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風味織(ふうみおり)~焦げついた執念は、世界を香らせる~  作者: 乾為天女


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第39話_勝敗を超えた一皿

 決勝戦から一夜明けたパリ。セーヌ川沿いの石畳を歩く健斗の足音が、冷えた朝空に響いていた。

  受賞はした。だが彼の胸に広がっていたのは、燃え尽きた後の奇妙な空虚だった。

  「本当に、あれでよかったのか……?」

  自問する彼の隣に、静かに現れたのは、さくらだった。パリの朝に似合う薄いグレーのコートを羽織り、手には昨夜の打ち上げでオスカーがくれたワインの小瓶を握っている。

  「飲む? 寒いし、ちょっとは心、温まるかもよ?」

  「……昼間っからかよ」

  「優勝者の特権」

  ふっと笑うさくらの横顔を見て、健斗は思った。この人のそばにいると、自分の“執念”すら、少しだけ柔らかくなっていく。

  さくらはベンチに腰を下ろすと、空を見上げた。

  「勝ったから言えるわけじゃないけど、私、昨日のあなたの皿、好きだったよ。焦げ目も、ね」

  健斗は返事をせず、代わりにポケットから一枚の紙を取り出した。それは祖母が残したレシピノートの最終ページだった。

  「“誰かの人生に刻まれる皿を作れ”。そう書いてあった。……昨日の一皿、誰かの記憶に残ったと思うか?」

  「私には、しっかり残った。……あれ、きっと一生忘れないよ」

  風が二人の間を抜け、ワインの香りを揺らす。

  健斗は、ようやく微笑んだ。

  「俺もだ。たぶん、あの香りを思い出すたび、お前の顔が浮かぶと思う」

  さくらが照れ隠しのように立ち上がり、前を向いて歩き出す。

  「それは、光栄ね。でも、次はもっと違う味、食べさせてよ? ……勝ち負け関係なしに」

  「次って……」

  健斗は立ち上がり、さくらの横に並んだ。

  「……お前と、どこかでまた料理、作れるってことか?」

  さくらはその問いに、すぐには答えなかった。

  けれど、ほんの少しだけ、口元を緩めて言った。

  「またどこかで、じゃなくて、すぐ近くで、かもね」



 その日の午後、チーム〈風味織〉はパリの中心部、レンガ造りの小さなギャラリーを間借りした臨時キッチンに集まっていた。審査員からのフィードバックと、マスコミの取材の応対が終わり、やっと全員が一息つけた瞬間だった。

  「で、俺ら……優勝したってことだよな?」

  祐輝が手持ち無沙汰にトマトを手で回しながら呟いた。

  「実感ないの?」

  裕美が笑う。祐輝は真顔で言い返す。

  「だってよ、もう数ヶ月、走り続けてたじゃん。毎日どっかの土地で食材探して、仕込みして、喧嘩して、で、また仲直りして。急に全部終わるとさ、なんか逆に……」

  「燃え尽きる?」

  丈が穏やかに言った。

  「そうそう。炭。」

  「でも、それって“灰”になる前に、ちゃんと燃え切ったってことじゃない?」

  里実が窓際で日差しを浴びながら言った。

  その言葉に、全員が静かにうなずく。

  オスカーがスツールに座りながら、ワインを傾けた。

  「わたしは、何よりこのチームで料理ができたことが嬉しかったよ。言葉も文化も違うけど、最後は“香り”で分かり合えたから」

  「私もそう思います」

  リリアンが英語で返した後、すぐに日本語で続ける。

  「焦げ目も、皿の縁のヒビも、あれは“人生の景色”でした。健斗の執念と、みんなの想いと、さくらさんの優しさと……全部、重なっていた」

  健斗は、一同の視線を受け止めたまま言った。

  「……俺なりに、祖母の言葉に応えたつもりだ。世界料理王になっても、俺の料理は“人の心に残る皿”でありたい」

  ふと、裕美が声を上げた。

  「じゃあ、次のステップ、決めようよ。どうするの、健斗?」

  彼は一瞬、考え込んだが、すぐに目を上げて言った。

  「東京に戻って、多文化交流のレストランを作る。俺たちが旅して学んだ、各地の味を、日本の下町から届けるんだ」

  「おお、それいい!」

  祐輝が勢いよく拍手する。

  「店名、決まってるの?」

  「〈風味織〉。そのままでいいと思ってる」

  それを聞いた全員が、微笑んだ。




【指示】 next


https://www.alphapolis.co.jp/prize/requirements/365000215用の

テーマ:キャラクター賞

追放冒険者に勘当王子、悪役令嬢、天才幼女などなど、パッと読者の目を引く、個性的なキャラクターが登場する小説。



入選できる小説の作成をお願いします。


指示フォルダに内容は記載したので。何かあったら見返してください。

トークンが足りない場合は複数回に分けての返答をお願いします。




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