第12話 金・金・金!
金だ! 金が要る!
サ終を完全回避する為に、俺には金が要るっ!
ナベに礼を言い、軽食代を奢って別れたが、気が焦るばかり。
今の俺に、一番必要なことは――『金策』だったんだ。
移動しながら思考する。
一攫千金ダンジョンに入る為に免許が必要になるが、免許を取る時間すら惜しい。
なぜなら、アイテムとか武器とか、ゲーム内通貨が、俺の能力次第で、すぐにでも金になるかもしれないからだ!
であれば早く10級ダンジョンに行って確認すべき!
もう免許とか、そんなこと言ってる場合じゃない。
夜も更けてきたけれど、家に向かわず、通い慣れた洞窟ダンジョンへ向かう。
幸いなことに俺は古参プレイヤー。
武器もアイテムも通貨も、ぶっちゃけ具体的な数字が把握できないくらい持っている。
特にゲーム内通貨なんかは、桁がやばいくらいになっていたと思うし、ガチャ用課金通貨も200回くらいは回せるくらいには貯まっていたはず――
ここまで考え、ふと冷静になる。
「なによりも『確認』が大事だよな。」
そう独り言ち、スマホでソシャゲを起動して、キャラクター以外の所持品などを確認する。
ゲーム内の金貨マーク。ガチャなどには使えないゲーム内通貨。
ポーションなんかを買える通貨だが、初期の初期であればポーションなども使ったかもしれないが、インフレが進み過ぎた今、このゲームでポーションなんか使うことは100%無い。
アイテムを使わないから、通貨の使用用途も無い。
故にユーザーの99%が『この通貨……いる?』と思っている通貨だったりする。
クエスト攻略でも勝手に貯まる為、本当に無駄に貯まってゆく。
運営も『この通貨……いる?』と思っている節があり、無理矢理使わせようと、ゲーム内のショップの中に『闇市場』なんて設定で通常のショップに無いアイテムを超高額で売っていたりする。
ただ残念な事に、やっぱりそんなアイテムもいらないので、結果、無駄に貯まり続けている謎通貨だ。
古参勢の俺の持ち金貨は――10036519679枚
「えっと……万…億……100億か。フフっ」
あまりに多くて失笑。
俺は一応、無駄に貯まるのが、もったいなく思えていたので、せっせと『闇市場』で買い物を繰り返してはいるのだが、全然減らない。
もし、これが召喚で『金貨』として手に入ったとしたら?
その場合を想像してみる。
――金貨が500円玉くらいの大きさで、金純度が20金くらいと仮定した場合……いくらだ? スマホで計算をしてみる。
「うわぁ……1枚で30万円超えの価値になるの? こわいな。」
もし俺が金貨を召喚できたとしたら、これだけで金策は終わり。というか1円サイズだったとしても、もう働く必要もない。
なんだか安心感が生まれ、少し落ち着いて、じっくり考えられるようになった。
ゲーム内通貨が召喚できれば良し。
ダメだった場合は武器やアイテムの召喚を検討……か。
「あ~…………」
普段ゲームでは、あまり見ることがないボタンを探す。
迷いに迷った末メニューの中から『所持品一覧」をようやく見つけ、武器、アクセサリ、どうぐ、素材など、各種をタップし、一通り目を通していく。
が――ただ、ただ、目が滑り、頭が理解を拒んでいる事だけしか分からなかった。
武器だけで、余りに種類があり過ぎる。
アクセサリも、余りに数があり過ぎる。
道具や素材もさもありなん。
武器は『武器収集クエスト』が、アクセサリは『アクセサリ収集クエスト』、当然、道具も素材も同様。
俺はそれらをせっせと回収していた記憶しかない。
武器の種類の多さの理由は、キャラクター専用武器が存在するせいだ。
俺は800以上もいる全キャラを最大レベルにした上で専用装備もしっかり作ってある。
だから種類が滅茶苦茶多い。
さらに武器収集クエストも回しているせいで、ちょっと目に着いた高ランクの伝説の武器扱いの剣1種類でも500本以上。最低ランクの剣に至っては1種類で3万本を超えている始末。
もう、アクセサリも、道具も、素材も――全部同じような状況である事しか理解できなかった。
いや、素材に至っては、色々なクエストで入手出来てしまう為、桁がもう一つ上ですらあった。
「これはもう……通貨じゃなくても、どれかが召喚できたら勝確だわ」
特に数が多い素材。その中でも宝石。
強化や進化に必要で、有り余りすぎている各種属性の魔石が召喚出来たら――ダンジョン産の魔石として買取してもらえるかもしれない。
ワンチャン……ワンチャン!
魔石も召喚ができますようにっ!




