山の悲鳴
最近、村にはある噂がある。
夜な夜な山で女性の悲鳴が聞こえてくるらしい。
俺達子供にとって夏休みの肝試しに丁度良い噂話だった。
夕方に数人で集まり、山の裾まで行って見ることに。
田んぼの中の畦道を歩く。
『チャンポン!』「キャッ!」
一人の女子が声を上げる。
「カエルだ。くっ付くな」
「で、でも‥‥」
『モォー、ヴォー』
「「キャー!」」
「牛蛙だ。襲ってこないから離れろよ!」
女子二人にしがみ付かれては前へ進めない。
『バチャ! バサバサ』
「「キャー!」もう帰ろうよ」
「水鳥だ。帰りたければ一人で帰れ!」
まったく何しに来たんだか?
更に進んだところで足を止めた。
『ザシャッ、ザシャッ』
「何か居る!」「キャー」
「声を上げるな!」
「だってー」
『ザシャッ! ジャッジャッジャッジャッ』
ヤバい近付いてきた?!
『ギャーゥ! ギャーゥ!』
「「キャー」何、この声?!」
そう言って二人の女子は身を寄せ合い蹲ってしまった。
直後!
『ガサッ! ガサッ! ガサッ!』
ヤバい! そう思った時には二人の女子に覆い被さった。
そして何かが突進してきて、寸前の所で僅かに逸れて目の前を通り過ぎ、風が吹き抜けた。
『ギャーゥ! ギャーゥ!』
奴の鳴き声だ。
その日、女性の悲鳴の正体を知った。
だが動物園にも居ないような奇妙な動物が居るなど、誰が信じよう?
それは鹿の様な動物だが角は短い。
少し前傾姿勢で太股が発達していた。
そして女性の悲鳴の様な鳴き声。
初めて見る動物だった。