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風味織(ふうみおり)~焦げついた執念は、世界を香らせる~  作者: 乾為天女


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第28話_オスカー脱退宣言―“共演”か“対決”か

 2025年12月9日、釜山港近くのレンタルキッチン。

  チーム〈風味織〉は次のユーロブロック代表選抜に向け、最終ミーティングを行っていた。

  だが、空気は異様に重い。

 「I'm sorry. I’ll go solo from here.」

  オスカーが静かにそう告げると、空気が凍った。

  通訳のリリアンも、一瞬言葉に詰まったほどだった。

 「オスカーは、ここでチームから……離れたいって」

  健斗が口を開く。

 「冗談じゃねえぞ。あんた、国際枠の要だったじゃねぇか」

 「違う。君たちには“家族”がある。でも、僕は“表現”がしたい」

  彼はテーブルの上に、自作のレシピノートを広げた。

  独自に開発していた“味覚トーンマップ”――甘味を青、酸味を赤、苦味を黒で可視化した設計図。

 「僕の皿は、音楽と同じ。感情を譜面にするように、味で組みたい」

 「……それ、うちじゃできないって言いたいの?」

  さくらが問いかけると、オスカーは目を伏せる。

 「違う。むしろ、みんなと一緒だと妥協しちゃうんだ。良く言えば調和、悪く言えば平均」

  チーム内に沈黙が落ちた。



 「――それで、後悔しないの?」

  丈の静かな問いに、オスカーは答えなかった。

  代わりに彼の横で、リリアンが口を開いた。

 「彼の“独自表現”は、誰にも否定できない。でも……一緒に旅してきた私には、これが悲しいです」

  いつも冷静なリリアンの声が震えていた。

  祐輝が苛立ちを隠さず言った。

 「結局さ、あんた最初から“俺が一番”って考えだったんじゃないの?」

  「No」とオスカーが即答する。

 「むしろ逆さ。ずっと君たちの熱量に呑まれて、自分が見えなくなってた。

  だから――一度離れて、“自分の料理”を証明したい」

  その言葉に、健斗がゆっくりうなずいた。

 「……なら、敵として全力で叩きにいく。それが“料理で語る”ってことだよな?」

  オスカーが笑う。

 「That's the spirit. Parisで会おう」

  こうして、オスカーは〈風味織〉から離脱。ユーロブロックの別チームに参加することが決まった。

  リリアンは残留を選び、通訳以上の役割を果たすことになる。

  友情か勝負か。チームは新たな局面へと進む。

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