第119話 なんでこうなったか考えてみる
俺が大量のエネルギーを奪ったことでイレギュラーを起こした天哭の塔。
あれが、普通に戻っている場合『ダンジョンをまとめて管理している存在がいる』その可能性が高いとセリフィアが推測していた。
九重さんの報告は、天哭の塔が元通りになっていて、それを確認する流れになっているということだ……
……なんとなく。
いるんだろうなぁ……
この世界にダンジョンを作り出した、超常魔力を操る存在が。
幸いなことに、今のところ敵意を感じるような雰囲気はなく、むしろ人類を育てようとしている味方の可能性が高いってところが救いだ。
であれば、そのラスボスっぽい存在に『おっ、コイツ役に立つやん』『ええやん』と思われるような行動をしておけば、俺が生きていくのに損をすることはないだろう。多分。
……あ~。
「そういうことか。」
セリフィアがこんな大規模な法人を作ったりしたのも『誰がダンジョンにとって役に立つ存在か』を傍から見て分かりやすくしている。その為か。
ダンジョンに良い方向で活躍している人間の多くが、同じロゴなりなんなりを付けていたとすれば、ダンジョンが認知するかもしれない。
動画での色々な情報の発信は、俺の安全度を上げるっていうのが第一目標で、その達成は遠くない。
だからその先を見据えた行動として、法人の設立がある。
きっと、そういう意図でやっているんだろうな。
ほんと、俺の一歩、二歩先を整えてくれる、ありがたい美少女やなぁ。
「うんうん。ありがとうねセリフィア。」
車の後部座席で隣に居るセリフィアの頭を撫でておく。
すると、そっと身を預けてくる。
うんむ。カワイイ。
たぶん何に対してのお礼かは分かってないだろうけど『褒められてるなら……まぁいいか!』って、俺みたいな考えしたんだろうな。
大分、長い間、俺と一緒に居るから俺の適当さも移ってたりするだろ。多分。
なお、九重さんはセリフィアがポーションと万能薬を提案してくれたから、それを飲んでもらって体調回復は確認した。その後の車移動中。
……俺の初出社……30分で退勤。
重役出勤の上、短い労働時間……
いいのかしら?
いいんです!
俺が大株主で、社長!
いわゆるワンマン経営の会社だからね! ガハハ! しらんけど!
「……それにしてもセリフィア……法人設立とか、よく考えたね。」
「この部分に関しては、鷹司さんの提言が参考になりました。
私の行動から意図を汲み取り、サポートチームを構築しているようで結構助かってます。」
撫でる手が止まる。
「詩乃かぁ……世話になってるんだなぁ。」
「もちろん対価は渡していますので、お互いに利の有る取引になっています。
その辺りは、どうぞお気になさらず。」
「そう?」
「えぇ。……まぁ、毎回挨拶代わりに『マスターに会いたい』と言ってきていますが。」
「あ~……そうかぁ~……」
詩乃からの婚約の申し込みは保留中だからなぁ。
俺から見れば、まだまだ若いお嬢さんだけど、多分財閥とかの方面から見たら行き遅れに片足突っ込んでる可能性が高そうだよな……本人がどう思ってるかは別にして、こんなオッサンに執着している時間は短い方が良いはずだ……
うーん……
よし。
「近いうちに詩乃に会おう。
対価を渡していても、なんだかんだ世話になってるのは事実だし、お礼を伝えるのと、婚約の意思はないと伝える。これも優しさだろうしな。」
「そうですか……」
セリフィアが少し考えこむ。
「おそらく呼べばすぐに来ますけど、これから呼びますか?」
「……そうなの?」
財閥の令嬢様だよね?
「私の動画の効果もありますから、むしろこれ幸いと飛んでくるかと。」
まぁ……動画の撮影でも色々と根回しとか協力をお願いしたりしたもんなぁ。
セリフィアが動画の意図が何かは伝えていたと思うし、公開されている動画……まぁ、わかりやすく言えば『敵対すれば分かってるだろうな?』の脅迫動画だけど、その反響を考えれば、色々、俺と話したいことも積みあがっていそうだ。
「じゃあ……とりあえず打診だけしてみようか。今日の夜に食事でもどう? って。」
「ですって。」
セリフィアが前方の助手席にいる鷹山さんに声をかける。
「本日のスケジュールでは、18時以降は何時でも大丈夫です。」
「ん? えっ?」
すぐに返答があって戸惑う。
俺の様子にセリフィアが少し笑う。
「マスターは『それほどのお方』ということです。」
「……そっか。」
……まぁ、俺の力で単月50億とか売り上げるんだもんな。
しかも今の売上は、本気でやってないんだよな。
セリフィアがに言われたアイテムを適当に出しているだけ。
今の状態ですら、稼げる上限がまだまだ見えてないんだから、そりゃあ財閥のご令嬢でも即応即答体制にしてくるか。
単純に持ってる戦力もやばいし……あらやだ。なんだかヤクザみたいな気がしてくる。
「なんか王様になったみたいな気分になっちゃいそうだから……俺が調子に乗ったら戒めてね。」
「それがお望みなら。私は別に調子にのって王様になっても良いと思いますけど?」
セリフィアの言葉に思い切り眉間にシワが寄る
「いや、それはなんかやだよ~、牛丼食べて幸せを感じられる心を忘れたくないよ俺。」
「ふふ、分かりました。」
またセリフィアが少し考えている。
「では、忘れていそうな時は、マスターの元々のおうちに二人で行って、色々思い出しましょうね。」
「あー、それは効きそうだねぇ。」
今は動画編集室とか専用の部屋のある一軒家を借りて、そこに住んでいるのだ。
毎月のお家賃ざっくり50万えーん。
50万円でもホテルに泊まるより安いとか思っちゃうんだから、もうすでに感覚狂ってきてるんだよな。
綺麗な賃貸を、一戸まるっと借りてるから色々な部屋で、色々出来る。
定期的にお掃除も入ってもらってる掃除や片付けも丸投げ。
部屋に合わせて家具も色々揃えたから快適な住処になってる。
でもセリフィアが言ったように、一応、俺の元々住んでいた部屋はそのまま残してある。
賃貸だから解約していないだけだけど、ちゃんと長期間あける前提で片付けはちゃんとしてあるから、生ごみで大惨事に……なんて事態にはならない。
「鷹司より連絡が入りました。
十八時より、料亭『霞月庵』の離れを確保いたしました。中村様のご都合に合わせてお待ちしております。とのことです。」
「はっや。」
なんとなく、ものすごく重要人物と意識してもらえている感じがして、むず痒くなり頭を掻いてしまう。
「お時間に伺います。とお伝えください。」
さ。詩乃との婚約、断るぞー!




