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教会の剣  作者: フラックス・S
第1章
3/12

第1話サイドストーリー レオナルドくんって知ってる?

ノブレスオブリージュは平たく言うと高貴な身分には責務が伴うといった意味です。

タリスマンはお守りといった感じです。


 

 あの後現場に行ったものの、現場を仕切っていた教会の剣?達にIDを見せたのに子ども扱いされて追い払われたマリア達……納得がいかないものの第3支部へ帰ってきた。

 ここには天をく吹き抜けの中央庭園があり、休憩時に足を運ぶ者が多かった。太陽の光指す中、最も太陽に等しい男が居た……


 マリア達がベンチで休んでいると、庭園の向こう側から背の高い青年が手を振りながら近づいてきた。中央付近まで来た彼は太陽の祝福をふんだんに浴び――光り輝いているようだった。しばらくいぶかしむように見つめていた2人だが程なくしてマリアは警戒を解いた。


「マーリーアー!」

 オレンジのコートを着た青年が止まった。近づくとその大きさは2メートル近くあったためキアラは委縮してしまった。コートの隙間からワインレッドのジャケットと白いシャツ、オレンジのネクタイが顔を覗かせていた。ボトムは黒のスラックスを履いていた。

「レオじゃないですかー帰っていたんですね」

 マリアは手を振りながら彼を迎えた。

「んーと、そちらのかわいらしい子は?」

「こちらは新人さんですよー」

「キアラ・デアンジェリスです。よろしくお願いします!」

「俺はレオナルド・ロッシ、一応聖者の指の1人だ――中指だな、レオと呼んでくれ!」


 レオナルドと名乗った青年は黒い髪を刈り上げて短髪にしていた。太陽の祝福を得た証である小麦色の肌を持ち、その双眸そうぼうには燃え盛る太陽の如き橙色を宿していた。

「レオナルド・ロッシっていえば熱き御心みこころの所有者さんですよね!すみません気付かなくて……」

「まぁ、顔見ただけじゃ分かんないよな」


 熱き御心……それは無窮むきゅうの聖者の5つの奇跡のうち炎の奇跡を体現するもの。無窮の聖者の心はいかなる時もくじけず、また信念は業火の如く燃え盛っていたという。この聖遺物は所有者の精神に宿り、あらゆる魔術的な精神干渉を退け――また自身を含めた周囲の味方の心に勇気を与えるとされる。信念の強さに応じて勢いを増す炎を操ることができ、その炎は敵だけを焼いたという。そして限られた時間の間だけ自身の肉体を焼きつくし、炎の精神体になることが出来る。


 おおらかな青年はすとんとキアラの横に座りながら手を組んだ――そのたたずまいは若さの割に貫録と烈火の如き情熱を帯びていた。そしてキアラはなぜだかレオナルドの顔を見ていると心に熱いものを感じた――心の奥底から湧き出す種火たねびのようなものだった。

「それ熱き御心の効果ですよ?」

 キアラの顔を覗き込みながらマリアは言った。はっと我に返り彼女は赤くなった。

「初めて会う人は大体そんな感じだよ」

 レオナルドははにかんだ、その表情はどこまでもほがらかだった。


 キアラは大興奮だった、憧れの聖者の指に挟まれて自分の夢みた空間にいることを実感した。彼女は決して甘い世界ではないと分かっていたが、それでも今だけは高揚感に浸っていたかったのだ――

「レオさんってすごくおっきんですね」

「まぁ体格には恵まれたかな」

「レオより背が高いのってアレッサンドロぐらいですよね」

「そうだなぁ、あの人には勝てないかなぁ」

 レオナルドは足を組みベンチに背をもたれた。それから3人はしばらく話した。


 レオナルドには隣にいる少女が情熱をもってこの組織に所属しているのが分かった。なによりさっきから話していて嘘を1回もつかなかった――このことは彼にとって喜ばしいことだった。熱き御心の効果で彼には嘘が分かる……ちなみにマリアはここまでで30回嘘をついていた。しかしマリアの嘘に限っては彼に安らぎを与えた。

 具体的には相手の頭の上にタテの線が見えれば真実、ヨコなら嘘となる。この能力でレオナルドは何度も傷ついたことがあるが、嘘をつく側にも理由があることを教えてくれた――総合的に見れば彼を強くしてくれたのだ……彼はそのことを神に感謝していた。


「あの……ソフィアさんについて聞いてもいいですか?ダメなら結構です」

「そうだな……俺はよく太陽だとか言われるが、俺からすればあの子の方がぽかぽかの太陽だったよ」

「そうですね陽だまりのような明るくて優しい子でした」

「心配性なくせにおっちょこちょいで俺達の方が見ていてハラハラしたよ」

 マリアもそれを懐かしむように聞いていた……同時に彼女はソフィアが生きていた時は言えなかったことを、自然に言えた自分に気付いた。

「でも強情で負けん気が強くて信念を常に持っていた。俺はそんな彼女を尊敬していたしこれからもするつもりだった……」

 レオナルドは柄にも無く辛気臭くなっていた。話している間にソフィアの死に実感が湧いて来たのだ。

「やっぱりソフィアさんは皆さんにとってかけがえのない方だったんですね……」

 しばらくの沈黙をレオナルドが破った――

「俺は別の件の捜査があってあまりこっちに構っていられない。俺の代わりに二人は頑張ってほしい!ではな!!」

 レオナルドはそういうと立ち上がり、手を振りながらその場を去った――



「――レオは何のためにバチカンの剣で戦ってるの?」

 真面目なソフィアの問いかけにレオナルドは少し困惑した。彼の血統は貴族のそれで、先祖は代々教会の剣に所属しており、気づいたときにはここにいたのだ――彼は何の疑問も抱かず当たり前のように戦っていた。

「俺は……熱き御心に選ばれた。ならば力を持たないものの代わりに戦わなければならない――力の代行者にならねばならないんだ」

「ふーん、ノブレスオブリージュって感じ?」

 ソフィアは何か別のことを言いたげだったが何故か言わなかった。

「……まぁそうだな、そのために今まで訓練してきたし、これからもそうだろう。それに……手を伸ばせば助かる命を見過ごせば、そのたびに俺は俺でなくなる……」

「――やっぱりレオは優しくて強くて……それにちゃんと自分のために戦ってる。尊敬するよ」

「自分のために?」

「そう!それができない人はとても苦しいの……」

「そうなんだな……」

 お互いにしばらく言葉を失ってしまったがソフィアが沈黙を破った――

「ちょっと辛気臭くなっちゃったね!そういえばこれを渡すつもりで来たんだ……初めて作ったからちょっと自信ないけど」

 ソフィアの手に握られていたのは太陽の模様の入ったタリスマンだった。細かい意匠は作った者の真摯しんしさを物語っていた。

「ありがとう!大切にするよソフィア――」



 ――今もそのタリスマンはレオナルドと共にあった。


(俺は戦うよソフィア……生き残った者にしかできないことがある――)


 別れと新しい出会いに彼は運命めいたものを感じた。こういったときには種火のようなものが心に宿る感覚があるのだ。

 


第1話サイドストーリー END 










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