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現代ダンジョン・オーバーキル!  作者: フェフオウフコポォ


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第108話 帰らずの森ダンジョン


-- 引き続き第三者(一般人)視点 --



「さて、今の言葉は置いておいて、みなもさんがこの辺りの霧を晴らしてくれたので先に進みましょうね。」

「あ、あ……はい。」


しゅんと俯き、猫背に戻る陰キャ目隠れ弱キャラ美少女。

属性が強すぎる気がするが……とりあえず、この動画は最後まで見ると心が決まってしまった。


魔力干渉解析マナ・インタラクト・スキャン



あれ? 映画見てたんだっけ?

そんな錯覚を覚えるほど、謎の光が周囲に広がる。なんだこれ。


色々と理解が追い付かないが、周りの美少女たちがまったく無反応。

ということは後から入れてた特殊効果か何かだろうか?

首を傾げながら『キレイダナー』と見ていると、眼鏡の美少女が頷いた。


「あぁ、なるほど。まぼろしキノコがいっぱいありますね。迷いやすい分、食べられそうな素材も沢山ある。そんな感じですね。折角ですから道中にある分は採っていきましょう。」

「ウフフ。キノコは好きよ……」


ビキニ美女がエロいこと言ってる気がするが、眼鏡美少女が気にせず説明を続ける。


「ここは地形が常に、ゆるく変化しているようですから迷いやすいのですね。

モンスターはさっき、みなもさんに倒していただいた木のモンスターが多いです。

根で足を掴んでくるタイプですので、木の根に足が挟まるとか、掴まれた感じがしたら、それは攻撃なので反撃してください。」

「「はーい。」」

「は、はい。」


ピクニックの注意事項を読み上げているような緊張感のなさだ。


「あと、人の声を真似る動物がいます。

遠くから仲間の声がしたら偽物だと思ってください。」

「「はーい。」」

「は、はひ。」


「この周辺の霧は晴れたのであまり意味がないですが、方向感覚を狂わせる霧状のモンスターもいます。黒やグレーの色が入った霧はモンスターなので倒してください。

とりあえず。気を付けるモンスターはこの程度ですね。」

「「はーい。」」

「ふ、ふひ。」


眼鏡美少女が、カメラに向き直る。


「この『帰らずの森ダンジョン』は、環境型ダンジョンですね。

判断力、精神力、方向感覚を試すタイプと判断して良いでしょう。

何もかもが分からなくなった時でも冷静さを保てる人、そして行動できる人は生き残れるダンジョンですので、そういった方は挑戦しても良いかもしれませんね。」


ニコリと微笑むその顔が、ふつくしい。


「ただし、直径10cmの生木を折ったり千切ったりできない人は、すぐ死んでしまうと思うので……あ、この表現だと勘違いする人が出てしまいそうですね。

そうですね……クマ以上の攻撃力を持っている人間……薄い鉄板程度なら殴って貫通できるくらいが、挑める最低ラインと思っていただければ良いかと。では散策しましょう。」


……


うーん?


何を言ってるんだろうね、この人は。

逆に聞きたいわ。お前は出来るんかと。

薄い鉄板殴って、腕が貫通するんか? と。

んなわきゃあないだろうが。


脳内で文句が生まれつつも動画を見るのを止められない。

しばらく散策しながらキノコを採取したり、キャッキャとピクニックをしているような雰囲気が、どうにも楽し気だったからだ。

なにより水着がとっても良い。


「あ。ルミナさん。あの木は敵ですのでお任せしても?」

「はーい。」


黒ビキニ美少女がひょいひょいと木に向かっていくが、足元の木の根がウネウネと動いた。


「ん-。ほんとだ。足、掴んでくるね。ていっ。」


絡みつく根を、まったく気にしない様子で、木に向かってワンインチパンチを繰り出す。

轟音と共に、木の殴られた部分が木っ端微塵に吹き飛んだ。


「は?」


思わず動画を止め、眉間を揉む。

10秒戻してもう一度見る。


……間違いなくワンインチパンチで木の幹を吹き飛ばしていた。


「あ。」

「あ~……」


動画はそれで終わらなかった。

パンチの位置が悪かったのか、木の上部分がカメラの方へ倒れ込んできたのだ。

予想外だったのかカメラマンが少し慌てているように見える。


「何してるんですか……。」

「私がやるから大丈夫よー。」


倒れてくる木に対して、眼鏡美少女はまったく慌てていない。

重なった美女の声も至って普通。

美女の後ろ姿がカメラに映り、倒れてくる木の真下で、その長い足で蹴りを放った。


思わず一時停止を押してしまう。


いや、木は何トンもあるだろう?

この先はグロ画像なのでは?

いや、でもそんな動画を、このサイトが許すはずがない。


ということは……蹴りで何トンもありそうな、倒れてくる木を蹴りでどうにかするっていうのか?

それこそ人間技じゃない。


再生を押せない。


だが、この直前に木の幹をパンチ一発で粉砕する人間がいたんだ。

この美女も、人間技じゃない技を放つのかもしれない。


そんなことを考えながら、動画サイトの規約でエログロ動画が存在しないことが後押しになって、ようやく再生を押す。


美女の蹴り一発で、倒れてきた木が蹴り飛ばされた。


「なんでやねんっ!」


いや、もう無理だろ。

木をワンインチで粉砕して、何トンもありそうな生木を美女が蹴り飛ばすって……しかもハイヒールで。

どこをどう考えてもおかしい。

おかしい以外の言葉が見つからない。


その後も、みなもとかいう目隠れ美少女が、

「ふひ……」とか言いながら濁った水の手で木を引き裂いたり、

セリフィアという眼鏡美少女が『キャーハハハ☆』と笑う変な魔法みたいなのを飛ばして魔石を手に入れたり、

ルミナという黒ビキニの美少女が倒れないように、全て木っ端みじんに殴り壊したり、

カリーナという美女が無駄に谷間を見せつけてきたり――


いや、おかしいだろう。

おかしいだろう?

いや、やっぱり、おかしいだろう!


動画を見ているだけで自分の常識が何度も死んでいく。

そのたびに俺の脳が「?」を量産する。


なのに……なぜだろう。

気づけば最後まで見てしまっていた。


動画は散策気分でダンジョンを回り、キノコを大量に採取し、なぜか敵を倒して魔石も沢山手に入れ「時間も結構たったので帰りましょうか」という本当に散歩のような動画だった。


だが、それが2級ダンジョンで撮影されたということを信じてしまう。そんな動画だった。


スマホを脇に置いた瞬間、どっと疲れが押し寄せる。

映画一本見た後みたいな、変な達成感すらある。


でも――クセになる。


なんだろうこの感覚は。

怖いもの見たさ?

美少女成分?


それとも、見ちゃいけないものを見てしまったような背徳感だろうか?

気づけばスマホを手に取り、指が動きチャンネル登録をポチっていた。


そのままチャンネルページに飛び、次の動画が投稿されていないか確認する。

更新は、まだない。


……なんだよ。

早く次を見せてくれよ。


画面を閉じる前に、もう一度だけ更新ボタンを押す。


やっぱり更新なし。


ため息をつきながらも、

胸の奥が妙にそわそわしている。

次の動画、いつ配信されるんだろう――


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