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現代ダンジョン・オーバーキル!  作者: フェフオウフコポォ


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第102話 お説教


「まず、マスター。」

「はい。」


セリフィアの真っ直ぐな視線に、自然と俺の背筋が伸びる。

下手すれば20才は年下だろう女の子に説教されるだなんて……興奮するな。


「相手が上手ではありました。ですが……少し流され過ぎです。」

「あ、はい。」


これは間違いなく詩乃のことだ。


「内心で、あの女と別に婚約しても良いかな、とお考えなのでは?」

「……ない……とは言い切れません。」


ぶっちゃけ『アリ寄りのアリかな?』と思わないでもない。


「確かに婚約の話にはメリットが多くあります。ですが、それは目的と手段が入れ替わっていませんか?」

「あ~……」


それは……言われてみれば、そうかもしれない。


そもそも婚約は、なんで出た話なんだっけか?

詩乃の財閥の力があれば、ゲーム会社の買収とか、これからの活動で色んな融通が利きやすくなるとか、そんな感じだったっけ?


あと今日聞いた話だと、俺には意外と敵が多いから、諸外国から俺を守るのに都合が良いとかも言っていた。


「ちょっと待ってね。一回、真剣に考えてみる。」


……そもそも俺の目的は何だった?


これは簡単なんだよな。

『面白く、楽しく、セリフィアたちと過ごす』だよな。

これが目的だ。


その目的を叶える為には、俺のスマホゲームの召喚能力が、とてつもなく重要になる。

だからこそ、そのゲームに影響を与えそうなゲーム会社を買うなり、ゲーム自体を買うなり金策に走ったり色々してきた。


金策だのなんだのは、目的の為の手段。

その手段の話の中に詩乃が入ってきて、婚約の話が出てきた。

そして今『婚約が悪くない』と思っている。


これは手段の為に、行動し始めてないか?


あ。

これは……順調に手段が目的になっている気がするな。


「手段が目的になってるな。」

「『本末転倒』という言葉が生まれたように、いつの時代でも、そして誰にでも、よくあることですよ。」


セリフィアが微笑む。


「大切なのは、マスターが『何をしたいか』です。

ご自身の気持ちを一番大切になさってくださいね。」


「……そうだね。その通りだ。」


「財閥の力は確かに大きいのでしょう。ですが、マスターはそれ以上の力をお持ちです。

財閥など、マスターに掛かれば――新しく興すことも、取って代わることも、破壊し尽くすことも可能。その程度の話です。」


言い切る声は静かだが、絶対的な自信が感じられた。


「時間は有限です。ですから、そこに時間を割く価値があるかどうか――それだけの問題です。」


セリフィアはさらに続ける。


「とはいえ、有用な情報は得られましたし、友好的な関係も築けました。

便利に使える『駒』だと思えば良いのです。向こうもそのつもりなのですから、遠慮する必要はありません。」

「……そんなもんか。」

「はい。そんなもん。です。」


セリフィアが力強く頷く。


「向こうは『人質』にゲームを取っています。」

「あ。やっぱり?」


協力的な姿には見えたけれど、根幹を握られている感じはしていたんだよな。

いざという時に、どうとでも出来るように対策をしている。そんな気がしないでもない。


「あからさまですが、むしろ好都合です。」

「えっ? ……そうなの?」


「はい。マスターは、ゲームと能力を別の物と感じてはいませんか? マスターの能力がゲームに依存していない可能性もあるのではないかと。」

「……それは、あるなぁ。」


ぶっちゃけある。


スマホゲームを基にしているが、通信が入らなければ起動できないはずなのに起動できたりする。

スマホゲームが根幹だとしたら、通信が無い場所で能力が発動することは無いだろう。


それにゲームを順守しているとしたら、衣装が違うキャラは同一名のキャラクターであっても、別人となるはず。

だが、俺の能力で呼び出したセリフィアは、衣装が違っても同じセリフィアという個性を持っている。


『スマホゲームを基に能力が発動している』

ではなく

『能力がスマホゲームを参考に発動している』

可能性がある。


「私が推論を話す事で変化が起きる可能性もありますが、よろしいですか?」


うっ、なんか怖いこと言ってるな。

でも……聞いておいて損はないはずだから、切り出しているんだろう。


「うん。聞こう。」


セリフィアが俺の言葉を噛みしめるように頷いた。


「私は……マスターの能力は、ゲームに依存していないと考えています。

極論すればいずれスマホすら使用せず、能力が発動できるのではないかとも思っています。」



うん。なるほど。

想像できなくてわからんな。


「うん……ちょっと、よくわからんかも。」

「それで構いません。私も確証を持っていませんので、今の現状だからこそゲームを操作することで能力に影響は与えることができるのではないかとも思えますし?」


セリフィアが小さく微笑んだ。


「鷹司さんや石動さんがダンジョンでスキルを得たように、マスターもダンジョンからスキルを得たのですよね?」

「うん。」


彼女たちは天哭の塔でスキルを得た。

俺は、洞窟ダンジョンだ。


「マスターがスキルを得るまでを、最初から詳しくお伺いしても?」

「もちろん。」


俺は順を追って話した。


友達に誘われたことをキッカケに、過疎っていた洞窟ダンジョンに通うようになったこと。

化石カニを気に入って通い詰めたこと。

出現モンスターを全種倒してコンプリートした時に、光の流れが気になったこと。

その変な箇所を攻撃し続けてたら、ダンジョンから光が消えて、俺に流れ込んで異常を感じたこと。

この時にスキルが生えただろうこと。

初めてルミナを召喚した時のこと。


思い出しながら、じっくり話した。


セリフィアは俺の話を黙って聞き、しばらく考え込んだ。

やがて立ち上がり、俺の正面に向き直る。


「……マスターに魔力干渉解析マナ・インタラクト・スキャンをかけても良いですか?」

「もちろん。いいよ。」


「では、スキルを発動します。」


セリフィアが指先を軽く掲げると、淡い魔導式がいくつも浮かび上がり、白銀の光が幾何学的に展開する。

ふわりと彼女の髪が浮きあがった。


本気バージョンの解析のようだが、いつもよりも、光が強いような気がする。


浮かび上がった光が、ゆっくりと俺に収束していく。

相変わらず、痛みも温度も何も感じない、ただ不思議な感じだ。


魔力干渉解析マナ・インタラクト・スキャン――」


俺の周囲に薄膜のような揺らぎが生まれ、いくつもの見えない水面に波紋が広がる。


……やっぱり長めだな。


光が収束し、俺を覆っていた被膜が消えていく。

セリフィアは眼鏡をクイと押し上げた。


「何か分かった?」

「……鷹司さんや石動さんがダンジョンからスキルを与えられた側ですが、マスターは違うのではないかと思い、その視点を強く持って解析してみたのですが――」


セリフィアは一拍置き、静かに告げる。


「おそらく、マスターの能力は――」

「……俺の能力は?」


スマホゲームの具現化……とは違うのかな?



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