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日本の未来を考えてみた

マグネシウムエネルギーの未来を考えてみた

作者: Katz

専門知識に乏しい素人の論考です。誤りその他御座いましたら感想欄にて御指摘ください。異論も御気軽にどうぞ。

 殆どの読者様には推定お初にお目に掛かります。今日も今日とて経験値を理系に全振りしている技術屋の Katz で御座います。


 近年は地球温暖化防止の観点から、日本においては不平等な(←ここ重要!)CO2削減要求に追い詰められている感が強い訳ですが、もしも完遂しちゃったりなんかしたらその不平等を逆手に取って世界をリードして発言権を増す事が出来るのではないか(←ここも重要!)という素人の目論見から、CO2とは無縁のエネルギー源を模索してみています。


 最近注目されているエネルギー源としては水素ですが、欠点が多くて扱い辛く、その点アンモニアは良いぞという話を別の短編エッセイに纏めました。


 今回取り上げるのはマグネシウムで御座います。実は現時点で私の一押しです。


 マグネシウムと言うと、馴染みのある方はまだそれほど多くないのではないでしょうか。ダイエット情報を集めてるような女性の方が詳しいかも知れません。にがりダイエット。便秘に良いとか、糖質燃焼を助けるとか、そういうので一頃ちょっと盛り上がりました。その有効成分はマグネシウムです。


 ノートパソコンの金属ボディとしてマグネシウム合金が使われる事があります。そういった宣伝文句で御存知の方もいるでしょう。アルミニウムに比べると値段が高いらしく、なかなか普及しないようですが。


 インターネットなる物が登場するより前の古い時代を生き抜いてきた方々だと、写真撮影時のストロボと言えば御理解いただけるかも知れません。あれはマグネシウムフラッシュとも言って、マグネシウムが燃える時に眩しく光る性質を利用した物です。今の若い方々は御存知無いでしょう。


 中学校の授業を真面目に受けていたなら、マグネシウムリボンに火を着けて燃やす実験を覚えているでしょう。アレは二酸化炭素中でも燃えるというのが面白いんですね。バチバチッって凄い音を立てながら燃え続け、試験管の内側に小さな黒い粒がくっついて残ったりします。


 事程左様にマグネシウムという物は酸素と結び付く力が超強いです。炭素なんかには負けません。水とは反応しませんが、熱湯ならばそこからも酸素を奪い取ってしまいます。因みにその実験は危険です。発生した水素が爆発します。


 そういう訳なので、鉱石などから精錬して金属の塊としてマグネシウムを取り出そうとすると、大変に苦労します。つまりコストが高く付く。これが、マグネシウムがなかなか普及してくれない理由になっています。


 精錬する方法は、大きく分けて2種類あります。電気分解と、無理矢理やる方法。


 電気分解する為には、まず水に溶ける形を作ります。具体的には塩酸に溶かすんですな。それから電気分解。この時に電極として鉄を使う関係で、この方法で作ったマグネシウムは不純物として鉄分が多いとか。


 更に言えば、電気分解すると塩素ガスも同時に発生します。はい、普通に毒ガスです。第二次世界大戦中は毒ガス兵器として研究された事もあったとか。塩素系漂白剤とトイレ用酸性洗剤は混ぜるな危険!でも有名ですな。そのため電気分解法でのマグネシウム精錬は、こう言った塩素ガスの扱いに慣れている総合化学メーカーが手掛ける場合が多いらしい。


 但し電気分解は、とにかく電気代が掛かる。アルミニウムもそうですが、電気代が高い国では国際的な価格競争力がありません。どこまで電気代が影響するかと言うと、日本では生産できなくなっちゃう位。アルミニウムの話ですけど、現時点において日本でアルミニウムを生産している会社はありません。電気代が高いから。


 もう一つの、無理矢理やる方法。ちょっと他に言いようが無かったので無理矢理やるって書きましたが。ぶっちゃけて言うと、マグネシウムよりも酸素と結び付く力が強い元素の力を借ります。そういう材料と混ぜて高温にします。大体1200℃位。そうするとマグネシウムが単体で蒸発するので、それを冷やして集めます。ピジョン法と言います。


 この高温にする方法が問題。石炭を無闇に沢山消費します。とある試算によると、マグネシウム1トンの製造に石炭10トンを消費するとか。二酸化炭素CO2の排出が凄いんですねぇ。大気汚染も凄い筈なんですが、ちょっとぐぐった位ではそういう話題は出てきませんね。いずれにしても世界的にはピジョン法は殆ど実施されません。


 でも世界のマグネシウムの7~8割ほどは、このピジョン法で生産されています。9割って話もあるようです。どこがやってるかと言うと、中国です。土地代も人件費も安いし、石炭も安い。実際、マグネシウム生産の中心地である山西省は石炭の産地でした。


 そうやって中国が手掛けてくれてるから安いマグネシウムが手に入るとも言えます。で、何となく御理解いただけると思いますが、中国一国にマグネシウムが握られているという状況は地政学的にリスクが高い。私の個人的見解ではなくて、日本政府の言葉です。


 まぁ中国当局は取り敢えず否定すると思いますけどね。現実にね、北京オリンピックの影響でマグネシウムの相場が3倍に上がった事がありましてね。どうしてオリンピックとマグネシウムの値段に関係があるのか、どうも良く分からないんですがね。


 とは言え、マグネシウムには優れた性質が沢山あります。


 まず、軽い。実用的に利用できる金属としては最軽量。アルミニウムよりも軽いんです。元素の周期表を見れば明らかですな。水平リーベ、僕の舟。七曲がりシップス、の「曲がり」の所。Mg Al の順番です。Mg つまりマグネシウムの方が Al アルミニウムよりも先。つまり軽い。


 そこから起因して、エネルギー密度が高い。燃料電池みたいな形にして比較すると、現在主流のリチウムイオン電池と比べて7.5倍とか9倍とか、威勢の良い数字が並んだりします。


 そして上述しましたが、燃える。結構色々な物質と反応します。空気中の酸素と結び付いて燃える。二酸化炭素の中でも平気で燃える。熱湯を掛ければ水から酸素を奪い取る。とかとか。


 但し安定して継続的に燃やすには技術が要るようです。金属の塊にして放っておくと、逆にいつまでも反応が進まない。十年ぐらい平気でそのままだそうです。これはエネルギーの保管という観点からは非常に好ましいと言えるでしょう。


 更に、これが一番重要な注目点なのですが、そうやってエネルギー源として使った後の燃えカスについて。これは酸化マグネシウムと言って、鉱石などを精錬する途中で出来る成分と同じ。つまり、通常の精錬過程に戻す事で再生できます。


 更に更に。エネルギー源みたいな使い方をすると、金属材料として工作に使ったりするのとは桁違いの量を一気に消費します。その必要量に耐えられる程の埋蔵量があるのか。心配無い、という結論が出ています。


 量は重要です。実際にこれが原因で、ヨーロッパの大森林は絶滅したという歴史もあります。初期は暖炉の薪として、後には製鉄の燃料及び原料として。最も、キリスト教の影響で自然崇拝(=異教、即ち悪魔崇拝)が無くなり、自然維持のノウハウが消滅したのが根本原因という説もあるようですが。


 意外と知られていませんが、日本でも都市近郊や製鉄が盛んだった土地なんかは、森林が消滅して禿山になったりしてたらしいですな。但し現代においてはそのような禿山は殆ど残っていません。日本すげぇ。


 おっと脇道に逸れました。


 まぁそういう訳で埋蔵量は非常に重要なんです。しかし御安心を。マグネシウムは、エネルギー源として利用しても使い切れない程の埋蔵量を誇ります。しかも地政学的な偏りはありません。いえ鉱石は偏ってますが、海水中にも含まれているんですね。最初にダイエットの話で触れた「にがり」です。


 海水からマグネシウム原料を取り出す方法についても心配御無用。これについては実は、割と歴史があります。金属マグネシウムではなくて、上述の燃えカスである所の酸化マグネシウムの形ですが。マグネシアと言います。


 マグネシアは耐火煉瓦の原料として需要があるんですね。具体的には製鉄の炉の内壁に使われます。


 方法としては、海水に石灰水を混ぜます。そうするとマグネシウム分が沈殿するので、これを濾過して集め、そして高温で焼きます。簡単!日本の場合は製塩後のにがりを利用するようですが、例えばアメリカなんかでは海水をそのまま利用している模様。


 この辺の技術や歴史は「海水マグネシア」という言葉で検索すると解説記事が見つかります。日本にも生産工場があるっぽいですね。


 最後に残るのは二酸化炭素の問題ですかね。ピジョン法だと山のような石炭を消費し、電気分解法にしても発電どうしよう問題が付いて回ります。ついでにコストも高く付く。コストが高いと燃料として採用する訳にはいきません。二酸化炭素も地球規模で大問題です。


 しかし、この問題を引っ繰り返す技術が発明されました!


 十年ちょっと前でしょうか。一言で纏めると、常識を超えた高温にする事で酸素を引き剝がします。具体的には2万℃程度。


 こんな高温、燃料では到底届きません。コークスでも最高2000℃ちょっと位まで。この10倍です。


 どうするかと言うと、レーザー光線を使います。レーザー光線は光の一種なので、レンズで集光できます。そうやって狭い範囲に光=エネルギーを集中させれば、集中度に応じてどこまでも温度が上がります。


 ここでレーザー光線を使うのは、他の光だと集中に限界があるから。普通の光を限界まで集中させると、像を結んでしまいます。カメラの原理ですね。カメラならそれで良いのですが、今回は像を崩してでももっと狭い範囲に光を集めたい。これを実現できるのがレーザー光線と言う訳です。


 レーザー光線だと像を結ばない理由については、非常に難しくなるので省略させて下さい。実は私も良く分かってません。ごめんなさい。


 ここら辺の理屈は、相手が太陽でも同じです。こういうのを太陽炉と言うんですが、太陽も集光に限界がありまして、理論的上限は太陽表面温度と同じ約6000℃になります。世界記録も確かこの温度だったかと。通常の太陽炉だと2000℃から3000℃程度。3000℃だと高性能の部類。


 そこで、太陽光をレーザー光線に変換します。それから集光。これで限界を突破できます。この用途に使える程の高出力レーザーを発明したというのが大きいのでした。


 因みに、このレーザーは太陽光を直接エネルギー源とします。イメージとして良くあるのは電気を使ってレーザーを出す形だと思いますけども、こいつは違います。太陽電池などの非効率な仕組みは経由しません。日に当てれば直接的にレーザーが出ます。日向ぼっこして丸まってる猫が目を開くと腹が減ってても関係無くレーザー光線(ビーム)が出る、そんな感じ。物騒ですな。


 更に言えば、レーザーとは言え光の一種ですので、レンズで集光するだけでなく光ファイバーで伝送も出来ます。つまりある程度の範囲にレーザー光線の装置を配置して、照射する場所まで光ファイバーで持ってくるという手を使えます。これも大きいですね。マグネシウム精錬工場の隣の空き地に大規模なレーザー発振装置を並べておけます。設計の自由度が高いのは良い事です。


 と言う訳で、原理的には難しくありません。はい高出力レーザーを用意しました、はいマグネシウムです、と。ではなぜ今迄誰も言い出さなかったのか。


 逆なんですね。このマグネシウム精錬方法を言い出したのは、高出力レーザー光線の研究者、東工大の先生です。折角作ったレーザーを使ってくれる人が居なかったので、使い道も自分で作った模様。太陽光を使う高出力レーザーを作ってみた、その応用先を探してみた、マグネシウムの精錬を思い付いた、という順番だったようです。


 マグネシウムを安く量産できればエネルギー源として使えます。という発想も、そんな訳で最初はなかなか理解されなかったようです。マグネシウムで電池作ろうぜ!という誘いに乗ってくる会社は無かったらしい。発想は面白いけど技術的に無理だろう、の一言でいつも門前払いだったとか。


 しかし今は少しずつ前に進んでいます。これが軌道に乗れば、完全リサイクル可能で完全無公害な最も理想的なエネルギー資源となるでしょう。どこかのアニメで聞いたような設定ですが、これが現実になりますぜ。


 どこかに落とし穴が無いか考えてみました。ド素人の考察ですが、欠点が見つからないんですよ。少なくとも技術的には。強いて言えば、海水中のマグネシウムの割合を減らしてしまう事と、酸素を消費地から生産地へ持ってっちゃう事、位ですかねぇ。


 政治的にはちょっと気になる部分があります。世界的な石油カルテルの存在ですね。


 現在の地球のエネルギー源の首根っ子を押さえてる方々が居ます。セブンシスターズとか、OPECとか、アメリカとか。


 アメリカはシェールガスだのオイルサンドだのが実用化されて、急に産油国の仲間入りを果たしました。確か今のアメリカは、石油の輸入が完全に止まっても問題無いんじゃなかったかな。そうは言ってもなかなか理想通りには行かないよね、と言うのが現実のようですが。


 余談ですけど日本の石油元売り各社は、全部セブンシスターズの傘下だったかと。そうでない所が1社だけあったかと思いますが、この辺の私の知識は小説に基づくので、事実関係は不明です。


 更に言えば、日本の石油は税金が凄く高いんじゃ無かったかな。つまり日本政府も利権に絡んでます。石油と言っても種類によるんでしょうかね。ガソリン代は半分位が税金だと聞いた覚えがあります。ぶっちゃけると、日本政府が石油利権から手を引けば、ガソリン代はリッター60円~70円になると。こんな巨大利権から手を引くなんてあり得ませんが。


 ここら辺との折衝をどうするかが大問題になりそうです。


 セブンシスターズは、小説の舞台だった時代とは少し内実が変化してる模様ですが、ぐーぐる先生によれば石油に代わる新しいエネルギー源を模索しているという話がありました。世界的な流通に関しては思い切ってここを頼ったらどうかと。面倒臭い小売り各社との折衝は丸投げできます。但し日本だけは日本で独自に扱いたい所ですが、その辺は交渉人の腕次第ですか。


 OPEC等の産油国については、殆どが砂漠の国なので、願ったり叶ったりでしょう。強烈で安定した日差しを期待できます。現地政府と合弁企業を立ち上げて、技術的には日本主導・経営的には現地主導、但し日本も経営に少し発言権が欲しい、という形にしたら上手くいきませんでしょうか。


 モデルはゲレロネグロ塩田ですな。日本の商社とメキシコ政府の合弁企業で製塩業を営んでいます。日本の塩で原産国にメキシコと書いてあれば、それはこのゲレロネグロ塩田の塩です。株式の保有比率はメキシコが51%で商社が49%とか。今の所は安定して上手くいっているような感じです。ネットを調べる限り、悪い噂は出てこないようです。


 日本政府については、この精錬技術全体を政府が買い上げちゃって良いんじゃないでしょうか。技術の値段は、例えば十兆円でもまだ安いと思ってます。だって世界のエネルギー源の首根っ子を掴めるんですぜ?がっぽがっぽですぜ?何しろ今の産油国の売り上げ総額の半分が見込めるんですから。


 しかしながら、十何年も協力者が現れてくれなかった結果、この東工大の先生は自分で起業して世界を飛び回ってます。その中核技術を寄越せなんて言われて、今更はいそうですかって訳にはいかないでしょう。だから目一杯の誠意を見せる必要があります。技術一つに十兆円だのと景気の良い話をぶち上げてるのはその為です。


 で、誠意を見せて日本政府が技術を所有して世界を相手に金を稼いだら、これを原資にベーシックインカムの充実を!というのが私の筋書きです。


 別に贅沢したいってんじゃありません。私の妻も子も、サラリーマン的な安定した労働には全く向かないタチだと言うだけです。私もあんまり向いていません。時々やらかしながらも何とかやってますがね。だから労働を金銭に変換しなくても生活できる仕組みがあればなぁ、と考えちゃうんですよね。


 まぁ、日本政府が企業経営で利益を維持できるのか、世界の首根っ子を押さえてるアメリカ企業なんて化け物を向こうに回して切った張ったの大立ち回りを演じられる日本人が居るのか、堕落しても問題無い環境を用意されちゃった日本人は本当に社会を維持できるのか、色々と問題は山積ですが。


 マグネシウムで夢を見ようぜ!

それが実現して数十年後の未来を描いたのが、拙著「日本人は働く必要が無くなりました。」とその歴史設定を纏めた「日本人は働く必要が無くなりました。~近未来百年史~」です。

前者の小説の方は途中で更新が止まってしまっていますが。スミマセン。


https://ncode.syosetu.com/n5309ev/

https://ncode.syosetu.com/n9473fe/



2021/08/25

あらすじと前書きを変更

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