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この声について知ってる人はいませんか?

作者: アオ

仕事終わりに行きつけのバーでいつものように一人飲みをして酔っぱらいや夜遊び中らしき若い子で溢れた繁華街を通り抜け、駅に向かっていた時の話。


その日は21時を過ぎても蒸し暑い夏だった。お酒が入ってたから余計にそう感じたのかもしれない。

バーから駅に向かうまで地上だと居酒屋やカラオケ店の店員らしき人達が店の看板を持って声掛けをしたり、変な輩に絡まれることがある。信号に引っかかるのも面倒くさい。だからいつも地下街から駅に向かっていた。


いつものようにバーで飲んで騒がしい繁華街から静かな階段を下ってまた少しだけ騒がしさを残した地下街に出た。はずだった。

何かおかしい。

静か過ぎる。

私はまだ階段にいる?

いや、間違いなく洋食屋や雑貨屋が並ぶ地下街だ。

お気に入りのオムライスがある洋食屋も、可愛いアクセサリーの店も、会社の上司に無理矢理連れて行かされた立ち飲み屋も。

まだシャッターは開いている。あの洋食屋やアクセサリーの店は閉店時間間際で少しだけシャッターが顔を出してはいるが、いつもはいる店員がいない。

私以外の通行人が誰もいない。

私以外の人間が誰もいない。


私は地下街を走り抜けた。後ろは振り返らなかった。振り返ってはいけないと思った。


急に辺りが騒がしくなった。

気が付けば、駅の改札前にいた。

いつも通りの地下鉄の改札の風景。

数え切れない人々が何事もなかったかのように行き交っている。

ほっとして定期券を取り出そうとした時だった。

耳元で鼓膜が割れそうな大きな声。


『残念残念残念残念残念残念残念残念残念残念残念残念残念残念……あーあ、抜け出せて良かったねェ』


私はその場で膝から崩れた。

何人かの通行人が怪訝そうに私を見た気がした。


その日から毎日、声が聞こえる。

『あーあ』

低い声で落胆した様子で。

通勤中も仕事中も食事中やトイレでだって。


ねぇ、誰か教えてください。

この声の正体を、


『あーあ、あーあ、あーあ、あーあ、あーあ……フフフ、ハーハッハ!やっと…』

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― 新着の感想 ―
[良い点] ゲームの世界に「キャラ」として閉じ込めて、もてあそぶ「神視点」のプレーヤーってのをイメージしました。 考えてみれば、会社も社会も、人を駒として「上手く動かす」ことに腐心するのだから、ホラー…
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