戦闘面では勝ち目がありませんが……試練はそういうことではないのでしょう?」
詩乃がセリフィアに問い、セリフィアが頷く。
「みなもさんのマスターに対する執着は相当なものです。
そんな彼女を納得させる。それが試練です!」
「え、えぇ……なにそれぇ……」
みなもの動揺した呟きが聞こえた。




