僕を捨てた母親を見つけて、僕は母親を殺すと決めていた!
僕が産まれて直ぐに、僕の母親は僕を捨てた。
だから僕はずっと施設で育った。
親の愛情を知らずに育つ。
“親の愛情を知らずに育つと、相手の気持ちが分からないから喧嘩になる”
事が多かった。
喧嘩なら誰にも負けない気がした。
いつも、自分から相手に喧嘩を吹っかけてボコボコに相手を殴り倒す。
相手の男の子も、大泣きして僕に許してほしいと叫んでいるけど
僕は絶対に許さない!
そうすると? 施設の人が来て僕を取り押さえるんだ。
そうすると、強制的に喧嘩が終わる。
僕は納得していないから、施設の人や他の人とも口も利かない。
・・・僕が中学生ぐらいになると? 喧嘩が絶えなくなった。
相手が大人だろうが、絶対に喧嘩で負けない自信もあった。
だから街で僕から大人の男性に絡む。
そしたら? 体格差もある上に、力も強い大人の男性の方が
喧嘩が強かった。
僕はボコボコにやられて施設に帰る。
施設の人が、僕が傷だらけになっている姿を見て警察に届けるんだ。
『うちの子に、誰がこんな傷をつけるんだ!』
って凄い剣幕で怒ってくれてね。
僕はグッときて、泣きそうになっていた。
施設の人は、皆僕の親のような存在で本気で僕を叱ってくれた。
本気でぶつかって来てくれた。
だから、どんなに喧嘩しても施設に必ず僕は帰るんだ。
【信頼って】こういう事を言うんだなってね。
実の親に対して、僕は一切信頼はないけど?
施設の人達は、僕は皆信頼していた。
僕には、お兄ちゃんお姉ちゃん、弟妹がたくさんいる。
みんな僕とは血の繋がらに兄弟だ!
*
・・・そして、僕も施設に来て18年目になった。
18歳になったら、強制的に施設を出なくてはいけないルールになっている。
新しい仕事と住むところを施設の人達が見つけてくれた。
僕は施設の人達に、今までのお礼を言って出て行く事となる。
僕の為に泣いてくれる人もいた。
あの時の僕は、少し寂しさと不安を感じていた。
僕は一人で生活をはじめる。
仕事をはじめて3ヶ月後、僕は母親に対しての恨みが込み上げてくる。
【僕を捨てた母親に復讐する!】
僕は母親を探す事にした。
施設の人から、ほんの少しの情報を手に入れて探し出す。
僕が赤ちゃんの時に付けていたネックレス。
着ていたベビー服、手紙。
手紙には、“この子の事をどうぞよろしくお願いします。”と書かれた
手紙が置いてあったらしい。
僕の名前は、【夕陽】
・・・何年もかけて僕を産んだ母親を探し出していた。
母親を探し出して5年! とうとう有力な情報を僕は手に入れる。
今現在、○○という県で住んでいて再婚しているらしい。
その再婚相手との間には2人の子供がいると言う。
僕よりも歳が5つ下の弟と7つ下の弟。
僕は母親に会いに行った。
*
・・・僕は23歳になっていた。
僕は、僕を捨てた母親を見つけて僕は母親を殺すと決めていた!
これは【復讐】だ!
僕を捨てた母親への復讐!
今、母親が幸せなのは関係ない。
その幸せも僕が壊すと決めていた。
僕は思い切って偶然を装い、母親に声をかける。
『すみません、桟橋紗弥加さんですよね?』
『・・・えぇ、そうですけど。』
『“僕の事を憶えてますか?”』
『・・・ひょ、ひょっとして、夕陽? 夕陽なの?』
『えぇ!?』
『そのネックレス、今でも付けてくれてるのね。』
『違う! 僕は夕陽じゃありません。』
『夕陽! 今度ゆっくり二人で会いましょう! これ、お母さんの
連絡先よ。』
『・・・・・・』
『貴方の事は、再婚相手の彼や子供達にも、ちゃんと話しているの。』
『・・・・・・』
『・・・夕陽、貴方、大きくなったわね。』
『・・・・・・』
僕は動揺して思わず、その場を立ち去ってしまった。
僕の想像していた事と随分と違ったんだ。
僕を産んでくれたお母さんは、僕の想像していたお母さんよりも若く
綺麗な女性だった。
・・・それに何より、僕の事を見て直ぐに僕の名前を呼んでくれた。
ちゃんと僕の事を憶えてくれていたんだと知った。
本当は僕を捨てる気はなかったのかもしれない。
どうしようもなく、しぶしぶ捨てる事になったんじゃないかと思った。
僕は、“母親への復讐をやめた。”
今では、母親と母親の再婚相手の男性、僕の弟達とよく会うようになる。
本当のお母さんの気持ちを知れたから。
僕は凄く幸せだ!
例え? 僕を捨てた母親でも、今は優しい母親。
“親子との時間を”これから取り戻そうと思う!
【今はもう恨んでないよ! それよりももっと親子の時間を大切にしたい
と心から想うようになったんだ。】
最後までお読みいただきありがとうございます。