表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

失って初めて後悔が刻まれる。

作者: 美代ゆり

 たった一人の弟が死んだ。



 僕には2歳年下の弟がいた。


 弟は並外れたピアノの腕前を持ち小学生にして数々の賞を受賞し、神童と呼ばれていた。


 彼は高校二年生になり大きなコンクールを控えていた。


 その矢先、交通事故にあった。


 即死だった。


 飛び出した子どもを庇い自分が犠牲になった。



 その日から家は真っ暗。


 母は毎日のように泣き

 父も心身共に疲れている。


 一人、弟のピアノの前に立ち鍵盤を眺める。




 僕もピアノはしていた。


 弟よりも先に、


 しかしどんどん僕を追い越して天才と呼ばれるあいつに、



 劣等感を感じ、、、練習に身が入らなかった。


 だからピアノを辞めた。



 弟のことが嫌いではない、

 弱い自分が嫌いだった。


 だが、心の中では僕は彼を嫌い

 避けていたのかもしれない。



 久しぶりに

 ’’僕達''のピアノに触れた。



 肩を寄せ笑いあい旋律を奏でる僕らが見えた。


 それから僕は狂ったように

 弟と共に練習した曲を弾き続けた。


 気づけば、

 鍵盤にはいくつもの涙がこぼれていた。



 ’’たった一人の弟’’を

 心から大切にすることが出来なかった。


 後悔の感情が

 僕の心を蝕んだ。




 失って初めて後悔が刻まれた。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ