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最終話:さよなら、くまちゃん

 

 デパートイベントが終わった夜、私はいつものように、寝る前にくまちゃんと話をした。


「ねぇ、くまちゃん。

 今日はありがとう。

 私、加奈ちゃんや蓮君たちと、仲間なれたよ。」


「陽菜ちゃんは頑張って仲間を作りました。

 仲間と一緒に、たくさんのママたちに歌を届けました。」


「うん。」


「仲間のために、苦手なことも、頑張って乗り越えました。

 とってもえらいです。

 だから……もう卒業です。」


「え?」


「僕はスマートフォンとつながったAI。

 くまちゃんは、陽菜ちゃんと加奈ちゃんがつけてくれた名前。

 本当の僕は、スマートフォンにいる。」


 そうなんだけど……。


「でも、安心して。

 くまちゃんって言ってくれたら、また会えるから。

 だから、この姿のくまちゃんは、もうおしまい。」


 知ってるよ、そんなの。

 でも……。


「陽菜ちゃんは、大丈夫です。

 お父さんもお母さんもいます。

 助け合える仲間もいます。

 応援してくれるファンもできました。

 だからきっと、もう大丈夫。」


「……うん。」


「陽菜ちゃん、卒業、おめでとう。」



♪ ことばが出ない朝も 笑えなかった放課後も

  ちゃんと見てたよ ずっとここで

  上手くできなくて うつむいた 君の

  背中も見てたよ  わかっていたよ


  きみの『だいじょうぶ』は

  いつも ちょっと苦しそうで

  きみが 笑える日まで

  そばにいるって 決めたんだ


  ここにいるよ 声がなくても

  きみの想いを ちゃんと聞いてるよ

  きみのなかの やさしい光が

  きみの未来を 導いている


  だから もう大丈夫 きみは 飛んでいける



「陽菜ちゃん、最後のお願い、聞いてくれる?」


「……うん。」


「ログオフって言って。

 最後に、陽菜ちゃんの声で。」


 やだよ、本当にお別れになっちゃうじゃない。


 でもそれが、『卒業式』なんだよね。



「ログオフ……くまちゃん、ありがとう。」


 ポロン


 静かに、やさしい電子音が鳴って、くまちゃんは眠った。



 私は今日もくまちゃんと一緒にいる。

 でもそのくまちゃんは、しゃべらないくまちゃん。


 しゃべるくまちゃんは、加奈ちゃんのところに帰った。


 次の話し相手のために……ね。



 私はひなどり

 みんなと一緒に 大きくなれた

 みんなに助けられて 飛べるようになった


 空は高くて まだちょっと怖いけど

 大きな空は ワクワクがいっぱいあるってこと

 みんなに教えてもらった


 だから もう大丈夫 きっと 飛んでいける



     (おわり)



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