学生時代最後の観覧車デート
なろうラジオ大賞用小説第九弾
私とジュリアさんの敵との最終決戦が終わった後の事。
ついでに言えばジュリアさんとの涙の別れが終わった後の事。
殿下を始めとする人達によって再び平和が保たれてる世界において私は……殿下との、学生時代最後のデートを楽しんでいた。
この機会を逃したら、もう二度と静かにデートする事はできない。
近い内に殿下は陛下となり、そして私は王妃となり……ゆっくりと過ごす時間を確保するのは難しくなる。
「名残惜しいね、ユリン」
一緒に乗っている観覧車の中で。
殿下は私に顔を向けながらそう言った。
原作とは違い。
ジュリアさんの影響でずいぶんマッシブになった殿下が。
おかげで観覧車内が狭く感じる。
というかそれ以前の問題として。
今の殿下を相手にして、私は毎晩無事でいられるのだろうか(意味深
「そうですね殿下」
そして私は、そんな些細な不安を顔に出すまいと、殿下に笑顔を向けながらそう言った……その時だった。
「バハハハ! 異端の転生者よ! この世界のため死ぬがよい!」
私達がコテンパンにし決着をつけたハズの。
敵のまさかの残党が観覧車の外に現れたのは。
「ッ!? なんで!?」
「まさか、敵がもしもの時のために備えて用意し今まで眠らせていた刺客か!?」
相手の台詞から、殿下はすぐに状況を察する。
確かに敵は台詞からして現状を知らないようだけど……?
いやそれはともかく!
相手が空を飛んでこっちに突っ込んでくる!
「跳ぶよユリン!」
「え、ちょ、殿下!?」
するとすぐに殿下は私をお姫様抱っこして。
そして観覧車のドアを開けると躊躇なく飛び降りた!?
直後に敵が観覧車の私達がいたゴンドラに突っ込み。
私達は観覧車の骨組みの部分に着地した……正直死ぬかと思った!
というか今も下手をすれば死ぬ!
「ユリン、あのレストランの屋上でちょっと待っててね!」
しかし殿下は私の安全の確保と敵の事しか思考せず。
強張らせた顔のまま、すぐに私を遊園地内のレストランの屋上に置いて、再び敵――ようやく観覧車の中から飛び出した相手へ突っ込んでいった。
そしてそんな殿下の戦いを見て。
私は改めて、これからの事を思った。
確かに私とジュリアさんは因縁の相手との決着をつけた。
だけど今回のように、その敵の置き土産と言うべき存在とまた戦う事もあるかもしれないと。
いずれ敵の関係者が事態の収拾を図るかもしれないけど。
基本的に、私達の戦いは。
もしかすると死ぬまで終わらないかもしれないと。
人生は戦いの連続だと。