表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私がいない世界  作者: emi
10/13

10

花火大会の翌日、私たちは、我が家へ帰って来た。


間も無く、お盆が明ける。




今は、深夜の時間帯。


とても疲れていたのだろう。彼は、テレビの前で眠ってしまった。




『こんなに痩せちゃって。目の下に、クマできてるよ。ごめんね。』


随分とやつれてしまった彼の頬に、そっと手を添えてみた。




どのくらい、そうしていただろう。


突然に、彼は起き出し、ボーッとテレビを観ている。




次の番組が始まっても、CMになっても、


表情ひとつ変えずに、ただ一点を見つめたまま、


彼は動こうともしない。




テレビからは、笑い声が聞こえるけれど、彼は笑わない。




止まってしまった時間が、漸く、進み出したかのように、


彼は、不意にテレビのチャンネルを変えた。


私の好きな、お笑い芸人が出ている。




『ねぇ、これ観ようよ。』


そんな私の声が届いたかのように、


彼は、リモコンをテーブルの上に置いた。




私は彼の隣に座ってテレビを観ながら、思わず、笑ってしまった。




『ねぇ、これ面白いよね。』


そう言って隣を見ると、彼は静かに泣いていた。




『ねぇ、泣かないで?』


彼には届かないことを知りながら、私は彼の前に座って語りかけた。




『なんでも出来るあなただから、全部、大丈夫だって思ってた。


私が思っていたよりも、


ずっとずっと、辛い思いをさせてしまったんだね。


そんな顔をさせてしまって、ごめんね。


でもね、あなただから、


私は、安心して、あの子のことを任せることが出来るよ。


あなたなら、大丈夫。』




そうして、私は、


彼の頬を両手で包み、涙を拭った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ