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冒険

「冒険者ギルドへようこそ。登録ですか?登録内容の変更手続きでしょうか?」


 ここはゲームの中盤で拠点となる町、モーフリの冒険者ギルド。モーフリとは帝国の中心地として栄える大都市だ。


 港町には別荘地に住む貴族として買い物をしており、ギルドで知った顔に会っても面倒なのでウォルフが帝国で1番大きな町への転移魔法陣を用意してくれた。それ以外にも攻撃を感知したら結界を張る腕輪や色んな意味で虫除けの指輪、一見普通の動きやすい軽装備に見えるがラストダンジョンで手に入るクラスの守備力の防具、ドラゴンの牙で作られたらしい毒を仕込んで一撃必殺が狙える短剣。ドラ◯もんの四次元ポケットのようになんでも運べる質量保存の法則を無視したリュック。斜めがけ鞄は胸に紐が食い込むためけしからんというウォルフの意見によりリュックとなった。


 3階建ての冒険者ギルドの窓口は役割ごとに分かれており、クエスト受注、報告、登録・変更、クエスト依頼、相談とそれぞれ窓口の職員が忙しそうに働いている。


 壁にはランクごとの掲示板があり、CランクとDランクに多く人が集まっている。適正レベルでいうと掲示板がなくギルドから直接依頼されるSランクはレベル80以上のやり込み要素、Aランクは60以上、Bランクは45以上、Cランクは30以上、Dランクは20以上、Eランクは10程度となっている。


 中盤の町なだけあって、人だかりはそれほどでもないがAランク、Bランクの掲示板にも依頼は充実していた。どの依頼を受けるか話し合う声や、依頼の報酬で何を新調するか話し合う声など、ギルド内は喧騒につつまれている。冒険者のほとんどは人間だが、耳の尖ったエルフや獣耳の獣人がちらほら見受けられる。


「登録をお願いします」

「かしこまりました。こちらに記入をお願いします。読み上げや代筆も可能ですので、遠慮なくお申し付けください」


 ペンと書類を差し出される。書類には名前や種族の他に、パーティーへの斡旋を希望するかといった簡単な希望調査と、人種差別についてや揉め事についての注意書き、ギルドのルールに同意する場合の署名欄もあった。


「共通語で記入してもよろしいでしょうか」


 共通語とは、人間とエルフ、獣人、ドワーフなど多くの種族が取引など交流する際に使用する言語だ。ジルバニア国と帝国の言語は似たようなものだが、国ごとの訛りのようなものがあり会話の意味は通じるが記入となるとニュアンスが難しい。


「はい。大丈夫ですよ」


 マリアは種族を人間と記入した。吸血鬼と書くと討伐対象になる可能性があるからだ。パーティーへの斡旋を希望しないソロ活動なので手続きもすぐ終わる。窓口の女性も書類確認してすぐにカードを発行した。


「こちらが冒険者の身分証でございます。最初はどなたもEランクからになりますが、1つ上のランクの依頼を2つこなすとランク昇格となります。スカーレット様はソロのご予定ですが、もしパーティーを組まれた際は個人のランクとパーティーとしてのランクは別物ですのでご注意ください。冒険者についてのご質問やパーティー斡旋、ギルド員同士のトラブルなどお困りのことがございましたら相談の窓口でおうかがいいたします。本日はご利用ありがとうございました」


 私の仕事はここまでだと言わんばかりに終了され、お次の方どうぞと次の人の案内に入る。いかに早く客をさばくかに特化したプロだ。変にアレコレ聞かれなくてちょうどよかった。マリアは身分証を鞄にしまい、早速Dランクの掲示板を見に行く。レベル上げのためにもAランクまで早く上げておきたい。


 人だかりの中で揉みくちゃにされながら張り出された依頼を見る。夜限定の採取依頼とゲイルダッグ討伐依頼の紙を手に取り受注窓口に並ぶ。窓口には3人の職員が並んでいるが、よほど熟練なのかすさまじいスピードで進んでいき、あっというまにマリアの番となる。マリアは依頼書とギルドカードを窓口で渡した。


「お待たせいたしました。夜光アルテシアの採取とゲイルダッグ5体の討伐依頼ですね。討伐証明はゲイルダッグの羽毛ですので必ずお持ちください。ゲイルダッグの死体そのまま持ち込んでも大丈夫ですが、解体料として依頼料の2割を頂戴いたしますことをご承知おき下さい。ではご武運お祈り申し上げます」


 流れるような説明と、手際よく押された判子。初めてのクエストで上のランクを受けられるか心配だったが、心配いらなかった。


 早速町を出てゲイルダッグが生息する湖へと向かう。もう日が暮れ始めており、町から湖方面へ向かう馬車はない。2時間はかかるであろう道のりを徒歩で行くしかないのだ。


 街灯もなく暗い中、ろくに整備されていない道をランタン片手に歩き続ける。夜目が効くのでランタンは無くても問題ないが、夜中に明かり無しで出歩く人間は盗賊くらいしかいないのであえて持っている。


 背中にコウモリの羽でも生えてくれれば、空を飛んで移動が出来るのに。残念なことに生えないそうだ。モーフリを拠点にして活動するなら、今後の移動手段を考えなければならない。毎日帰る約束があるため徒歩では遠くのクエストを受けられない。夜中に走る馬車もいない。移動手段になる使い魔と契約する必要がある。


 空を飛ぶ鳥系の魔物か、ドラゴンか。裏ボスらしく封印された邪竜を従えるのもいい。羽の生えた馬の魔物ペガサスもクリア前のレベル上げに使う山にいたはずだ。大鴉も賢くて飼いやすそうである。しばらくは使い魔探しになりそうだ。


 使い魔に思い馳せながら2時間の道のりを歩き続け、ようやく湖までたどり着いた。夜光性の植物の光が湖にも映り込み幻想的な景色だ。


 そう、ここは2作目のヒロインが湖のそばで野営した際に祈りを捧げる姿を見て主人公がときめく恋愛イベントの聖地である。物語の中盤でヒロインへの恋心を自覚する主人公だが、自国を救うために旅をする主人公と帝国で聖女と呼ばれるヒロインでは旅が終われば離れ離れになるのだと、叶わぬ思いを告げることは出来ないと苦しむ主人公。主人公の思いを知らず、祈りを終えたあと無邪気に話しかけるヒロイン。映像美に優れたハードのためそれはそれは美しいスチルであった。主人公の泣きそうな笑顔が一部のプレイヤーに刺さったのは言うまでもない。マリアは竜騎士✕ヒロイン派なので聖地巡礼であってもここがあの場所か、と感慨深くなるだけだった。


 ゲイルダッグとのバトルの前に植物採取クエストを終わらせて、湖のほとりで集まって眠るゲイルダッグをサクサクと仕留めていく。吸血鬼は隠密行動に優れるため、そっと近づき一撃で仕留め続けていった。死体は質量保存の法則を無視したリュックに入れていく。


 ゲイルダッグを14匹仕留めたとき、本命の魔物が湖から表れた。水と風を操る水竜だ。首長竜が青く透き通る美しさの鱗におおわれ、頭上には王冠が輝いている。


 ゲイルダッグは素材が比較的高く売れるため、それにつられて何匹も狩っているといると表れる。制作者側が仕掛けたプレイヤーの金策封じの隠しボス、水竜ラプソディだ。


「私の眷族に何をする」


 ヒレで水面を叩き、水しぶきを上げた。水の混じった竜巻が水竜の周りに発生する。お怒りだ。


「子らのために葬ってくれる」


 ヒレを使って風を操り竜巻がマリアに向かう。横へ飛び、竜巻を避けた。マリアは得意な風魔法と水魔法を持つボスから、戦い方を学習しようと最初に狙ったのである。マリアの長い戦いが始まった。



閲覧数を伸すためタイトルや表紙の文章を今後ちょこちょこ変更します。

ブックマークをしてくださっている読者様、ご迷惑おかけしますがご理解下さい。

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